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 2022年はABB FIAフォーミュラE世界選手権の活動をメインにしながらも、WEC世界耐久選手権、およびDTMドイツ・ツーリングカー選手権にも出場するニック・キャシディ。DTMでは、アルファタウリカラーに塗られたAFコルセのフェラーリ488 GT3を駆り、フル参戦する予定だ。

 ただし、ポルトガルのポルティマオで開催された開幕ラウンドはフォーミュラEのモナコ戦へ参戦のために欠場。シーズン第2ラウンドとなるラウジッツリンク戦が、キャシディの2022年DTM初戦となった。

 2019年に行われたスーパーGTとの合同レースでホッケンハイムと富士に、そして2021年にはF1のリザーブドライバー業務により欠場したアレクサンダー・アルボンの代役でノリスリンク戦に出場したキャシディだが、フルシーズンのエントリーは今季初めてとのことで、緊張した面持ちでラウジッツリンク戦を迎えていた。

■チームメイトに火災発生。動揺が走る

 アパレルブランドも展開するアルファタウリだけに、モータースポーツのユニフォームらしからぬラフでカジュアルなチームウェアに身を包むキャシディは、日本で長らく所属していたトムスで慣れ親しんだ『37』のゼッケンを掲げ、DTMに登場した。

 土曜日のレース1予選では1秒以内に21台が入る接戦の中、キャシディは29台中12番手を獲得した。

 今季もラウジッツリンクはオーバルコースの一部を採用するレイアウトで行われ、特にスタート直後の緊張感が一番高まるターン1をノーミスでくぐり抜けるのは相当の集中力が必要。このレイアウトのレースを初めて経験するキャシディだったが、ここを難なく乗り越え、ライバルが次々とピットインをする中でポジションをキープし、レース後半にピットインする作戦により9位でフィニッシュ、2ポイントを獲得した。

ゼッケン37をつけ、DTMに参戦するニック・キャシディ。出場できないラウンドでは、セバスチャン・ローブがこの車両でエントリーする
ゼッケン37をつけ、DTMに参戦するニック・キャシディ。出場できないラウンドでは、セバスチャン・ローブがこの車両でエントリーする

 翌日曜日のレース2では、予選終了間際にチームメイトのブラジル人ドライバー、フェリッペ・フラガの74号車フェラーリから突如炎が上がり、赤旗中断。キャシディやチームにも大きな動揺が走った。

 幸いにもフラガには怪我はなかったものの、開幕戦のポルティマオのレース2では2位入賞を飾っていただけに、その落胆ぶりは大きかった。その分、キャシディに期待が寄せられ、フラガ担当のメカニックやエンジニアもキャシディのクルーに加わり、全力でサポートに当たった。

 7番手スタートとなったグリッドでは、他のドライバーがテレビのインタビューに応えたり、ファンとの記念撮影に興じる中で、あまり人目につかないようにスペアタイヤ横の陰に座ったキャシディは、かなり緊張した面持ちでスタートまでの時間を静かに集中して過ごしていた。

 だが、レースに出場できなくなったフラガがキャシディを激励に訪れ、横に並んで一緒に座るとさっきまでガチガチだった表情が柔らかくなったのが印象的だった。

予選で火災に見舞われたフェリペ・フラガが、スタート前のニック・キャシディのもとを訪れた
予選で火災に見舞われたフェリペ・フラガが、スタート前のニック・キャシディのもとを訪れた

 レースは好調でこのままポイント圏内のトップ10でゴールできるかと思えたキャシディだったが、タイヤトラブルによりレース終了間際にピットへと戻り、リタイアとなった(リザルト上では23位)。

「僕にとっての初めてのDTMのレースウイークは、とてもエンジョイできた。土曜日にはポイントも獲得できたが、日曜日のレースではリタイアとなってしまった。このデビュー戦ではもう少し良いリザルトを望んでいたけれど、望みどおりにいかないのは残念だった」とコメントしている。

 なお、レースウイークのイベントプログラムの時間には、フラガがレッドブル、キャシディがアルファタウリカラーの2シーターF1車両をドライブする機会があり、チームエンジニアやVIPゲストを順番に乗せ、ドライブを楽しんだ。キャシディにとっては2シーターのF1マシンをドライブしたのはこれが初めてだといい、すぐ後ろに人を載せてバランスを取るのが難しかったようだが、ミナルディのV10エンジンサウンドをとても楽しんだようだ。

 DTMの第3ラウンドはイタリアのイモラサーキットで6月17~19日に開催される。キャシディが所属するAFコルセにとってはホームレースとも言える母国での開催とあり、地元のファンの前での活躍に期待が高まる。