4月29日~5月1日にポルトガルのアウトドロモ・インテルナシオナル・ド・アルガルヴェ(アルガルベ国際サーキット)で行われたDTMドイツツーリングカー選手権の2022年開幕戦に、イタリアの名門AFコルセからアルファタウリカラーのフェラーリ488 GT3 EvoをドライブしてDTM初参戦となったWRC世界ラリー選手権元王者のセバスチャン・ローブ。
本来ならばニック・キャシディがレッドブル・アルファタウリ・AFコルセのフェラーリをドライブするのだが、今季はエンビジョンレーシングのABB FIAフォーミュラE世界選手権の活動と、WEC世界耐久選手権に参戦するAFコルセのフェラーリGTEの活動をメインに置いているキャシディは、DTMの開幕戦とバッティングしたフォーミュラEモナコ戦へ参戦するためにDTMを欠場し、その代走でローブがフェラーリのステアリングを担うこととなった。
レース前の公式テストには、火曜日にフォーミュラEモナコ戦へ行く前の走り込みにポルトガルを訪れたキャシディがドライブし、ローブは水曜日のセッションのみ参加。WRCにはないピットインとタイヤ交換の練習を特に何度も行い、チームと確認を重ねていた。
「予選ではもう少し上のポジションを獲れることは自分で分かっていたので、リザルトに関しては満足していない。予選で上位にランクインしなければ、よほどのことがない限り上位でゴールすることは難しいと思う」と、トップのミルコ・ボルトロッティ(グラッサー・レーシング・チーム/ランボルギーニ・ウラカンGT3)から24番手のフィリップ・エング(シューベルト・モータースポーツ/BMW M4 GT3)まで1秒以内に集中するなど、前に出る難しさを振り返る。
しかしローブは「マシンの調子はとても良かったし、チームとしてもビッグファイトなチャレンジになった。そして、僕自身が非常にエンジョイできたし、このチームと一緒に仕事ができて良かった。素晴らしい週末だったよ」とレース後にコメントをしている。
ローブは土曜日レース1を21番手からスタートし、決勝ではDTMで今季から初導入となるフルコースイエロー導入や、セーフティカーが入るなど荒れたレースとなったものの16番手でフィニッシュ。翌日曜日のレース2は27番手からのスタートだったが、ピットインのタイミングをレース終了間際へ持っていく戦略が効して18番手でチェッカーフラッグを受け、DTMデビュー戦となったポルティマオで無事にレースを終えた。
WRCで2004年から2012年までシトロエンで9度の世界王者に立ったローブだけに、結果だけ見ると本人には不満が残るのかもしれないが、FIA GT3マシンという全く違うフィールドで最後まで走り切り、中盤ポジションでのゴールはさすが世界王者の適応力ではないだろうか。
DTMレースウイークのポルティマオではサポートレースにTCRヨーロッパ選手権が開催されており、ローブが経営するチームからはクプラ1台が参戦。ドライバーとして、そしてチームオーナーとしての二役を兼ねてポルトガル入りした週末でローブの家族も帯同しており、レース中は表情が殆ど変わらないローブだが、妻子の前では柔らかな表情も伺えたのは印象的だった。ローブはDTMのレース後はそのままラリー・ポルトガルのテストへと向かった。
9月10~11日に開催が予定されているWEC富士戦とDTMスパ戦が重なっており、キャシディが富士スピードウェイへと向かうとすれば、再びローブの出番が回ってくる可能性が出てくる。既にシーズン開幕前にAFコルセが行ったスパ・フランコルシャンでのプライベートテストでは、ローブがドライブしていたという目撃情報があり、その可能性は十分に考えられるだろう。
また、キャシディ同様にチーム・ロズベルグのニコ・ミュラー、チーム・アプト・スポーツラインのレネ・ラスト、T3モータースポーツのニッキー・ティームもWECにシリーズ参戦していることから、スパか富士のどちらをドライブするのか興味深いところだ。