2022年F1第4戦エミリア・ロマーニャGPで各チームが走らせたマシンを、F1i.comの技術分野を担当するニコラス・カルペンティエルが観察、印象に残った点などについて解説する。第1回「なぜレッドブルRB18は格段に速かったのか」に続く第2回では、低迷から抜け出せずにいるメルセデスが入れたアップデートを紹介する。
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ポーパシングを抑えようと地上高を上げたイモラでのメルセデスW13は、想定したダウンフォースを生み出すことができず、タイヤを暖めるために2周する必要があった。さらに予選ではカルロス・サインツのクラッシュによる赤旗と雨も加わり、ルイス・ハミルトンとジョージ・ラッセルは金曜日の予選はQ2に進むのが精一杯だった。
メルセデスはいくつかのアップデートパーツを投入したが、W13の性能はほとんど改善されなかった。
フロントでは、モノコックとミラーをつなぐ衝撃吸収構造(上写真の青と緑の矢印)とミラーフェアリング(赤と黄の矢印)の形状が控えめな形で変更されている。その狙いはといえば、気流がボディワークから剥離する症状を取り除き、車体後方への気流を改善するためだった。
リヤでは、リヤタイヤ前のフロアエッジ部分のRを小さくし(上写真の黄色矢印参照)、剥離箇所をなくし、ディフューザーへの空気の流れを最適化した。さらにコクピット側面の湾曲したタブを増やし(下写真の赤矢印参照)、サイドポンツーン入り口への気流の質を向上させ、冷却効果を高めている。
しかしいずれのアップデートも、天候の悪化とスプリントフォーマットによる走行時間の減少のため、正しく評価することはできなかった。
2022年型F1マシンのアキレス腱ともいえる過剰な重量に対し、メルセデスはライバルと同様、ウイングとフロアを中心に数キロの軽量化を実現した。
しかしこの改良が、奇跡を起こすことはなかった。たとえ軽量化したところで、W13の根本的な問題であるポーパシング現象は解決されないと、トト・ウォルフ代表は言明している。
メルセデスのあるエンジニアによれば、「我々はこの現象がどのように発生し、どんな影響を及ぼすか分かっているが、それを克服するための魔法の公式はまだ見つかっていない」とのことだ。
W13は比較的低い速度からポーパシングが始まるため、車高を上げて対処せざるをえない。するとダウンフォースが減少し、ドラッグが増加する。
「もっと低い車高で走らせることができれば、空力的なポテンシャルが発揮されるはずだ」とウォルフ代表は言う。
「しかし今はリヤが不安定すぎて、それができない。このままだと、別の解決策を模索する必要が出てくるかもしれない」
予想以上に深刻な症状であることが判明し、ウォルフ代表は危機感を募らせている。