もっと詳しく

 2022年シーズンで7年目を迎えたハースF1チームと小松礼雄エンジニアリングディレクター。シーズン開幕前のプレシーズンテスト以来となるバルセロナ-カタロニア・サーキットでは、ミック・シューマッハーが予選でQ3に進み、予選アタックに課題を抱えるシューマッハーにとって大きな一歩になった。一方ケビン・マグヌッセンは得意のスタートでポジションを上げようとしたものの、他者との接触でダメージを負い後退し、入賞とはならなかった。

 コラム第7回は、前編・後編の2本立てでお届け。前編となる今回は、スペインGPの現場の事情を小松エンジニアが振り返ります。

────────────────────

2022年F1第6戦スペインGP
#47 ミック・シューマッハー 予選10番手/決勝14位
#20 ケビン・マグヌッセン 予選8番手/決勝17位

 プレシーズンテスト以来のバルセロナに戻ってきました。例年バルセロナでは多くのチームがアップデートパーツを投入しますが、今回ハースは何も持ち込んでいません。実は1戦前のマイアミで新しいフロアを投入したのですが、それほど大きなアップデートではなかったものの、確実にセットアップの範囲を広げることに役立ったと思います。

 このマイアミでの結果を受けて、バルセロナでも新しいセットアップの方向性を精力的に試しました。その過程がスペインGPの予選でのラップタイムに繋がったという手応えは十分でした。絶対的なクルマの速さを上げることに成功したと思っています。他チームはアップデートをかなり持ち込んでいましたが、予選でポールポジションを獲ったフェラーリとウチの差を考えても、ウチが速くなったことは確実だと思います。

ミック・シューマッハー(ハース)
2022年F1第6戦スペインGP ミック・シューマッハー(ハース)

 その予選はというと、ミックはクルマの問題でFP3をまったく走れなかったため、厳しい状況になりました。そんななかでも、ランド・ノリス(マクラーレン)のトラックリミット違反のおかげとはいえ、この逆境で今季初めてQ3に進出したことは評価していいと思います。

 ただし、実際にケビンとのラップタイム差をみればまだまだミックに進歩の余地があることは明らかですよね。Q2では新タイヤで2回走りましたが、2回目のランを上手くまとめられず、1回目のタイムを上回れませんでした。Q3でももう少しケビンとの差を縮められると思っていたのですが。まあ、彼にとって初のQ3進出でまたひとつ前に進めたので、次の目標としてはなんとしても初ポイントを早く獲りたいと思います。

 レースでのミックは第1スティントでペースが上がらず、タイヤのタレも大きかったです。クルマのバランスがあまりよくなかったので、第2スティントで調整しなおしてペースはやや上がりましたが、最初のスティントでポイント圏外に落ちてしまったのが痛かったです。

 またミックのタイヤのタレ方を見て3ストップに切り替えるべきでしたが、後手後手に回って1回目のストップで順位を落とし、結局2ストップで最後まで行きました。その辺りはレース戦略を進めていくうえで、今回はうまくやれなかったので大きな反省点です。次回のモナコはまったく追い抜きができないし、1ストップになるのは確実なので、一度しかチャンスはありません。バルセロナでの反省を活かして、しっかりとやりたいと思います。

ミック・シューマッハー(ハース)
2022年F1第6戦スペインGP ミック・シューマッハー(ハース)

 一方ケビンの方は、とてもクルマに手応えを持っていましたし、予選も速かったので期待していたのですが、1周目のターン4でルイス・ハミルトン(メルセデス)と接触してしまいました。その結果右フロントタイヤがパンクしたので、大きくタイムをロスし、そこからの挽回は無理でした。

 彼はレース1周目の動きがとても上手く、ポジションを上げてオープニングラップを終えることが多いです。今回もバルテリ・ボッタス(アルファロメオ)の前に出て、ハミルトンを攻略できる隙があると見たので行ってしまいましたが、ホントにもったいなかったです。後から言うのはとても簡単ですが、ちょっと欲張りすぎました。でも、そういう本能があるからこそ彼は1周目に強いので、紙一重ですよね。接触せずにレースをしていればボッタスと6位争いをできたと思うので本当に残念でした。

 ちなみに、トップを走っていたフェラーリにエンジントラブルが発生しましたが、今のところハースのエンジンにトラブルは起きていません。しかし、これを受けて念のため次戦モナコGPでのエンジンの使い方を見直しています。

ケビン・マグヌッセン(ハース)
2022年F1第6戦スペインGP ケビン・マグヌッセン(ハース)

(第7回後編に続く)