レッドブルのチーム代表クリスチャン・ホーナーは、世界的に進むインフレのなか、現在のF1バジェットキャップに従っていくと、2022年シーズンを終える前に使える予算がなくなるチームがいくつかあり、一部チームが数戦を欠場せざるを得なくなる可能性があると警告している。
F1の予算制限は2021年には1億4500万ドル(約183億円)で、2022年には1億4000万ドル(約177億円)に引き下げられた。さらに今年は厳しいインフレのなか、エネルギーコストの上昇などがチームに大きな負担を与えている。
ホーナーは、現在の経済状況がチームに財務上のプレッシャーをかけていることに大きな懸念を示した。
「今年の予算上限額に従うためには、7チームが最後の4戦を欠場する必要が出てくるだろう」とホーナーが述べたと『BBC』が伝えた。
「ビッグチームだけの問題ではない。インフレの問題で本当に苦しんでいるのは、中団チームなのだ」
「FIAには注意義務がある。彼らが真剣に取り組んでいることは知っている」
「光熱費、生活費などコストが急激に上昇しており、F1も例外ではない。運送費が4倍になっている。これは我々がコントロールできる問題ではない」
フェラーリ、メルセデス、マクラーレンはホーナーと同様、上限額引き上げを支持している。しかし先月行われたF1コミッション会合において、国際通貨基金のインフレ率に基づいた調整を行うという提案が出た際に、アルピーヌ、アルファロメオ、ハース、ウイリアムズは、反対票を投じた。
アルピーヌのチーム代表オットマー・サフナウアーは、次のように述べている。
「早期に予算を設定し、インフレについて多少予想していた。インフレは知らない間に忍び寄ってきたわけではない。我々が対処できるなら、他のチームも対処できる。単純に上限額を引き上げるということに対して賛成はしない」
「運送料が250万や350万上がっても、開発予算が2000万あるなら、それを1700万に削れば、上限を上回ることはない」
「その場合、開発が制限されることになる。そのため、金があるなら、開発予算をキープするため、FIAに対して上限を引き上げるよう働きかける方がずっと簡単だ」
一方で、アストンマーティンのスポークスパーソンは、次のような声明を出している。
「インフレに伴う予算上限額引き上げを支持します。ただ、それ以上の引き上げの必要性は感じていません」
FIAはこの問題を継続的に調査しているということだ。
一部小規模チームは、もともと予算上限額を下回る予算で運営しており、上限額引き上げは、FIAとF1が導入した財務規則の趣旨に反すると考えている。
バジェットキャップ規則は、全チームのパフォーマンス差を縮めることを目的に2021年に導入された。2021年の上限は1億4500万ドル(約183億円)、2022年は1億4000万ドル(約177億円)、2023年にはさらにそこから500万ドル(約6億円)引き下げられる予定だ。
ただ、新型コロナウイルス感染症のパンデミック以前には、2021年には上限が1億7500万ドル(約222億円)とされていたものが、F1が存続の危機に直面していることを考慮して、ビッグチームも3000万ドル(約38億円)の減額に同意したという経緯がある。