2022年F1第3戦オーストラリアGPで各チームが走らせたマシンを、F1i.comの技術分野を担当するニコラス・カルペンティエルが観察、印象に残った点などについて解説する。第1回「圧勝したフェラーリF1-75。対レッドブルの優位性はどこにあるのか」、第2回「レッドブルのセッティング失敗と信頼性の欠如」に続く今回は、不振に陥ったメルセデスが抱える問題点について考察する。
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ポーパシング(激しい縦揺れ現象)は、フェラーリにもメルセデスにも起きている。しかしフェラーリに比べると、より大きな被害を受けているのがメルセデスなのは間違いない。W13のポーパシングの特徴は、高周波で予測不可能な縦揺れだということだ。フェラーリF1-75に1秒、レッドブルRB18にコンマ6秒の大差をつけられた一番の要因は、この現象をいまだ解決できないからだ。
メルボルンではマシン後部のフロアを支えるステーの位置を変えたりしたが(黄色矢印参照)、目立った改善は見られなかった。
フェラーリのポーパシングが直線だけなのに対して、メルセデスは高速コーナーで跳ね続ける。それは最終区間のターン9、10、12で特に顕著で、この区間だけでフェラーリに対して0.468秒失っている。ルイス・ハミルトンとジョージ・ラッセルはこれらのコーナーで思い切ってプッシュできず、その結果タイヤの温度も上がらないため、予選で大幅にタイムロスすることになった。
すべてのコーナーのタイムロスを合計すると、メルセデスはライバルたちに比べて1秒近く遅かった。ではポーパシングの問題が解決されれば、メルセデスは一気に1秒速くなるのだろうか。
「残念ながら、そうはならないだろう」と、トト・ウォルフ代表は言う。「現状は、複合的な問題が絡まっているからだ。車重を減らすことも早急に解決すべきひとつだし、他にもいろいろある」
メルセデスがオーストラリアにアップデートをまったく持ち込まなかったことも、大きな話題となった。ウォルフ代表は、アップデートを投入する前にマシンの問題点を理解する必要があると述べている。
「現時点ではまだ、空力的なポテンシャルを引き出すことも、ポーパシングを減らすこともできずにいる」と語るウォルフ代表からは、去年までのような自信に満ちた表情はすっかり影を潜めていた。
「謙虚でいなければならない。まだ同じ地点にいるのだ。だから、アップデートをする意味がない」
ウォルフ代表も言及したように、W13はまだ重すぎる。そのため最初の2レースでは、マシンから多くのセンサーを取り外して走行した。しかしメルボルンではポーパシングを把握するために予選、レースでもハミルトンのマシン前部に車高センサーを取り付けた。これでハミルトンはラッセルに比べ、1.5kgのハンデキャップを負ったともいわれている。