「レースペースはよかったのですが、スタートがうまくいかず、赤旗の前に16番手まで落ちてしまったのが痛かった。再スタート時にミディアムタイヤを履くという賭けに出たのですが、残念ながらその作戦はうまくいきませんでした」
これは、F1第6戦モナコGPのレース後に出されたチームリリースの角田裕毅(アルファタウリ)のコメントだ。英文でたった3行。角田の前のピエール・ガスリーのコメントが8行で、角田の後ろにあるテクニカルディレクターのジョディ・エジントンのコメントが11行もあることを考えれば、角田の3行は明らかに短かった。
なぜ、角田のコメントは短かったのか。それは角田が今年のモナコGPについて、何も語ることがなかったからではない。レース後にミックスゾーンに現れた角田は、饒舌ではなかったものの、もう少しレースについて語っていたからだ。ただし、それはチームへの不満だった。
その不満とは、レース序盤の早すぎるとも思えるウエットタイヤからインターミディエイトタイヤへの交換だ。
「その決定は、コースを走行していて、自分からチームへ伝達したのか? それとも、チームからの指示だったのか?」と尋ねると、角田は少し怒った口調でこう即答した。
「チームからの指示でした」
テクニカルディレクターのジョディ・エギントンは、その交換をこう説明する。
「ライバルたちがドライコンパウンドに交換するまで走ろうとするなかで、我々はアグレッシブな戦略を採り、序盤からインターに交換したことが功を奏した。ピエールのペースを見て、ユウキも同じような判断でインターに乗り換えたが、彼は少し苦労していた」
しかし、11番手からスタートして、そのポジションをキープしていたにもかかわらず、ピットインを命じられた角田が戸惑うのも無理はない。
「気がついたら18番手に落ちていて、正直、履き替えたインターでのペースが速かったのかどうだったのかわからない状況でした。ただ、そんなに(ウエットが)悪くなかったから、ストラテジーがまったく機能していなかったということじゃないですか」
そう言って、角田はチームが立てた戦略を批判した。
17番手からスタートしたガスリーにアグレッシブな戦略を採らせるのは理解できる。しかし、11番手とポイント圏内が見える位置にいた角田にレース序盤にアグレッシブな戦略を採らせる理由はないように思える。
もちろん、人間であればミスも犯す。モナコGPでは土曜日の予選で角田がミスを犯した。しかし、予選後、角田はチームとチームメイトに謝罪した。次戦アゼルバイジャンGPまでに、しっかりと話し合う必要があるように思う。