テキサス・モータースピードウェイを舞台に開催された2022年NASCARカップシリーズのオールスター戦は、カイル・ブッシュ(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリ)が“エリミネーション・ブラケット”を制して予選ポールポジションを獲得すると、ダニエル・スアレス(トラックハウス・レーシングチーム/シボレー・カマロ)がオールスター・オープンを制覇。
そしてアクシデント満載のオールスター・レースでは、チェッカー直前のコーションで「レースに勝ったと思っていた」と語ったライアン・ブレイニー(スチュワート-ハース・レーシング/フォード・マスタング)が、1度は外したサイドウインドウネットをなんとか半分ほど再固定し、リスタートを乗り越えオールスター初優勝を手にした。
デニー・ハムリン(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリ)最速で幕を開けたエキシビジョン戦の週末は、16台で争われるオールスター・オープンに向けタイラー・レディック(リチャード・チルドレス・レーシング/シボレー・カマロ)がまずは最前列を確保する。
続いて本戦たるオールスター・レースに向けた予選では、シーズン中のフォーマットとは異なりシングルカーの1ラップで最速の8台が“エリミネーション・ブラケット”に進出すると、静止状態からピットでのタイヤ交換〜リスタート〜フィニッシュラインまでの到達時間を2台ごとのデュエルで争い、4組中で最後の2台が日曜最後のポールポジションを獲得する流れに。
ここで気を吐いたのがJGR勢で、最強の弟カイルがディフェンディングチャンピオンのカイル・ラーソン(ヘンドリック・モータースポーツ/シボレー・カマロ)を撃破し、24人で争われるオールスター・レースに向けポールを獲得してみせた。
そして日曜最初のオープンでは、リッキー・ステンハウスJr.(JTGドアティ・レーシング/シボレー・カマロ)がステージ1を、クリス・ブッシャー(RFKレーシング/フォード・マスタング)が続くステージ2を、そしてスアレスが最後のステージを制覇。さらにファン投票でエリック・ジョーンズ(ペティーGMSモータースポーツ/シボレー・カマロ)が勝ち残り、晴れてオールスター・レースへと駒を進めた。
迎えた最終決戦はステージ1こそカイルが順当に勝利を得たものの、ラーソンがタイヤバーストからウォールに激しくヒットし、早くもここで脱落となってしまう。さらにステージ2に入ると、残り3周のところでカイルのタイヤにも異変が生じ、スローとなった18号車カムリを避けきれずロス・チャスティン(トラックハウス・レーシングチーム/シボレー・カマロ)が激突。宙を舞ったシボレーはチェイス・エリオット(ヘンドリック・モータースポーツ/シボレー・カマロ)も巻き添えにして、ここで3台が戦列を去ることに。
■勘違いは「心底、肝を冷やす瞬間だった」と勝者ブレイニー
この結果、オースティン・シンドリック(チーム・ペンスキー/フォード・マスタング)がステージ2を制したものの、最終ステージはこの日最多のリードラップ、84周を刻んだブレイニーの独壇場となり、ホワイトフラッグでは2番手のハムリンに対し2秒以上のマージンを築き、悠々クルージング状態に持ち込む。
しかし、ブレイニーの12号車マスタングがフィニッシュラインに到達しようかという目前でステンハウスJr.がターン2のウォールにブラッシュ。規則上、オールスター戦は「アンダーグリーンでチェッカー」と定められることから、このコーションで延長戦へと突入する。
しかしレースが終了したと勘違いした首位ブレイニーは、スタンドと歓喜を共有すべくサイドネットを外してしまい、すぐさま無線で指示が飛ぶことに。イエロー中に慌てて復帰を試みたブレイニーだったが、幾分は固定されたものの完全に元通りとはならず。その状態でリスタートに臨んだが、ターン2でなんとかハムリンを抑え、6度目のオールスター挑戦にして自身初の勝利を手にした。
「僕らにとっては心底、肝を冷やす瞬間だった。僕はレースが終わったと思っていて、誰もがスローになったと思いウインドウネットを外したんだ」と苦笑いのブレイニー。
「NASCARには、ピットロードに降りず修復させてくれたことを感謝したい。ああ、それは本当に大変だったよ(笑)。なんとかネットをねじ込んで固定し、そこからリスタートに集中しなきゃいけなかったんだからね。クルマは最高だったし、クルーには心から感謝したい。ポイント獲得の勝負じゃないことは充分に理解しているが、とても楽しかった。派手なパーティになりそうだ」
併催のNASCARエクスフィニティ・シリーズ第12戦は、今季2度目のスタートとなったレディック(ビッグマシン・レーシングチーム/シボレー・カマロ)が、シリーズ通算10勝目を獲得。同じくNASCARキャンピング・ワールド・トラックシリーズ第9戦は、スチュワート・フリーゼン(ハルマー・フリーセン・レーシング/トヨタ・タンドラTRD Pro)が2019年以来、実に53戦ぶりの勝利を飾り、服部茂章率いるハットリ・レーシング・エンタープライゼスは16号車タイラー・アンクラムが接触からのオーバーヒートでリタイヤ。チェイス・パーディの61号車は最後のリスタートで壁にタッチし、21位でレースを終えている。