競技中の宝飾品着用禁止をめぐって国際自動車連盟(FIA)とルイス・ハミルトン(メルセデス)が対立を深めるなか、2022年F1第6戦スペインGPではFIAとフェルナンド・アロンソ(アルピーヌ)の間にも、亀裂が走った。前戦マイアミGPのレース後に科されたペナルティに対して、アロンソが自分にペナルティを科したスチュワードの決定に不満を述べたからだ。
マイアミGPのレース終盤、ミック・シューマッハー(ハース)とセバスチャン・ベッテル(アストンマーチン)の前を走っていたアロンソは、シケインでミスをしてショートカットする形でレースを続行。それによって一時的にアドバンテージを得て、逃げ切ったと判断された。審議はレース後に持ち越され、9位でフィニッシュしたアロンソには5秒加算のペナルティが科され、11位に降格した。
これに対して、アルピーヌでチーム代表を務めるオットマー・サフナウアーは、「我々がどれだけのアドバンテージがあって、それをコース上で戻さなければならないかを正確に知る術はなかった」と科せられたペナルティに不満を述べていた。
さらに2週間後のスペインGPでは、ペナルティを受けた当人のアロンソがFIA会見でこう発言した。
「本当にに不公平な裁定で、スチュワードが無能だったというしかない。彼らはあまりプロフェッショナルではなかったと思う。というのも、僕たちはレースが終わってから、走行データを持って彼らのところへ行ったんだけど、そこにはまとめられた荷物だけがあり、部屋にも誰もいなかった。それで、今回ここに来て、彼らにすべてのデータを見せた。すると彼らは「5分待ってくれ」と言ったんだよ。そのとき、彼らは気づいたんだろうね。すでにペナルティを科していたから非常にまずいことになったなと。F1のようなモータースポーツの最高峰では起こってはならないことだね」
さらに記者が「FIAは今年、スチュワードプロセスとレースコントロールのオペレーションを再構築するために多くのことを行いましたが、昨年と比べて改善されたと思いますか?」と質問すると、こう即答したのである。
「ノー」
公然とFIAを批判したアロンソに、FIAも黙っているわけではいかなかった。今回、スペインGPにはFIAの新会長となったモハメド・ベン・スライエムが来ていた。記者会見後、アルピーヌのモーターホームにスライエムがFIA事務総長のピーター・バイエルとともに訪れた。
バイエルは会談を設定したのだろうか、スライエムと一緒にモーターホームに着いた後、アロンソと二言三言話すと握手して、その場を去った。
バイエルがいなくなって、スライエムとふたりだけの会談が始まったが、スライエムが険しい表情だったのに対して、アロンソは少し笑みを浮かべて涼しい表情。おそらく、アロンソはスライエムがなんのためにここに来て、自分に何を言うのか、わかっていたのだろう。
その後も、アロンソとスライエムの会談はフリー走行が始まるまで続いた。
2日後のレース終了後、アロンソはスライエムとの会談について、次のように語った。
「FIAへの対応や、彼が行っている改革、改善したいことすべてに信頼を置いている。彼がやっていること、彼の考えを全面的に支持している」
前FIA会長のジャン・トッドが退任して5カ月。F1はスライエム時代に突入し始めている。