もっと詳しく

 トップから1周遅れで65周のF1第6戦スペインGPのレースを走り切った角田裕毅(アルファタウリ)は、パルクフェルメにマシンを停め、車検室で体重を測定すると、いつものようにガレージ裏に出てきた。そこでヘルメットをトレーナーに渡すと、広報からタオルを受け取るまえに、両手をひざにつき、ぐったりとうなだれた。

【角田裕毅F1第6戦密着】
レース後の体重測定を終えた角田は、膝に手をついてうなだれた

 この日のカタロニア・サーキットはレーススタート時の気温が36度、路面温度は49度と真夏を思わせる高温となった。しかもカタロニア・サーキットには高速コーナーが3つあり、体力的に厳しいサーキット。角田だけでなく、多くのドライバーがレース後、ここで疲労困憊する姿を見せていた。

 そのなかで13番手からスタートした角田は、1回目のピットストップまでにポジションを3つ上げ、序盤からポイント圏内でレースを進めていた。

「マイアミも厳しかったのですが、戦っているポジションがマイアミよりも上で集中力が全然違っていたので、全体的に考えると今回が一番きつかったかなと思います」

 マイアミでは、日曜日になって体調を崩し、「レース前はちょっと頭痛がひどくてきつかったし、少しだるくて、胃腸の調子も悪かった」というなかでのレース。しかし、今回は万全の体調で臨んだにも関わらず、F1に来てから一番きつかったと語ったほど、厳しいレースとなった。それは、今回のスペインGPではほとんどのチームがマルチストップの戦略を採り、角田も3ストップ作戦だったことは無関係ではない。

 マルチストップ戦略を機能させるためには、タイヤを労わる走りではなく、プッシュする攻めの走りが要求される。コーナーリングでの横Gは大きくなり、体の左側への負担は大きくなる。レース後、ガレージの裏でしばらくうなだれていた角田は、その後、上半身を起こすとレーシングスーツのファスナーを開け、上半身を脱ぎ始めるが、左肩が痛く顔をしかめて、しばらく身動きがとれないほどだった。

【角田裕毅F1第6戦密着】
左肩を痛めた角田

「マシンのなかは暑いし、この週末はずっとマシンのフィーリングがよくなかったので、ポイント争いはいつも以上に厳しい戦いになったし、プレッシャーも半端ではなかった。そのなかでポイントを獲得できたことはいいステップになったと思う」と語った角田。その角田の走りをフランツ・トスト代表もこう言って称えた。

「予選でのパフォーマンスを見れば、ユウキが獲得した1ポイントは、この週末に我々が得られる最大限の成果だ」

 この週末、サーキットには両親が観戦に来ていた。これまで2回来ていたレースではなかなかいい走りができなかった角田にとって、この日の1ポイントはチームだけでなく、両親へのプレゼントにもなったに違いない。そのことを尋ねられた角田はこう笑った。

「(両親の前で)初めてポイントを獲れたので、よかったなと思います」

【角田裕毅F1第6戦密着】
2022年F1第6戦スペインGP 角田裕毅(アルファタウリ)