F1第4戦エミリア・ロマーニャGPの舞台となるイモラ・サーキットは、アイルトン・セナ終焉の地でもある。サンマリノGPの名称で行われた1994年5月1日の決勝レース開始直後の事故で、セナは帰らぬ人となった。そのセナはかつて、「あなたにとって最高のドライバーは?」と訊かれた際、「テリー・フラートン」というまったく無名のカートドライバーの名を挙げたという。
金曜会見に出席したドライバーたちには、そのエピソードを踏まえたこんな質問が投げかけられた。「最終的にF1には来れなかったものの、カート時代に強敵と感じたドライバーはいましたか」
カルロス・サインツ(フェラーリ)の答えは、慎重なものだった。
サインツ:すごく難しい質問だ。F1には20人分のスペースしかなくて、すべての才能を受け入れることはできない。一方で僕はこれまで、たくさんの優秀なドライバーと一緒にレースをしてきた。そのなかからひとりを選ぶのはとても難しい。今もみんなと友達だしね。そのなかには、F1で活躍できたと思うヤツが3人から5人はいる。でも彼らはいろんな理由から、F1まで来れなかった。
対照的にシャルル・ルクレールは実名を挙げ、彼らにエールを送った。
ルクレール:カート時代から、僕はいつもこう自問していた。「一緒に走ってる仲間たちのなかで、いつかF1に乗れるのは何人いるだろう」ってね。そのなかで、「絶対にF1に行けるだろう」と思っていたドライバーが3人いた。デニス・オルソン、ベン・バーニコア、そしてニクラス・ニールセンだ。彼らの夢は結局、叶わなかった。でもまだレースを続けていて、すごく頑張っている。彼らに対しては、尊敬の気持ちしかない。
そしていつもながら、ドライな意見のマックス・フェルスタッペン(レッドブル)。
フェルスタッペン:僕に言わせれば、カートはF1じゃない。もしあなたがゴーカートでとても速いとしても、それがF1でも速いという保証にはならない。もちろん様々なカテゴリーに、優秀なドライバーはたくさんいる。そしてF1に限らず、カート時代に優れたドライバーが4輪に進んでから、ポテンシャルを発揮できなかった例は山ほどある。そしてその逆もね。カートではそれほどでもなかったのに、四輪で才能が花開いたドライバーは珍しくない。カートの速さが、すべてを決めるわけじゃないってことだ。
しかしカート時代のジョージ・ラッセル(メルセデス)の周囲には、凄い才能が集まっていたようだ。
ラッセル:カートからのステップアップはとても難しい。キャリアが進むにつれて、予算がどんどん膨らんでいくからね。最高の人材を確保し、今以上に多くの才能がランクアップできていく方法を見つけるべきだと思う。ただ僕がヨーロッパのカートレースで1年目を過ごしたとき、優勝して上位にいたのはマックスとシャルルだったんだ。そしてアレックス(アレクサンダー・アルボン)も、前の年に優勝していた。そして今、僕たちは一緒にF1を戦っている。カート時代から何人もの並外れたドライバーと対戦してきたけど、僕が自分のなかで上位にランキングするドライバーは、こうして僕の隣に座っている人たちばかりだよ。
F1の次世代ドライバーたちは、なんとも素晴らしい出会いを果たしたというほかない。
そんな若いドライバーたちとは対照的に、ベテランのセバスチャン・ベッテル(アストンマーティン)の将来をめぐってさまざまな観測が流れている。このグランプリ前には、「クリスチャン・ホーナー代表がレッドブルへの復帰についてベッテルと話した」という報道も出た。それについて訊かれたベッテルは当然ながら、「それはない。クリスチャンとはしばらく話していない」と、完全否定だった。
一方で現役続行への熱い思いを表明している。
──今ファクトリーで取りかかっている中期的なプロジェクトの結果が出るのは、おそらく3、4年先のことになるでしょう。その果実を享受するためには、チームとの契約を延長しなければならない。その決心は、すでに済ませている?
ベッテル:僕の契約が今年末で切れるのは、秘密でも何でもない。そしてチームの現状は、みんなが期待していたようなものではない。ただここで見切りをつけるべきではないと思っている。まだ3レース終えたばかりだし、新しいレギュレーション下でのマシン性能の引き出し方について、まだまだ学習の途中だしね。何より僕自身は、今季1レースしかしてない。今後数ヶ月の動向を見極めて、そこから将来を考えても遅くないと思っているよ。