日本のFIA-F4選手権、ランボルギーニ・スーパートロフェオ・ヨーロッパ、そして全日本F3選手権参戦を経て、現在はランボルギーニのGT3ドライバー育成プログラムを活動の軸にし、ランボルギーニのファクトリードライバーを目指す根本悠生。2022年シーズンはファナテックGTワールドチャレンジ・ヨーロッパ(GTWC)のエンデュランスカップへ初挑戦をする彼に、開幕戦の舞台イモラで今季の目標と展望を聞いた。
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──昨年まで参戦していたインターナショナルGTオープンからGTWCにスイッチ。レースのレベルもぐっと上がり、プロフェッショナルなレースへの参戦となりますね。本格的にヨーロッパのプロフェッショナルGTドライバーへの階段を上がるための2022年シーズンの目標は?
根本悠生(以下YN):このGTWCに限らず、レースに出る上で僕の目標はいつもチャンピオンシップで勝つことです。僕が参戦するシルバーカップのクラス優勝を手にすることをGTWC参戦初年度の目標にしています。
チームとしてもGTWCのエンデュランスカップへシリーズ参戦は2022年シーズンが初めてのチャレンジとなるので、この激しく厳しいフィールドの中で初年度から頭角を現すというのは決して簡単なことではないと理解しています。求められている仕事をしっかりと着実にこなし、シーズン序盤の2~3レース目には良い結果に繋がる動きができるよう、チーム、そして僕らドライバーが一緒にGTWCを通して着実に成長していかなければならないと思っています。それを踏まえて後半ではタイトルに向けて、前半戦での経験や学びをしっかりと活かせるようにします。
──昨年はGTWCのメインイベントでもあるスパ24時間レースに初めて参戦してみて、気持ちの変化はありましたか?
YN:サポートレースのランボルギーニ・スーパートロフェオ・ヨーロッパに出ていて、スパ24時間レースをすぐ身近に観ていたので、『いつかは僕も!』と願っていました。去年のスパでは決勝中もコンスタントに良いタイムを保てましたが、チームとしてもいろいろなミスを重ねてしまいました。
もう少しレースを良い展開に持って行けるハズでしたが、もったいない場面も多く見受けられました。それも含めて、とてもよい経験と勉強になったと思います。ヨーロッパではWEC世界耐久選手権などのレースもありますが、GT3のレースではこのGTWCのエンデュランスカップが頂点のようなものなので、ずっとここで戦うことを目標としていました。なので、『ようやくここに来られたな』という思いでいっぱいです。
──今季は52台がエントリーしています。BoP(バランス・オブ・パフォーマンス/性能調整)が施された52台ものGT3が一斉にスタートする中で、頭角を現すのは容易ではないかと思います。そんな中でも前に出るには何が大事だと思いますか?
YN:まず一番はクルマを壊さないこと。勝負するところを間違えないように心掛けています。攻めるところはしっかり攻めて、引くべき所では意固地にならずにすっと引いて切り替える、というレース感は日本のレースとはまったく違う部分ですね。3時間の耐久レースですので、勝負所を間違えるとすぐに終わってしまいます。
──ランボルギーニの育成ドライバーということで、ワークス関係者とはどのような関わりを持ってレースに参戦しているのですか?
YN:ミルコ・ボルトロッティらランボルギーニを代表するワークスドライバーを担当しているエンジニア陣が、僕たち育成ドライバーが所属するチームにきて、セットアップを作る際のアドバイスやデータ解析を行い、レースの組み立て一緒に作っていきます。
先輩ワークスドライバーたちと一緒に直接なにかをすることはめったにありませんが、彼らと仕事をしているエンジニア陣がそばにいるので、とても勉強になります。ランボルギーニのワークスドライバーと肩を並べる準備はできているという気持ちを持ちつつ、更にレベルアップするために一丸となって取り組んでいきます。互いを尊敬・尊重しながら仕事をする関係を築けていることがありがたいですね。ランボルギーニは他メーカーと比べれば、みんなが知り合いというアットホームな雰囲気です。そのファミリー感が、僕にとっては大好きで居心地の良いところです。
ですから、ファクトリードライバーになっても今とレースへの取り組み方は、さほど変わらないのではないかと思っています。そう言えるほどにファクトリードライバーと同じアプローチでレースウイークに取り組めていると思います。GTWC参戦一年目ですが、気持ちの面ではランボルギーニのファクトリードライバーだという意識を持ちながら、ファクトリーのエンジニアとともにレースに挑んでいます。
──ところで、根本選手のSNSを見ると、イタリアでは美味しそうな食生活が充実していますね。
YN:イタリアには1年の半分近くは住んでいますし、あれもこれもと食べる状態からは少し落ち着いてきました。たとえば、日本のサラダはみずみずしくて美味しいですよね。イタリアの野菜は苦みがありますが、最近はイタリアのサラダも楽しめるようになってきました(笑)。
朝はコーヒーとオレンジジュース、お昼はサラダ、夜はその日の体調や栄養を考えて食べるようにと、イタリアでの食生活も整ってきましたので、レーシングドライバーらしいアスリート飯になってきたのかと思います。イタリアに来始めた頃は、何を食べてもおいしいから手あたり次第、好きな物を好きなだけ食べていましたけどね(笑)。
──今季はGTWCと並行してイタリアGTのエンデュランスカップにも参戦されますが、次のレースまでの期間はどのような生活をしているのですか?
YN:ランボルギーニのファクトリーエンジニアらとのミーティングもありますし、量販車のファクトリーやショップへ挨拶に行ったり。また、ランボルギーニ専属のトレーナーの元でトレーニングをして過ごしています。最近はロードバイクも手に入れましたので、イタリアでも自転車でのトレーニングを始めました。僕が住むボローニャ近郊は道幅も広く、フラットな道が続くのでとても走りやすいですよ。
日本にいるとどうしても用事が多く、時間に追われる中での生活ですが、イタリアにいると日々の時間がゆっくりと流れている感じですので、トレーニングや次のレースへの準備に集中できる素晴らしい環境だと思います。
──ボローニャ近くにお住まいということは、イモラの開幕戦は本当の意味でのホームレースですね。
YN:アパートからは高速道路を使って20分ほどなので、レースウイークの木曜日までは家からサーキットに通っていました。チーム関係者も家から毎日直接サーキットに通っていましたね。チームにとっても僕にとっても初出場となるGTWCの開幕戦がイモラで、本当に『ホームレース』となり、気持ち的にもリラックスして挑めていて良かったと思います。
──ヨーロッパのレース界で、そろそろしっかりと名を示すべき時期にきましたね。
YN:ランボルギーニ・ヤングドライバープログラムは2年、GT3プログラムは3年目で、今年は海外挑戦5年目となります。だからこそ、本当に今年は実績を出し、プロとしての道を決めるという覚悟で挑んでいます。来年はファクトリードライバーになって今まで応援してくださったスポンサーさんに少しずつペイバックしていかなければいけない時期に入っていると考えています。今年は26歳になるので、プロドライバーとして、その収入だけで生きていけるようにならないといけませんし、今年は本当の意味で勝負の年となると思います。
また、ヨーロッパのメーカー育成ドライバーは、メーカーに所属して将来的に自社のプロになるために育成をして頂いている訳ですが、他のメーカーからファクトリードライバーのスカウトが入ることも多々あります。僕はいまランボルギーニで育成して頂いていて、正式なファクトリードライバーとして契約してもらえるようになることが一番の目標ではありますが、それを待つ間に他のメーカーからお声を掛けて頂けたら、いつでも飛び込めるように、今季のGTWCを通してしっかりとポテンシャルを発揮できるようにフォーカスして挑みます。もちろんランボルギーニで世界一を獲るのが今の目標ですが、結果的にどこのメーカーへ所属することになっても自分の実力をしっかり発揮できるよう準備はしています。
──最後に日本のファンの皆さんに向けて、一言お願いします。
YN:どうしても日本ではGTWCがあまりポピュラーなレースカテゴリーではないので、僕ら日本人ドライバーが参戦することで日本での知名度アップや魅力をどんどん発信できたらいいなと思います。また、僕が以前にドライブしていたランボルギーニ・スーパートロフェオもそうですし、他のシリーズでも良いので、日本の若手のドライバーがもっともっと海外のレースに挑戦するきっかけになれたら嬉しいです。
まだ新型コロナウイルスの影響が完全には収束していないため、スポンサーさんにも実際にヨーロッパに足を運んで現地で応援して頂くことが難しい状況ですが、いつかスポンサーさんやヨーロッパのレースを現地で観戦してみたいという、レースファンのみなさんとツアーを組んでレース、そしてヨーロッパの素晴らしさを一緒に体験して頂く機会を作るのも、今後の目標のひとつです。
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今季は世界各国から競合eスポーツプレイヤーが集うGTWCのeスポーツシリーズにも挑戦している根本悠生。イモラでの開幕戦では、筐体にトラブルが発生も、シルバーカップ3位表彰台を獲得し、賞金2500ユーロを手にした。「2022年は勝負の1年」と意気込んで挑むGTWCの活躍に期待したい。