創設以来最大となる、年間エントリー登録30台を集めたTCR UKの2022年シーズンが開幕。4月16~18日にオールトンパークで争われた2ヒートでは、今季よりBTCCイギリス・ツーリングカー選手権からのスイッチを決めたクリス・スマイリー(リスタート・レーシング/FK8型ホンダ・シビック・タイプR TCR)と、アストンマーティンF1チームのアンバサダーも務めるジェシカ・ホーキンス(エリア・モータースポーツ・ウィズ・ファストR/セアト・クプラTCR)がシリーズ初参戦で初優勝を飾っている。
2018年に創設され、以降の3年間はツーリングカー・トロフィーと名称を変えるなど、新型コロナウイルス(COVID-19)感染症の影響も受け、一時は1桁台の参戦台数に落ち込む存続の危機にさらされたシリーズは、ふたたびTCR UKのシリーズ名を採用する2022年に向け、史上最大のグリッド台数を集める活況を見せている。
その混戦状況の予選でまず先手を奪ったのは、元BTCCレギュラーの実力を披露したスマイリーで、アイザック・スミス(レースカー・コンサルタンツ/フォルクスワーゲン・ゴルフGTI TCR)やブルース・ウィンフィールド(エリア・モータースポーツ/セアト・クプラTCR)らを退けポールポジションを獲得、新チームの船出を飾って見せた。
「新しいチーム、新しいクルマ、僕にとって新鮮な挑戦だったが、この旅路には自信を持っているんだ。シーズンを前向きなスタートに導くためのすべてが整っていたからね」と、過去2シーズンはエクセラー8・モータースポーツのヒョンデ(旧ヒュンダイ)i30ファストバック Nパフォーマンスをドライブして来たスマイリー。
イギリスの公休日となる“バンク・ホリデー”の18日月曜午前に始まったレース1は、ポールシッターのスマイリーがターン1に向けホールショットを決め、そのままライト・トゥ・フラッグで完勝。15周レースも残り10分というところで、フロントロウ発進のスミスを捉えたマックス・ハート(ジャムスポーツ・レーシング/ヒョンデi30 N TCR)が2位を奪い、ホンダ、ヒョンデ、フォルクスワーゲンの3メーカーがポディウムを分け合うリザルトとなった。
■レース2のトップ争いは0.2秒差で決着
続いて現地午後14時45分に開始されたレース2は、予選9番手、レース1でも9位とつねにシングル圏内での健闘を見せていたホーキンスが主役となり、前戦トップ10リバースグリッドから僚友のジェイミー・トンクス(エリア・モータースポーツ・ウィズ・ファストR/セアト・クプラTCR)と並んでスタートを切ると、ターン1で早くも首位浮上に成功する。
直後、オールドコースでクラッシュが発生し、2度のセーフティカー(SC)導入がコールされるも、女性限定のシングルシーター選手権、Wシリーズ初年度から参戦する首位ホーキンスは、いずれのリスタートも無難にこなしていく。
一方、その後方でみるみるポジションを回復する勢いを見せたのがレース1で2位に入ったハートのヒョンデで、最初のSCピリオドでは10番手から6番手へ。続く2度目のリスタートでは、競り合っていたライバルの車両トラブルにも助けられ、一気にトップ3へと進出する。
その後、カラム・ニューシャム(パワー・マックスド・レーシング/セアト・クプラTCR)とスミスによる3番手争いが激化したことで、2番手浮上のハートは最終ラップに向け首位ホーキンスにプレッシャーを掛けていく。
しかし旧型クプラでこれをしのぎ切ったホーキンスは、わずか0.261秒差でフィニッシュラインに先着。鳴り物入りのTCRデビュー戦で勝利を手にする、見事なドライビングを披露した。
「本当に……私はこういうとき何を言うべきかさえ分からない。それほどこの感触から遠ざかっていた」と、久々に味わう勝利の喜びを表現したホーキンス。
過去2年のBTCCスポット参戦のみならず、ハリウッド映画のスタントドライビングなどもこなす多彩な27歳は「この気持ちを感じるのは本当に本当に久しぶり。今はただただ、心の底からうれしいわ!」と語り、2戦連続2位表彰台のハート、勝利を分け合ったスマイリー、そして3位表彰台と4位入賞のスミスに次ぐ、ランキング4位でシーズンをスタートさせた。