開幕戦バーレーンGPの取材を行うためにアラブ首長国連邦のドバイからバーレーン行きの飛行機に搭乗したら、見覚えのあるスキンヘッドの男性が2列前の座席に座ろうとしていた。
思い切って「マーク!!」と声をかけると、筆者の予想は間違っておらず、そのスキンヘッドの男性はこちらを確認して、サムアップしてくれた。
彼の名前はマーク・アーナル。昨年までキミ・ライコネンのフィジオを長年務めてきたベテランだ。そのアーナルがなぜ、バーレーン行きの飛行機に?
「今年からセブ(セバスチャン・ベッテル)のフィジオになったんだ」
バーレーンの空港に到着し、「じゃ、また明日!!」と言って別れた後、「ベッテル、新型コロナ陽性」のニュースが。結局、アーナルと話ができたのは、バーレーン行きの飛行機のなかだけとなった。
ベッテルは続く、第2戦サウジアラビアGPも欠場。第3戦オーストラリアGPが今シーズンの初レースとなった。そのオーストラリアGPでベッテルのフィジオを務めていたのは、昨年まで担当してきたアンティ・コンタスだった。
いったい、今年のベッテルのフィジオはコンタスなのか? それともアーナルなのか?
「じつは今年の1月に私に待望の第1子が生まれたので、家族との時間をこれまで以上に持ちたいとセブにお願いしたら、快諾してくれたんだ。そこでセブがマークとのふたり体制を提案してきて、私も了承したというわけなんだ」
アーナルが長年フィジオを務めてきたライコネンはベッテルと親交が深く、自宅もスイスの近所。どちらのフィジオもドライバーの自宅からそう遠く離れていないため、アーナルがコンタスとともにベッテルのフィジオを担当するのは精神的にも物理的にもまったく問題なかったというわけだ。
そのベッテルはオーストラリアGPのスタート前の国歌斉唱のとき、ひとりだけTシャツを着て臨んでいた。その胸には鳩のイラストともに「Vogel des Jahres」の文字が。直訳すると「その年の鳥」という意味だが、オーストラリアGPではヘルメットをウクライナの国旗色に染め、手首にも同じデザインのリストバンドをしていたことからも、ウクライナの平和への祈りが込められていることは容易に想像できる。
第4戦エミリア・ロマーニャGPで、どちらのフィジオに会えるのか? 楽しみにしたい。