F1の現場で働く人たちのバッグには一体何が入っているのだろうか。レッドブルが公開したピットストップならぬ『キットストップ』という動画では、チームで働くスタッフが毎戦サーキットに持ち込む必需品(=キット)を紹介してくれる。
今回の動画に登場したのは、マックス・フェルスタッペンのパフォーマンスコーチを務めるブラッドレイ・スケインズ。彼はいわばフェルスタッペンの専属トレーナーであり、ドライバーが高いパフォーマンスを発揮できるようコンディションを整えることがその仕事だ。
そんなスケインズのリュックには、やはりトレーニング用品が詰まっている。彼はまず、全身や首のウォーミングアップに使うレジスタンスバンドや、ジャグリング用のボールを見せてくれた。
あまり結びつかないように思われるF1とジャグリングだが、トレーニングにジャグリングを取り入れるドライバーは多い。スケインズによると、ジャグリングには「眼と手の連動性」を高める効果がある。目で見た情報を瞬時に処理して手の動きに変えることは、時速300キロでの判断を迫られるF1ドライバーに必須の能力であり、ジャグリングはそれを鍛えるのにうってつけなのだ。
さらにジャグリングのボールには他の用途もあるとスケインズは語る。レース前のグリッドでキャッチボールをしたり、落ちてくるボールに反応するトレーニングをしているドライバーの姿を見たことがある人は多いはず。このひとつのボールで様々なことに使える点が、移動の多い彼の必需品たるゆえんだろう。
続いて彼がみせてくれたのは、なにやら見慣れない円盤状の物体。『ブレイズポッド』と呼ばれるこの器具は中央部のボタンが光るようになっていて、光に反応してボタンを押すことで反射神経のトレーニングができる。スタート時の反射速度をあげるためにこちらも欠かせないツールだ。
ここまでトレーニング関連のものが続いたが、それはあくまで彼の仕事の一部分に過ぎない。パフォーマンスコーチの役目は、ドライバーのコンディションをトータルでサポートすること。そのため、過酷なレース環境で戦うドライバーの体調を考えた栄養食や、「本当は使わずに済んだほうがいい」というテーピング用のフィジオテープも彼の必需品となっている。
一見シンプルな彼の『キット』だが、毎週のように世界中を転戦するF1はスタッフにとってもハードな世界。少しでも荷物は減らし、ドライバーに本当に必要なものだけを持ち込むのが、世界チャンピオンを支える彼の流儀のようだ。