なぜ、予選で9番手を獲得した角田裕毅(アルファタウリ)が、F1第5戦マイアミGPの決勝レースで、ポイントを獲得できなかったのか。
レース後、角田はその理由を次のように語っている。
「最初からペースがなくて、厳しい状況でした」
ペースが上がらないということは、タイヤが十分にグリップしていないということだ。タイヤがグリップしない原因は大きくふたつあり、ひとつはタイヤに熱が入らずにゴムが作動しないというもの。しかし、この日のマイアミはスタート時点で気温が約30度、路面温度も約40度あり、タイヤに熱が入らないということは考えにくい。
そうなると原因はもうひとつしかない。それはオーバーヒートによるデグラデーション(性能劣化)だ。タイヤがオーバーヒートするのは路面温度も関係しているが、それよりも大きいのは路面を滑らせることによる摩擦熱による影響だ。
メルセデスのトラックサイドエンジニアリングディレクターを務めるアンドリュー・ショブリンも次のようにマイアミGPでのタイヤの使い方の難しさを説明する。
「予選に向けていくつかの変更を加えたが、それでも問題があり、リヤタイヤがスライドし始めると、すぐにオーバーヒートして、タイヤがダメになった」
このショブリンの発言は予選後なので、原因はもしかするとタイヤに熱が入らずにスライドしていた可能性がある。ところが、それがロングランではうまく作用し、レースでは12番手からスタートしたジョージ・ラッセルが5位、6番手からスタートしたルイス・ハミルトンが6位とレッドブルとフェラーリに次ぐポジションでフィニッシュした。
逆に予選で2台そろってQ3に進出したアルファタウリは、レースで苦労したことを考えると、ややオーバーステア気味のセッティングにしたことによってリヤタイヤがスライドして、オーバーヒートを加速させたのではないかということだ。
金曜日まで苦しんでいた角田が、予選になってペースを取り戻した要因をこう語っていた。
「金曜日から結構、大きくセットアップを変えました」
もしかすると、そのセットアップ変更が滑りやすいマイアミ・インターナショナル・オートドロームでのレースに適していなかったのかもしれない。