F1第5戦マイアミGPの予選後、一通り取材を終えて、メディアセンターに帰ってくると、仲のいいヨーロッパのメディアが近づいてきて、こう言った。
「今日のユウキはコメントでは喜んでいたけど、何かに腹を立てていたようだったね」
この日、角田裕毅(アルファタウリ)は予選でQ3に進出し、9番手のポジションを獲得した。本人も次のように語っている。
「今日の予選のパフォーマンスには満足しています。というのも、初日のフリー走行1回目からかなりクルマに手こずっていて、Q3を目指すのは簡単ではないと思っていたからです」
今シーズンの角田は、マシントラブルが何度かあったせいで、予選でなかなか本来の結果を残すことができず、今シーズンここまでの4戦で、Q1落ちをじつに3回も経験。今回のQ3進出は今シーズン初めてだった。
そんななかで、今週末はマシンにかなり手こずってはいたものの、大きなマシントラブルにはここまで見舞われることなく、予選を戦うことができた。だから、予選後、最初に口にしたのは苦しいなかでQ3に進出したことに対する自信だった。
「だから今日はいいカムバックができたと思うし、予選では間違いなくクルマのパフォーマンスを最大限に引き出せたと思います」(角田)
ところが、ある質問の後、角田の表情が一瞬、曇った。その質問とはQ3の最後のアタックのタイムが伸びなかった理由を尋ねられた件についてだった。
「(アウトラップで)トラフィックにつかまってしまい、タイヤにうまく熱を入れられず、冷めてしまったままアタックを開始したので、セクター1でグリップを得られずにうまく走ることができませんでした」
Q3の最後のアタックは、角田が隊列の最後にいた。前を走るのはチームメートのピエール・ガスリー。しかも、ピットアウトした時点では角田が前を走っていて、アウトラップで強引に抜かされて、最後尾に下がってしまった。
「抜かれたのは、自分の責任なので、次は同じことをやられないように気をつけます」
多くを語らなかったが、そのときだけ表情が厳しかったのは、強く印象に残っている。