北米最高峰NASCARカップシリーズへの参戦を表明しキミ・ライコネンは、デビュー戦を予定する8月のワトキンス・グレンよりも早く、実戦でドライブする可能性はあったと認めつつ、できるだけ競争力を高めるため「エントリーを急がないことを選択した」と語り、将来的にさらに多くのイベント参戦が実現するかどうかについても、含みを持たせる言葉を残した。
新興チームながら今季2022年はつねに優勝戦線に絡む活躍を演じるトラックハウス・レーシングは、ダニエル・スアレスと今季“台風の目”ロス・チャスティンの2台体制でカップシリーズに参戦。そのチャスティンはすでにシーズン2勝を飾っている。
その好調トラックハウスが立ち上げたのが『PROJECT 91』と呼ばれる国際ドライバー向けの3台目参戦枠で、同プログラム最初のドライバーとして、多彩な才能を誇る元F1王者の起用がアナウンスされている。
ライコネン本人への打診は昨季終盤とかなり早い段階のもので、今季序盤のシリーズ戦にデビューする可能性があったことも認めつつ、8月まで待つ判断を下したのは「準備にもっと時間をかけたかった」からだと明かした。
「たぶん、この話が来たのは昨年の終わり頃か、それよりもっと前だったかもしれない。ただその時点で、僕自身も何かが起こるかもしれないと感じていた」と語ったライコネン。
「最初はあまり真剣に取り合っていなかったけど(笑)、さらに後になって今季から導入された新規定(Next-Gen)車両はどのように機能するのか、レースはどんなトラックで開催されるのか、その他のさまざまな情報に関して話し合ったんだ。そしてそれは僕にとってすべて理に叶っていた。もちろん、僕らの家族にとってもね」
F1参戦休止中の2011年には、WRC世界ラリー選手権への参戦と並行し、当時のカップシリーズ下部組織だったネイションワイド(現エクスフィニティ・シリーズ)とトラック・シリーズにもエントリーした経験があり、そこでレースを戦った際には「いつも楽しんでいた」と振り返る。
「たった数回だけど楽しかった。だから今回も、良いレースと楽しい時間を過ごせることを願っている。それは僕にとって明らかに新しいクルマであり、アメリカのどこへ行っても未知のコースばかり。でもそれはいつものことで、僕らはすぐにそれを理解できると確信している」と続けたライコネン。
「今年はさらに多くのイベントに参戦する機会があったことも確かだが、それは急ぎ過ぎのような気もしたんだ。あらゆる面でできる限りのことをしようとすると、このレースまで待つほうがいいと判断した。そうすればすべてを準備でき、少なくとも100%正しく仕事をしたと言える。結果は誰にもわからないけど、少なくとも自分たちにできる限りのチャンスを与えたいからね」
■ライコネン「ロードコースでは、少なくとも何かをしようとするチャンスがあると思う」
アルファロメオでの役割を終え、最後のF1出走から約半年が経過したライコネンだが、ふたたびレースに出場することを「楽しみ」にすると同時に、ここまでのあらゆるカテゴリーでの経験が、ワトキンス・グレンで活用できるかは「未知数だ」と考えている。
「僕は長年モトクロスチームを持っていた。日本から直接のコンタクトを受けたカワサキのファクトリーチームをね。僕もそれに乗っているときは心から楽しんでいるけど、レースに出るには遅すぎるんだ! たぶん今後も二輪か四輪を問わず、いくつかのクラブレースを楽しむことはある。レースはとても楽しいし、それがF1であろうと他のカテゴリーであろうと、何であるかは関係ないから」とライコネン。
「もちろん、僕の背後にはF1の話題がいちばん多くついてくるのは間違いないだろうけど、これが多くの可能性を開いてくれる。僕にはネイションワイドとトラックシリーズの経験が少しずつあり、オーバルでは何が起きるかも想像できる。そして今度はロードコースだ。そこが楽しみだし、彼ら(カップシリーズ参戦ドライバー)は緊密で、とてもハイレベルな勝負をしている。でもロードコースでは、少なくとも何かをしようとするチャンスがあると思う」
これで少なくとも、カップシリーズへのデビューが決まったライコネンだが、その後の参戦数がさらに増えるかどうかは「誰も知らないし、わからない」と述べた。
「ジャスティン(・マークス/トラックハウスの共同所有者)はアメリカからここまですっ飛んで来て、すべてを僕に託してくれた。だから僕はここにいるんだ! その後はどうなるか? それは誰にもわからない。そこで良いレースをして楽しんで、未来がどうなるか見ていきたいが、何も予定はないんだ。僕が今持っているのはそれだけだよ」