2009年F1チャンピオンのジェンソン・バトンは、マクラーレン・レーシングのCEOザク・ブラウンが、ダニエル・リカルドのパフォーマンスについてネガティブな発言をしたことは、良い効果を生まないとして批判した。
F1モナコGP前に、ブラウンは『Sky Sports』のインタビューにおいて、2021年に加入したリカルドは、チームの期待に応えるパフォーマンスを見せていないと述べた。
「ランド(・ノリス)の方が明らかに優位に立っている。ダニエルはもっとランドに近づき、良いチームメイトバトルができるものと考えていた」とブラウン。
「ダニエルはマシンに良い感触を持てずにいるだけだ。我々はやれることをすべてやろうとしている。だが、(スペインは)またもや残念な週末になった」
「(優勝した)モンツァといくつかのレースを除くと、全体的に見て、彼自身の期待、あるいは我々の期待に沿ってはいない」
「こういうときにできるのは、チームとして懸命に取り組み続け、コミュニケーションを取り続け、努力し続けて、今うまくいっていないことが早くうまくいくよう期待することだけだ」
モナコでこのコメントについて聞かれたリカルドは、「それは嘘ではない。かなり真実だ」と答えた。
「そのコメントを個人攻撃とは考えていない。僕の肌はきれいに日焼けしていて、しかも面の皮が厚い。僕自身より僕に厳しい人間は誰もいない」
「僕たちは協力し合って、懸命に取り組んでいる。チームも僕もそれを望んでいる。一緒にやり遂げようとしているんだ」
ブラウンの発言から、2023年末までのリカルドの契約が早期に解除されるのではないかという推測が持ち上がった。そんななかでブラウンは、契約には終了を早める場合の条項があると述べ、そのうわさを加速させた。
バトンは、こういったブラウンの発言は良い結果につながらないと考えている。
「ザクは自分の思いどおりに動く男だ。僕が彼の考えや彼の発言を変えることはできない。でも、ああいうことを言ったことに驚いた」
「チームの人間なら誰もが、所属するドライバーを守るべきだ」
「F1はメンタルゲームだ。彼らは皆、計り知れないスキルを持っているが、頭の中が正しい状態でなければ、力を発揮できない」
「だからこそ、ザクが(リカルドはチームの)期待に応えていないと言い出したことに、僕は驚いた」
「それは分かっていることだが、チーム代表がわざわざそんなことを言ったら、間違いなく傷つく。ダニエルの反応からみても、それは辛いことだ」
「彼らがあのレース以来、話をして、シーズンのなかで、ダニエルと彼を取り巻くチームから、ベストの力を引き出すことに集中できることを願っている。そうして、彼が将来どうなるのかを見ることになる」
「ドライバーにとって簡単な状況ではない。僕たちはいろいろなことを目にしている。(モナコのFP2で)彼が事故に遭った時、エンジニアが『クルマは大丈夫か?』と聞き、ダニエルは『僕は大丈夫だよ』と答えた。ザクがダニエルについてネガティブなことを言ってから、僕たちは気付いたんだ。そうして手に負えない状況に陥ってしまう」
「厄介な状況だ。誰もが知っているように、F1はマインドゲームなんだ」
リカルドの今後についてバトンは、契約期間の2023年末までマクラーレンに残るとは断言できないと示唆した。
「ダニエルはとても強い立場でチームに加入した。彼の方に有利な契約になっていると思う。それでも契約には常にある種の条項がある」
「ドライバーとしては、自分が走ることをチームが望まないのであれば、とどまりたいとは思わない。逆の場合も同じだ。通常は、契約書の条項よりも簡単な形で契約を終える方法があるものなんだ」