この5月11日に22歳になったばかりの角田裕毅(アルファタウリ)。司会者からいきなり、「ミラノで誕生日を祝ったんだって?」と訊かれて、かなり驚いていた。
角田:え? どうして、そんなこと知ってるの? そう、友達とミラノで過ごしたんだ
しかし角田はすぐに、こんなふうに鮮やかに切り返した。
角田:今週末、マシンのアップデートは何もないけど、僕の方は22歳にアップデートした。それがうまく機能してくれるのを期待しているよ。とにかく、いい誕生日だった
ドライバー会見は、5人ずつ4パートに分かれて行われる。角田の登場したパートには、ジョージ・ラッセル、ルイス・ハミルトン(ともにメルセデス)も一緒だった。同じチームのふたりのドライバーが同席するのは、基本的に主催者側は避けるものだ。それが今回メルセデスのふたりを一緒にしたのは、彼らは今でもチームメイトなのか、むしろライバル同士なのか、見てみたかったのだろう。
ハミルトンにはまず、以前のレースでの無線についての質問が飛んだ。ここ数戦のハミルトンは今まで以上に無線で公然と不満を述べ、それに加えてラッセルを意識したやりとりが多いように思える。
Q:ルイス、メルボルンでもマイアミでも、あなたはレース中の無線でチーム戦略に満足していないことを表明し、あとで話し合おうと言っていました。チーム戦略について、何か懸念があるのでしょうか? あるいはこの種のコメントが、TV中継で意図的に流されすぎていると感じていますか。
ハミルトン:チーム戦略に関しては、何の問題もないよ。そして僕らはレースの前も後も、十分にコミュニケーションを取り合っている。そして僕らは(あのレース中は)ちょっと不運だった。何を言いたいかというと、中継を観ている人にとって、コクピットのなかでどんな風に感じているのかを本当に理解するのは難しいということなんだ。日常生活ではありえないくらい感情は高ぶるし、心拍数は跳ね上がる。とにかく冷静な状態で、誰かと普通に会話しているときと同じではないってことだ。そして心拍数が上がっている時は、いつもベストな答えが出るとは限らない。でもうまくやり遂げたいという強い気持ちは、(無線のやりとりから)汲み取ってもらえると思うけどね
そっけない否定で終わるかと予想していたが、むしろハミルトンはコクピットのなかで戦っている最中の自分の心理を一生懸命説明し、我々の理解と共感を期待しているように見えた。勝ち続けていた頃とは、明らかに違うハミルトンのように感じるコメントだった。
今季の苦戦について訊かれた際も、その姿勢は変わらなかった。
Q:ルイス、今シーズンは厄介なスタートとなりましたが、逆境の時こそ成長のチャンスという考え方もできます。今季ここまで、あなたは何を学んだのでしょう。そしてジョージ、リーダーとしてのルイスの資質をどのように見ていますか?
ハミルトン:まず言いたいのは、僕は決してこのチームのリーダーじゃないってことだ。ジョージと僕は同じ立場だし、チームの他のみんなと同じように一生懸命に働いて、チームが前進する手助けをしている。そして逆境や困難な時期を経験することで、自分自身や物事への対処の仕方、反省の仕方、マイナスをプラスに変える方法などを常に学んでいる。ただし、特に今シーズンに多くのことを学んだとは思ってない。ほとんどは今まで経験したことばかりだし、それが大いに役に立ってる。そして自分の精神的な強さを、再確認している。たとえ勝利のために戦っていなくても、十分楽しめているのはそのおかげだと思う
ラッセル:ルイスはチーム全体から、最大限の力を引き出そうとしている。それを見るのは、本当に刺激的なことだ。ルイスのやり方、トト(・ウォルフ代表)のやり方、そして僕らが直面している問題を解決するために全員が力を合わせているのを見ると、それが僕自身のモチベーションにもなる。ルイスとチームメイトになり、メルセデスの一員になれたことは、本当に恵まれたことだと思っているよ
ここで話題は、マイアミでも出た装身具に関するものになった。
Q:ルイス、コクピット内でアクセサリーをつけることの是非について、FIAとの話し合いは続いていますか?
ハミルトン:マイアミの日曜日に話したのが最後で、それ以降は誰とも話していないんだ。ただ結婚していれば、結婚指輪をつけたままF1マシンを運転できるんだよね。それって、どうなんだろう。
ハミルトンとしては、規制に一貫性がないと言いたかったのだろう。するとラッセルが、「だったら、結婚すればいいんだよ」と、絶妙なツッコミを入れた。ハミルトンは少し苦笑いしながら、「いや、きみが先にしなよ」と返していた。
最後の質問は、この週末のマシンアップデートに関するものだった。
Q:今週末のアップデートは、メルセデスが今年のクルマのコンセプトについてミスを犯したと認めるかどうかの判断材料になると、ウォルフ代表は話していました。もしチームが「我々は間違っていた」と言ったとしたら、どう思いますか?
ラッセル:今週末は確かに重要な週末になると思う。ただ『ローマは一日にして成らず』でね。誤りを認識して、それを正すには時間がかかるんだ。2週間前のマイアミで、僕らは進むべき方向性を理解できた。それが最初の試練で、今週末はその次の試練ということだ。もちろんいきなり表彰台の真ん中に立つことはないと思う。でも今週末は、ポジティブな結果を得られると思っているよ
ハミルトン:今季のマシンデザインが正しいか間違っているか、僕はコメントできる立場じゃない。ただメルセデスは常に革新的で、面白いコンセプトを持っているチームなんだ。そして僕らが今いる場所が正しい方向かどうか、この週末で理解できると思う。万一そうじゃなかった場合も、ゼロからやり直すことにはならないと考えている
この週末の力強い復調を見る限り、メルセデスはどうやら正しい方向に向かっているといえそうだ。