2022年の全日本スーパーフォーミュラ選手権は5月21〜22日、大分県のオートポリスでシーズン第4戦を迎える。20日(金)は曇り空のもと、サポートレースの走行セッションの合間に各チームがピットストップ練習を行うなど、週末に向けた準備が進められた。
2022年シリーズは4月に富士の連戦で開幕。ここでは昨年王者の野尻智紀(TEAM MUGEN)と平川亮(carenex TEAM IMPUL)が勝利を分けあった。
2週間後の第3戦鈴鹿では、雨のなか松下信治(B-Max Racing Team)が優勝。野尻は鈴鹿でも途中までトップを走行し、2位でフィニッシュした。鈴鹿では平川が沈んだこともあり、現状ランキングでは野尻が56ポイントと大きくリード、これに40ポイントの平川、20ポイントの松下とサッシャ・フェネストラズ(KONDO RACING)が続いている。
そんな状況で迎えたオートポリス戦の金曜、中位グループからの“抜け出し”を狙うふたつの陣営に、ここまでの状況や今週末へのアプローチを聞いた。
まずは前戦、松下とチームを初優勝に導いたB-Max Racing Teamの本山哲監督だ。ウエットコンディションで見事なタイヤマネージメントも見せた松下は、終盤鮮やかな逆転劇を見せた。
「富士のときはリズムがすごく悪くて、それを立て直すという意味での第3戦でした」と本山監督は振り返る。
「その部分では、チーム全員がレースウイークを通してきちんとうまく進められたと思うけど、(予選日の)ドライコンディションを見てもらえれば分かるとおり、勝てる状況ではなかった。ただ『表彰台、あるいは6位以内には入って次のステップに繋げよう』と言っていたなかで、幸いにも雨が降ってくれたし、アウト側のグリッドだったというのもあっての結果でした」
本山監督は松下のスタートを「上手い」と評しつつ、難しい雨のレースでクレバーなレース運びと安定したドライビングを見せた点も、大きく評価している。
「この結果から見ても、チーム全員が落ち着いて頑張れば、上位には必ず行ける。次の目標はドライコンディションで、きちんと実力で勝てるレースをすること。1回勝ってよかったね、ではなく、きちんと現実を見つめて、実力で勝てるようになりたい」
今後、ドライでの勝利を手にするためには、何が必要なのか。第3戦後に松下自身も触れ、その後組田龍司総代表も「本当にマズいムードになってしまった」と振り返ったように、開幕ラウンドの富士でのチーム内部は険悪な状態だったという。そこにひとつのヒントがある。
「あれは一番はノブ自身の問題で、やっぱり精神的にちょっと弱かったり、自信がなかったりして、落ち着いてレースをできていなかった」と本山監督は開幕ラウンドを振り返る。
「もちろん、クルマの状況が悪かったら気分的に難しくなるというのは分かるけれど、そこで頑張ることによってチームを立て直すのがドライバー。もちろんドライバーにすべてを依存するわけではないけど、とくにフォーミュラレースではそこでドライバーが軸になる割合が多い。そこをもうちょっと理解してくれれば、と思っていた」
初勝利を手にして余裕も生まれたであろう松下が、さらに力強くチームを牽引していくことを、本山監督は期待している。その真価と進化が、まずは今週末のオートポリスで問われることとなりそうだ。
■タイヤの面で「作戦が読みづらい」オートポリス
昨年は2日間ウエットコンディションに見舞われたため、今週末は1年半ぶりのドライでのオートポリス戦となる可能性も高そうだ。決勝は42周または最大75分、いつもどおり『先頭車両が10周回目の第1セーフティカーラインに到達した時点から先頭車両が最終周回に入る前まで』に4本のタイヤ交換が義務付けられている。
「レースではクルマ、ドライバー含めて、タイヤマネージメントがカギになると思います」と語るのは、このところ調子を上げてきているKCMGの松田次生監督だ。
KCMGは第2戦富士では小林可夢偉が予選6番手。第3戦では雨のなか、国本雄資ともども速さを見せ、ダブル入賞を果たしている。
「いま、本当にステップ・バイ・ステップで、結構上がってきている感じはある。その階段をひとつひとつ登っていけば、最終的にはいい方向にいくと思います。現状はトップグループとは言えないですが、F1でいえばアルピーヌのような位置でしょうか。もう少し上を目指していきたいですね」
今季変更されたリヤタイヤもKCMGとしては「タイヤのもちの面で、いい方向には行っている」ということで、タイヤに厳しいとされるオートポリスも期待できるようだ。
「最低内圧は決まってしまっているなかで、デグラデーションをいかにうまくマネージメントできるかがポイントになると思います。セーフティカーリスクを考えれば早めにピットに入りたいですが、あとは後半のタイヤがもつかどうか、というところでしょうね」
タイヤをどれだけマネジメントできるのかが不透明なため、「今週は(ライバル勢の)作戦が読みづらい」と次生監督は語る。テストでの走行機会もないオートポリス、貴重なフリープラクティスの時間をどれだけロングランに割けるかも、決勝での勢力図を左右しそうだ。