F1第5戦マイアミGPの舞台となるマイアミ・インターナショナル・オートドロームは、トリッキーな最終連続コーナーを備えているが、意図的にドライバーに挑むような設計がされており、トラックの設計を担当した企業はここを「ミス誘発箇所」と呼んでいる。
イギリス企業の『エイペックス・サーキット・デザイン』社は、マイアミガーデンズのハードロックスタジアム周辺に展開する全長5.412km、コーナー数19カ所のコース設計を担当した。サーキット設計者たちの設計哲学の中心には、本物のレースを生み出すレイアウトを作る必要性があった。
「企業としての我々の精神は、すべてのF1チームと彼らのマシン、レースエンジニア、そしてもちろんドライバーたちに挑むというものだ」とエイペックス社のエンジニアを務めるチャールズ・メトカーフは説明した。
「そのため、我々はコーナーの並びに重点を置いた。高速から低速コーナーへのダイナミックレンジについてだ。そうするためには多くのシミュレーション作業を行い、1周するなかで、クルマの様々なセットアップに合う異なる連続コーナーを意図的に配置するようにした」
「ターン4から8には、超高速で横方向のGがかかるセクションがある。マシンは通過するのに苦労するだろう。ターン8の立ち上がりでのマシンパフォーマンスが、ラップタイムに大きく影響する。その後にはパワーが制限されるターン9と10があるが、そこではサイド・バイ・サイドのレースになることが容易に想像できる」
エイペックス・サーキット・デザイン社の創立者であるクライブ・ボウエンは、マイアミのレイアウトがドライバーとエンジニア双方にとってどれだけ難しいものか説明した。
「二重人格のような個性を十分に持ち合わせたレーストラックにしなければならなかった。コースはほとんどのセクションで勾配の変化があり、多くのトラクションがかかるので、柔らかいマシンセットアップが必要だ。そして一部の超高速セクションでは、空力パフォーマンスと、コーナーを通過する際に横方向のグリップを最大限に活かすために、硬いセットアップにしたくなるだろう」
しかしコース設計者たちによって「ミス誘発箇所」と呼ばれているマイアミのタイトな最終セクターは、確かにドライバーの注目を集めるだろう。
「ターン13から16までの流れは、高速道路の陸橋の下を縫っていくようになっている」とボウエンは述べた。
「ターン14に入ると、そこのエイペックスにたどり着くまでターン15のエイペックスは見えない。我々は『ミス誘発箇所』と呼んでいるが、ドライバーにとっては順位を上げるチャンスがあるところだ。なぜなら前のドライバーがオーバードライブする可能性が非常に高い」
アルファタウリの角田裕毅は、レッドブルのシミュレーターでコースを走行したが、トリッキーな複合4コーナーについては、フォーミュラEのストリートサーキットで見られるものに似ているようだと語った。
「シミュレーターでコースを走行しましたが、最初の2セクターはかなり速く、中速から高速のコーナーがありました」と角田は語った。
「セクター3は、僕は“フォーミュラEセクター”と呼んでいて、非常にタイトなコーナーが多くあります。全体的に走行するのがとても面白そうなコースだと思います」
「楽しめると思いますが、オーバーテイクは難しそうなので、予選で好結果を出さなければなりません」