2022年F1第3戦オーストラリアGPで各チームが走らせたマシンを、F1i.comの技術分野を担当するニコラス・カルペンティエルが観察、印象に残った点などについて解説する。第1回「圧勝したフェラーリF1-75。対レッドブルの優位性はどこにあるのか」、第2回「レッドブルのセッティング失敗と信頼性の欠如」、第3回「ポーパシングやオーバーウエイト。複合的な問題への対策を模索するメルセデス」に続く今回は、オーストラリアで速さを見せたアルピーヌとマクラーレンのアップグレードを紹介する。
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■速さを結果につなげられずにいるアルピーヌ
今季のアルピーヌのパフォーマンスは、昨年より明らかに向上している。高速でタイヤ摩耗の少ないジェッダやアルバートパークでは特に、フェラーリやレッドブルのような尖ったノーズを持つA522は速さを発揮した。
アルピーヌはメルボルンで、いくつかの変更を行った。下の画像にあるように、ベンチュリートンネルの入り口側にあるアウターバッフル(黄色矢印)を大型化した仕様を投入。アンダーボディの流れを最適化し、ダウンフォースを増加する目論みだった。ただし試したのはエステバン・オコンだけで、「かなりマシンと格闘させられた」と、本人は操縦性に満足していなかった。
金曜日には、ホイールとディフューザー間の空気の流れを最適化するために、リヤブレーキダクトに新しいフィンを装着してテストを行った。この部品がそのままレースで使われたかどうか、どの車に装着されていたかは不明だ。
スポーティングディレクターのアラン・パーメインによれば、次戦イモラでは新しいフラットボトムをテストする予定とのことだ。
速さを見せる一方で、信頼性には不安が残る。フェルナンド・アロンソはサウジアラビアでトラブルに見舞われたため、早くもオーストラリアで3基目のパワーユニット(PU)を投入した。
アルピーヌのCEOローラン・ロッシは、「(故障したのは)パワーユニット本体ではなく、ウォーターポンプだった」と語った。それがエンジンの冷却不良を引き起こし、オイルが熱くなり、という連鎖が起きて問題が大きくなってしまったとのことだ。
「問題はこのパーツが、エンジンと一体化していることだ。ウォーターポンプは最終的にバラバラに分解して、エンジンの中に落ちてしまった。直すためには、封印を解かなければならなかった。その結果、パワーユニットが1基減ることになったのだ」
ウォーターポンプの解決策は見つかっているとのことだが、アロンソが今後4基目を搭載してペナルティを受けるおそれは、極めて高いといわざるをえない。
■マクラーレンの競争力が上がった理由
開幕から3戦目にして、マクラーレンは今季初めて2台でポイントを獲得した。マクラーレンはメルボルンで、リヤブレーキダクトをデザインし直した(下の写真)。
「サウジアラビアより競争力があった理由は3つある」と、アンドレアス・ザイドル代表は言う。
「まず、サーキットがスムーズで、今のパッケージに合っていること。次に、いくつかのアップデートの効果が出ていること。今は一歩一歩、着実に進んでいくことが大事だからね」
「そして3つ目だが、われわれは開幕前のバーレーンテストでいろいろな問題が出て、かなり出遅れた。ライバルたちより弱い立場で、シーズンをスタートしたことを忘れてはならない。そのため最初の2戦では、マシンについて多くを学ばなければならなかった。その2戦の教訓を今回生かすことができた。この3つの要素を合わせれば、なぜ我々がここで少し優れていたのかがわかるだろう」