2022年のニュルブルクリンク24時間レースでトップチェッカーを受けたアウディスポーツ・チーム・フェニックスの15号車アウディR8 LMS GT3 EvoⅡ(ケルビン・ファン・デル・リンデ/ドリス・ファントール/フレデリック・バービシュ/ロビン・フラインス)に対し、ピットストップの際に違反があったとして5000ユーロ(約68万円)の罰金と32秒のタイムペナルティが科せられた。
チェッカーのおよそ3時間後にレースオーガナイザーのADACノルトラインから発表されたテクニカル・ブルテンで明らかとなったところによれば、レース終盤の最終ピットストップにおいて、15号車アウディは給油中のエンジン不停止があったとの判定を受けた。
だが、同チームの最終ドライバーを務めたファン・デル・リンデは、メルセデスAMGチーム・ゲットスピード3号車メルセデスAMG GT3に対して55秒の差をつけチェッカーを受けていたため、最終順位に変動はない。
■ペナルティを考慮した、ラスト2周の“猛プッシュ”
ブルテンのなかで、オーガナイザーはこう記している。
「ヒアリングの結果、スポーツ委員会は、当該ピットストップがオーガナイザーが発表したレギュレーションに対し、すべての部分で適合してものではなかったことが証明されたと考える」
「ドライバーは、チームマネジャーの指示により、給油作業完了の数秒前にエンジンを始動させた。このミスに気づいた後、エンジンは即座に再停止された」
「スチュワードはこの違反について、スポーティング上のアドバンテージが得られなかったこと、そして想定されるアドバンテージを得る目的でエンジンを始動させたわけではないものと評価する」
「スチュワードの決定において、スポーツ委員会は、成立した違反が競技上のアドバンテージをもたらさず、および競技の結果に影響を与えなかったと評価した」
ファン・デル・リンデがチェッカーを受けた際、公式タイミングモニターには当該ピットストップについて審議中との表示が出されていたため、当初はどのような裁定が下るのか、不確実な状況だった。
しばらくしてアウディの優勝が確定すると、フェニックス陣営は歓喜と安堵に包まれ、敗戦への不安は一掃された。
フェニックス・レーシングのチーム代表、エルンスト・モーザーは「考え違いがあったのだ」とSportscar365に対し語っている。
「マシンがジャッキダウンしたとき、ドライバーはエンジンを始動できると思ったのだが、(給油が)終わる前にエンジンを始動することは許されない」
「これはミスであり、エンジニアは1秒後に『エンジンを止めろ。給油はまだ終わっていない』と言ったんだ。5000ユーロのペナルティを科せれられた」
タイムペナルティが発出され、2番手ゲットスピードのメルセデスAMGの背後に追いやられる心配はなかったか、との問いにモーザーは次のように答えている。
「レギュレーションには、どのようなペナルティを受けるかについては、何も書かれてない」
「チェッカーが振られる前、彼らがどんなペナルティを出すか、分からなかった」
この燃料補給のみの最後のピットストップで何か問題が生じたことを認識したファン・デル・リンデは、当初の予定よりもハードに最終スティントをプッシュしたと説明した。
「それが起こった瞬間に気づいた。最後のピットストップの最中にね」とファン・デル・リンデ。
「エンジンは間違えて始動してしまったし、その瞬間に審議対象になるのではないかと思った」
「前を見て、できるだけ早く忘れようとした。1周後、ペナルティの可能性があると無線で言われたので、プッシュする必要があった」
そのとき、ファン・デル・リンデは2番手のメルセデスに1分弱の差をつけていたが、彼のターゲットはそれを1分以上にすることだった。当初、チームは30秒か1分のタイムペナルティを受けることを予期していた、とファン・デル・リンデは語った。
「最後の2周は、たぶんそれまで以上にリスクを冒しながら、ものすごくプッシュした」
「最終的には、このような結果になったことは嬉しい。勝利を祝っていいのか、泣いていいのか分からないような、奇妙なインラップ(ウイニングラップ)だったね」