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 10年来の分裂状態にあったカテゴリーが統合され、新たに『TC2000(ツーリスモ・コンペティション)』の名称で再出発を切ったアルゼンチン発の人気選手権、スーパーTC2000(STC2000)の第4戦がネウケンで開催され、土曜予選でわずか17歳のイグナシオ・モンテネグロ(ルノー・フルーエンスGT)がデビュー7戦目にして史上最年少ポールポジションを獲得。2ヒートの特別フォーマットで実施された日曜決勝は、今季トヨタ陣営に加入した18歳のホルヘ・バリオ(トヨタ・カローラSTC2000)がレース1を制するなど、若き新鋭が好パフォーマンスを披露する週末となった。

 南米大陸最高峰の“ハイテクFFツーリングカー”を自称するSTC2000シリーズは、5月初頭に開催された第3戦より心機一転。かつて袂を分かったTC2000陣営と再合併に合意し、シリーズ名称統一を含めた再出発を切った。

 その新体制2戦目として5月21~22日の週末にパタゴニア地方最大の都市ネウケンで開催されたイベントでは、土曜公式練習からシボレーYPFチームの王者アグスティン・カナピノ(シボレーYPFクルーズ)が速さを見せ、順当にトップタイムを記録。予選最前列獲得に向け順調な滑り出しとなった。

 このラウンドからの新たな試みとして、ノックアウト制の3セッションで争われた予選は、チャンピオンの僚友ベルナルド・ラヴァー(シボレーYPFクルーズ)がQ1を制圧。Q2ではセッションを通じてプーマ・エナジー・ホンダ・レーシングのファクンド・アルドゥソ(ホンダ・シビックSTC2000)がタイムボードの最上位を占拠したものの、終了間際にラヴァーがベスト更新のアタックを決めると、その背後からもうひとりの伏兵が現れる。

 今季より新生アクシオン・エナジー・スポーツSTC2000としてシリーズを戦うルノー陣営から、2022年のルーキーとして参戦する17歳のモンテネグロが一閃。驚くべきペースでQ2トップタイムを叩き出し、ポールポジション獲得合戦に加わってくる。

 誰がポールを手にするのか。午後最大の焦点となった緊張のQ3は、こちらもTOYOTA GAZOO Racing YPFインフィニアから参戦するルーキー、バリオのカローラが最初の驚きを演出する最速タイムを記録すると、好調シボレーのラヴァーが0.040秒差でわずかに及ばないまさかの展開に。

 するとその後方からさらにベスト更新の勢いで戻ってきたモンテネグロが1分26秒458のタイムを記録し、2番手トヨタを0.412秒も突き放す脅威的アタックで、自身初の最前列を獲得。わずか17歳、デビュー7戦目の新鋭がシリーズ史上最年少ポールポジション記録を打ち立てた。

最大バラスト60kgを搭載したジュリアン・サンテロ(トヨタ・カローラSTC2000)は、予選Q3進出ならず
一方、同50kgを搭載する王者アグスティン・カナピノ(シボレーYPFクルーズ)は予選4番手を確保する
日曜は2ヒートを通じて1回のタイヤ交換義務を伴う、20分+1ラップ勝負×2の新フォーマットを採用した

■意外な戦術をとったラヴァーが選手権首位に浮上

 明けた日曜は2ヒートを通じて1回のタイヤ交換義務を伴う、20分+1ラップ勝負のリピート開催が予定され、オープニングは17歳のモンテネグロ、18歳のバリオが並ぶフレッシュなフロントロウに対し、天候が急なシャワーを見舞ったことでさらに波乱の予感が漂う。

 幸いにして雨はすぐに上がったものの、セミウエットと化したトラックでグリーンライトが灯ると、まずはTGRのルーキーが1歳年長の意地を見せ、首位浮上に成功する。

 2周目からタイヤ交換義務消化のためマティアス・ミラ(ルノー・フルーエンスGT)らが早々にピットロードへ向かうと、4周目には50kgのバラストを搭載しながら4番グリッドを得ていた王者カナピノもタイヤ交換義務消化へと向かう。

 これでアドバンテージを得たのが首位のバリオで、彼はこのヒートを無交換でフィニッシュすることを選択し、トヨタ加入4戦目にして初のトップチェッカー。一方でファイナルラップで2番手にいたシボレーのラヴァーがここでピットへ向かい、セカンドレースに向けフレッシュタイヤをチョイスする意外な戦略を採り、代わってこちらも無交換のモンテネグロが初表彰台に。ルノー時代には連覇も経験したアルドゥソが開幕からの苦しい流れを断ち切る3位表彰台を確保した。

 続いて開催されたレース2は、序盤から無交換の上位4台がどこで義務ピットに向かうかが注目されたが、まず4周目に首位バリオがピットへ呼び戻され、代わって先頭に立ったモンテネグロが隊列を率いる展開に。

 しかしその背後から5番手発進のラヴァーが新品タイヤの威力を発揮してみるみる迫ると、11周目に力尽きたモンテネグロがピットへ。ここでリードチェンジとなり、ラヴァーが4戦連続表彰台と選手権リーダーの座を奪う戦略勝ちを収めることに。2位にミラ、3位には2019年王者リオネル・ペーニャ(ルノー・フルーエンスGT)と、ルノー勢が背後を固めるリザルトとなった。

 これで110点としたラヴァーに対し、最大バラスト60kg搭載のカローラでクラッチトラブルにも苦しんだTGRのジュリアン・サンテロ(トヨタ・カローラSTC2000)が101点で続く構図に。続く第6戦はサンティアゴに位置する同国が誇る国際トラック、テルマス・デ・リオ・オンドを舞台に6月11~12日の週末に争われる。

今季トヨタ陣営に加入した18歳のホルヘ・バリオ(トヨタ・カローラSTC2000)がレース1を制する
レース2はチャンピオンの僚友ベルナルド・ラヴァー(シボレーYPFクルーズ)が4戦連続表彰台となる勝利を飾った
これで110点としたラヴァーが新たなチャンピオンシップリーダーに躍り出た