鈴鹿サーキットで行われている2022年スーパーGT第3戦『たかのこのホテル SUZUKA GT 300km RACE』。前回の富士ラウンドで大クラッシュを喫し、新しくマシンを作り直すこととなったCRAFTSPORTS MOTUL Zだが、予選では見事な走りを見せて3番グリッドを獲得した。
ゴールデンウイークに行われた第2戦富士の決勝レースでスロー走行していたGT300車両を避け、ガードレールに大クラッシュを喫した3号車。ドライブしていた高星明誠は無事で、精密検査の結果も異常はなかったのだが、マシンは“全損”の状態で、モノコックはシーズン前のテストで使用していた230号車のものを使用し、実質2週間という短い期間のなかでチームがマシンを組み上げた。
「ミツ(高星明誠)も怪我がなく1日で退院できて、ここに向けて体のコンディショニングはしっかりと準備できましたが、チームはクルマをイチから作ってくれたので、今回がシェイクダウンという状態でした。本当に大変でしたけど(頑張ってくれた)チームには頭が上がらないですね」
「僕自身、富士のレースが終わってからいろいろと思うところもありましたが、周りがしっかりと分析してくれましたし、自分のなかではしっかり切り替えて来れたと思っています」
そう語るのは千代勝正。土曜日の公式練習で新しくなった3号車をチェックするところから始まったのだが、マシントラブルが発生し、予定どおりの走行ができなかったという。
「マイナートラブルなので、そんなに大ごとになることではなかったのですが、ちょっと(セッション中に)直さなければいけない部分があり、走行時間が短くなってしまいました。最後のニュータイヤを履いた10分間の専有走行のときも赤旗が出てしまい、運悪くミツが乗れる時間を稼げませんでした」
当初、千代はQ2を担当する予定でいたが、急きょ出走順を変更してQ1に出走した。コーナーでは激しく火花を散らす走りをみせ、1分44秒230のコースレコードを記録し、マシンの仕上がりにも満足している様子だった。
「チームも予選に向けて気合いを入れてくれました。鈴鹿を走るうえで、今まで乗ってきたGT500のなかで比べると今回が一番決まっていたと思います。(決勝レースは)みんな注目していると思うので、しっかりと表彰台に立ってファンのみなさんに良い姿を見せたいですし、みんな頑張ってくれたので、チームのためにも良い成績を残したいです」
■「予選でやり切れなかった部分は明日にぶつけたい」と高星
一方、Q2担当の高星。富士でのクラッシュで怪我はなかったものの、鈴鹿で再びマシンを乗りこなすことができるかという部分については、一抹の不安は残っていたという。
「メンタルの部分はそんなに意識していないし、変わる部分ではないとは思うので、特別何かを意識して鈴鹿に臨んだ訳ではないです。ただ、身体の部分で言うと、乗れるのか乗れないのかは実際に走ってみないと(分からない)と思っていました。そこは問題ないというのを確認できたので、それも良かったなと思っています」
公式練習ではトラブルの影響もあり、わずか3周しか走ることができなかった高星。ほぼ“ぶっつけ本番”でのタイムアタックとなり、タイヤのグリップをすべて引き出せなかったと悔しさをみせた。
「(予選前は)不安しかなかったです。本当に走っていなかったので、ニュータイヤがどれだけグリップするのかも分からなかったです」
「ただ千代さんがQ1を走って良い走りを出して、タイヤもクルマも良い状態にあるというのはタイムを見て分かりました。僕も(公式練習は)走っていないなかで、持てる実力を出してプッシュしましたが、思ったよりもグリップが高く、走り的に余ってしまう部分がすごくありました。そこは正直悔しいなという部分はあります」
それでも千代のQ1タイムに迫る1分44秒425をマークし3番グリッド獲得に貢献した高星。予選で出し切れなかった部分は、決勝でぶつけたいと意気込みを見せていた。
「もし午前中に走れていたら、もっとやれただろうという思いと、午前中を走れなかった割には良い位置で終えられたという部分と両方あるので、なんとも言えないですけど……良い位置でスタートできることに変わりはないです。予選でやり切れなかった部分は明日にぶつけたいと思います」
「前回は前回、今回は今回という形で割り切りはできていますし、今回もクルマのポテンシャルはすごく高いところにあると思います。ただ、鈴鹿はBS(ブリヂストン)がロングで強いというのも毎年言えることなので、そことどう戦えるかが分からないですけど、自分たちのベストを尽くして、ちゃんとチェッカーを受けたいです」