前回のゴールデンウイーク中に開催されたスーパーGT第2戦富士で、大クラッシュの末、モノコックを残して文字どおりバラバラの状態になってしまった3号車CRAFTSPORTS MOTUL Z。そこから約3週間、今週末に行われる第3戦鈴鹿の搬入日に3号車は復活した姿を見せたが、ニスモ3号車のスタッフたちは文字どおり、いそがしい日々を過ごすことになった。新しい3号車CRAFTSPORTS MOTUL Zの修復作業について、3号車の島田次郎監督に聞いた。
便宜上、冒頭で3号車の修復作業という表現を使ったが、実際は組み立て作業と言える状況だった。島田監督が話す。
「継続して使用できるパーツはほとんどない……ないですね。それでも幸いだったのが、テストカー(開発車両の230号車)のモノコックが手元に使える状態であったことです。非常にラッキーでした。その他のパーツは基本的に全部スペアパーツを付けたという状態です」
オフのテストなどで使用される230号車のモノコックを3号車として今回使用することになったが、その組み立てによってスペアパーツを丸ごと1台分、使うことになった。
「ちょっとまだ被害が残っているのが、スペアパーツで組んだので、今回はまだスペアの補充が間に合っていないことです。今回は23号車(MOTUL AUTECH Z)と2台でひとつという形で考えますけど、4台で考えても3つしかスペアパーツがありません」と、島田監督。
「第2戦からさすがに3週間では大きな外板部品などは間に合いませんし、モノコックのスペアを製作するにしても納期はまったく見えない状況です。一応、手配といいますか準備は進めているのですけど、この状況(ウクライナ情勢による半導体不足、コロナ禍での輸送量の低下)なので、いつ来るのやら……」
モノコックに加え、エンジンも換えざるを得ない状況だった。
「エンジンもクロスメンバーがクラッシュで壊れていました。本体は押されている状態で、ターボから前がなくなっていてエンジンがかなり擦っている感じも見えました」
通常、モノコック交換にはペナルティが課せられるが、レギュレーションに則ってGTAが認める不可抗力に該当するということで、今回の3号車はペナルティが免除されることになるという。同様に、シーズン2基のエンジン使用が認められているなか、今回のエンジン換装はカウントされない見通しだ。それでも、今回の第3戦には不安要素も多いという。
「クルマは組み上がりましたけど、一度も走行していないので、今回がシェイクダウンみたいな形になる。細かいトラブルみたいなものが出なければいいなあという心配は残っています。今回はあまり欲をかかないで、トラブルなく無事に走り切れればと思います」と島田監督。
当然、チームスタッフのなかには所属ドライバーの目の前での大きなクラッシュ、そして自分たちが組み上げた車両がバラバラに壊れた姿をみて、精神的にショックを受けたスタッフも少なくないだろう。
「かなり衝撃的なクラッシュでしたので、あのクラッシュを見て、壊れたクルマを見て、何のショックも受けていないスタッフはいないと思います」と島田監督。それでも「ウチのスタッフは強いですし、プロですので、また走りはじめればしっかり戦ってくれるはずです」と続ける。
マシンにもサーキットにも、そして関わる多くの人の心にも大きな傷跡を残した第2戦富士のクラッシュ。それぞれの立場で、さまざまな想いや願いを込めて、今週末の第3戦を戦うことになる。