松下信治がウエットで圧倒的速さを見せ、9番手から逆転で初優勝
4月23日(土)~24日(日)、三重県鈴鹿サーキットで全日本スーパーフォーミュラ選手権シリーズ第3戦が開催されました。公式予選が行なわれた23日(土)の鈴鹿サーキットは、薄日が射す春らしい天候となりました。
午後に行なわれたQ1セッション、Q2セッションの結果、ライバルを寄せ付けないタイムアタックを決めた#1 野尻智紀(TEAM MUGEN)がポールポジションを獲得。6番手に#5 牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)、8番手に#6大津弘樹(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)、9番手に#50 松下信治(B-Max Racing Team)、10番手に#64 山本尚貴(TCS NAKAJIMA RACING)がつけました。なお、予選で5番手タイムをマークした選手に3グリッド降格のペナルティーが出たため、決勝のスターティンググリッドは牧野が5番手、大津が7番手に繰り上がりました。
24日(日)の鈴鹿サーキットは朝から雨模様となりました。午前中のフリー走行を経て午後、全車ウエットタイヤを装着のうえ、決勝レースが始まりました。ポールポジションの野尻が先頭で第1コーナーへ飛び込むと、その後方では好加速を見せた牧野が3番手に、9番手スタートの松下が5番手へ順位を上げて続きました。
牧野は前を行く山下健太(KONDO RACING)に迫ると、7周目の逆バンク先でオーバーテイクし2番手へ進出しました。一方、松下は7周目に坪井翔(P.MU/CERUMO・INGING)、9周目に山下をかわして3番手へ進出。この時点で野尻-牧野-松下がHonda/M-TECユーザーによるワン・ツー・スリー体制を築きました。
この間、野尻は周回ごとに後続との間隔を広げ独走状態に持ち込んでいましたが、実は10周を前にしてウエットタイヤの表面から削れたゴムがトレッド面に付着してささくれ立つ、いわゆるグレイニング現象に見舞われていました。野尻以外にも同様の症状が発生していたマシンは多く、それらのドライバーはペースダウンを余儀なくされ、各車の間隔が急激に縮まり始めました。
20周を過ぎた頃、3番手の松下が2番手の牧野に1秒圏内に詰め寄ると、2台ともにペースを上げて先頭を走る野尻との間隔を縮め始めました。27周目、松下は日立Astemoシケインで牧野をかわし順位を上げるとさらにペースを上げ、約3秒前方を走る野尻追撃にかかりました。
29周目にはテール・トゥ・ノーズに持ち込んだ松下は、レースの残り2周を切る30周目の第1コーナーで野尻をアウト側から豪快にオーバーテイク。首位に躍り出た松下は、そのままレースを走りきり、全日本スーパーフォーミュラ選手権で自身初めての優勝を飾り、さらにB-Max Racing Teamにも初めての勝利をもたらしました。2位には野尻、3位には牧野が入賞し、Honda/M-TECユーザーの3人が表彰台を独占しました。
この結果、野尻はシリーズポイントを56点に伸ばし、2位の平川亮(carenex TEAM IMPUL)に対して16点差に広げトップを守りました。また、今回の優勝で松下が20点を獲得してランキング3番手へと浮上しました。次戦は5月21日~22日、大分県オートポリスインターナショナルレーシングコースで開催予定です。
■コメント
●松下信治 B-Max Racing Team
「前回のレースは本当にぼろぼろで泣きそうでした。今週末はマシンがどんどんよくなって、チームのおかげで勝てました。レースは予選9番手からのスタートだったので『できれば雨になって欲しいな』と願っていました」
「雨のレースはスタートが命だと思っていましたが、1周目にうまく順位を上げられ、その後、予想よりペースがよかったのですが、トップ3が見えたくらいの段階でタイヤがきつくなって前との間隔が縮まらなくなりました」
「でも、チームからの無線で『前を走るマシンもタイヤがきつそうだ』と知らされたので、自分もきつかったのですがあきらめずに踏ん張りました。今回は勝たせてもらいましたが、野尻選手は本当に強いので、この勝利に浮かれずにがんばりたいと思います」
●野尻智紀 TEAM MUGEN
「いまは『悔しい』のひと言です。とはいえ、チャンピオンシップのことを考えれば、そんなに悲観する結果ではないと思います。レースでは序盤からタイヤにグレイニングが出て、ヒートアップに苦しむことになりました。それでも後ろを引き離すことができていたのですが、牧野選手が2番手に上がってじりじり追い上げてくるのに対して、自分はペースを維持するのが難しい状況になりました」
「2位は悔しいですが、いろいろ工夫しながらやれることはすべてやった結果なので、今回は優勝した松下選手に心から『おめでとう』と言いたいです」
●牧野任祐 DOCOMO TEAM DANDELION RACING
「3位という結果は非常に悔しいです。スタートは思ったよりよくて、3番手まで上がれたのですが、タイヤが厳しくなることは分かっていたので、序盤はプッシュせずペースを意識して走っていました」
「山下選手を抜いたあたりから前とのギャップが徐々に詰まっていたのですが、一方で後ろから松下選手が迫ってきて、難しいシチュエーションになりました。でも、僕としては“守りに入る”つもりはありませんでした」
「結果的に3位で終わり、悔しいですが悔いはありません。少し冷静になって考えると、前のふたりよりレース終盤に向けてペースを上げるタイミングが少し早すぎたかもしれませんね。オートポリスではしっかり勝てるよう準備したいと思います」