今季、全日本スーパーフォーミュラ選手権のセッション後に設けられている“メディア・ミックスゾーン”。全ドライバーが1箇所に集まり同時にメディア対応を行うという、F1やWECなど海外レースではおなじみの取り組みだ。この記事ではそこで聞けたドライバーたちの“声”を、可能な限りお伝えする。
5月22日、第4戦オートポリスの決勝終了後、ミックスゾーンでのドライバーのコメントをお届けしよう。
■大湯都史樹(TCS NAKAJIMA RACING) 決勝リタイア
土曜フリー走行でのクラッシュの影響からエンジンを交換し、これにより10グリッド降格ペナルティ。最後尾からスタートした大湯だったが、わずかコーナー3つでリタイアすることになってしまった。
「3ワイドで、アウトから追い抜こうとしていました。普通にグリップしていればいけるなという印象だったので、そこから追い上げを頑張ろうとしていたんですが……」
「他のコーナーもそうですが、路面がちょっとラインを外すと、めちゃくちゃダスティでグリップがしないんです。それを予測できていれば良かったところもありますが、前を走っていた他のドライバーも、普通に走っているんだけどちょっとアウトに膨らんじゃった人とかもいました」
「そこで僕は、アウトから抜こうと勢いがついていたために、ランオフエリアに飛び出してしまって、まったく止まりませんでした。とくにあそこはランオフエリアも狭いですからね……」
■牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)) 決勝6位
予選3番手と、今回も初優勝を充分に狙えるポジションからスタートした牧野。「スタートでは絶対にポジション上げる! とずっと言っていた」という宣言どおり、2番手へとジャンプアップ。だが、「その先のペースがなさすぎて、防戦一方になってしまった」という。
「あのまま引っ張っていても全然うまくいかないだろうなと思ったので」とミニマムとなる10周目にピットインを済ませ、クリーンな状態で走ることを選んだ。
「最初はそれなりのペースで走れましたけど、レースペースは全然足りなかったですね。あれだけずっとクリーン・エアで走ってもペースが上がらなかったので。とくにセクター3がかなり厳しい状況でした。基本的にはアンダーステアなんですけど、オーバーステアも出るし……」
「予選に関しては今回、すごくポテンシャルを見せられたと思いますし、次のSUGOでもまずはポールを狙っていきたいと思うのですが、決勝レースセットに関しては、もうちょっと詰めていかないといけないかなと思います」
■ジュリアーノ・アレジ(Kuo VANTELIN TEAM TOM’S) 規定周回数未満
アレジは17番手スタートからピットインを引っ張り、中盤には上位へ。しかしスロー走行からピットイン、ガレージへと入れられてしまう。
「序盤に2回コンタクトがあって、1周目とセーフティカー明けの周にも接触があった」
「その後に100Rでコースオフして、ウォールにクルマをヒットしてしまって、クルマにダメージがあるようなのでピットに戻ったんだ」
「当初僕が予想していたほどのダメージはなかったんだけど、ガレージで修復をして、レースに復帰した。クルマは完璧な状態に戻っていなかったけど、ゴールまで走った。今日はあまり良いレースではなかった」
■宮田莉朋(Kuo VANTELIN TEAM TOM’S) 決勝5位
フロントロウからスタートした宮田だったが、オープニングラップから順位を下げてしまう。ピットアウト後は野尻智紀(TEAM MUGEN)を追う場面も見られたが、攻略できないまま5位でレースを終えた。
「今回からスタート方法の運用を少し変えたのですが、それがちょっとネガティブな方向に出てしまった。牧野選手に行かれてしまい、笹原選手にも並びかけられて……。いままでどおりのスタート方法であれば順位を落とさずに行けていたような気もしますし、そこは僕が新しいやり方に不慣れだった、技術が足りなかったというのも認めますし、次に向けては改善策が見えているかなと思います」
「2度目のSC明けはクリアラップになって、ペースとしては悪くなかったと思います。野尻選手がピットに入ったのを見て……早くピットに入ればその後フレッシュタイヤでペースがいいのも分かっていましたし、野尻選手に抜かれるかも、と思ったので、自分のなかでは少し早めにピットに入ったのですが、今回はそれが裏目だったと思います」
「野尻選手がOTSを先に使うのをやめ、自分はあの一周に懸けていて丸々使い切ったんですが、追いつききれなくて。映像では結構近いように見えたかもしれませんが、実際は結構厳しい距離感でしたね」
■小林可夢偉&坪井翔の接触と、悩める山本尚貴
■小林可夢偉(KCMG) 決勝リタイア
14番手スタートの可夢偉は、5周目の2コーナー、順位争いのなかで坪井翔と接触。ガードレールにクラッシュして、レースを終えてしまった。
「坪井のフロントウイングが僕のリヤタイヤに接触し、僕のタイヤが切れて、コントロール不能になってそのまま壁に行きました」
「たぶん、坪井はOTSを使ったんでしょう。僕はまだコーナーを出ていなくて、さすがにそこまで近いところにおらんやろなとは思いながら、一応気持ち(スペースを)空けていたんです。坪井は僕が気づいていると思っているけど、僕もそんなに簡単に『どうぞ』とはやらないじゃないですか。そしたら坪井は自分がちょっとダートに入って余計に引けなくなったのか、ポンと来て(当たってしまった)」
可夢偉自身、マシンへの感触は「良くなっている面もあるけど、もうちょっと行かないとまずいというのが正直なところ」だという。
「ウインドウがちょっと狭すぎて、合わせるのが結構大変ですね。あとはレースが、いまいち良くないです」
■坪井翔(P.MU/CERUMO・INGING) 決勝13位
13番手グリッドからスタートした坪井は、前日の流れの悪さをひきずる決勝レースとなってしまった。
「本当に流れが悪い週末になってしまいました。フリー走行もロングランの確認ができず、ウォームアップでわずかに確認できアジャストしましたが、レースを走り出してみたら、やはりもう少しアジャストしたいところはありました」
「とはいえペースはそこまで悪いわけではなく、なんとかポイントを獲ろうとオーバーテイクを仕掛けましたが、2コーナーで小林可夢偉選手と接触してしまって。結果的にうしろにいた立場ですし、ペナルティももらってしまいました。本当にもったいなかったです」
「タイヤ交換後のペースはすごく良かったですし、何もなければポイントは獲れていたかもしれません。予選からこの流れが始まってしまったので、直さなければいけません」
ちなみに、坪井は予選日が27歳の誕生日。
「誕生日に絡むレースはだいたい良くないので、今回も意識しないようにしていたのですが……」
■山本尚貴(TCS NAKAJIMA RACING) 決勝14位
20番手からスタートした山本は、1周目の3コーナーでアクシデントに見舞われる。
「アウト側から結構まくってくる選手がいて、自分はスペースのあったイン側に位置していたのですが、外から別の選手に被せられたジュリアーノ(・アレジ)選手がイン側に寄ってきたところに僕が止まりきれず、ウイングを踏まれる形で当たってしまいました」
これにより山本は、セーフティカー中にピットインしフロントウイングを交換することとなった。
今回も予選最後列となかなか上位浮上の機会をつかむことができない山本は、何をやってもいい反応を示さない、マシンの“感度”に苦闘しているという。現在の状況と苦しい胸の内を、次のように吐露した。
「クルマの状況としては去年からずっとアンダーステアが直らなくて、それを回避しようと手を変え品を変え、いろいろやってはいるのですが状況がなかなか好転せず……。今回も良かれと思って持ち込んだセットが、正直外してしまっていたと思います」
「その状態からでも、これまでの経験を活かしていろいろセッティングを振って、方向性を見定めてやっていく、というのがセオリーだと思うのですが、そのセオリーどおりに組み立てたつもりでも(マシンに)感度がなく、何をやっても反応しなくて……。悪くなることもあるのですが、良くなることもなくて、かなり厳しい厳しい週末になってしまいました」
「正直、セッティングはこの2年でやり尽くしているとは思うんです。そう言ってしまうと、もう残されているのはドライバーということになってしまいます。自分でも『また次、頑張ります』と言えるチャンスがどんどん減っているのは感じていますし、タイトルを獲っているからといってこの先も乗れる(シートがある)ような甘い世界でないことも分かってはいるものの、ただ普通に走って周回遅れになってしまったのは、人生で初めてなので……ちょっとキツいです。もちろん、チームのみんなが一番キツいのですが、僕も『こんなはずじゃないのにな』という思いは持っているので……悔しいです」