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 アウトドローモ・ヴェロチッタで5月14~15日に開催されたSCBストックカー・ブラジル“プロ・シリーズ”第4戦は、TOYOTA GAZOO Racingブラジル陣営が躍進。リカルド・ゾンタ(RCMモータースポーツ/トヨタ・カローラ)が予選最前列獲得からポール・トゥ・ウインを飾ると、隣国アルゼンチンから“越境参戦”を開始して2年目のマティアス・ロッシ(A.マティス・フォーゲル/トヨタ・カローラ)が、レース2で待望のシリーズ初優勝。今季は本国でのさらなるタイトル獲得の可能性を捨て、SCBでの活動に集中する選択が早くも結実する形となった。

 第3戦でシリーズ史上初となる“エアポート・レース”を成功裏に終えたSCBは、サンパウロ近郊に位置するお馴染みの常設トラックでの1戦を迎えたが、そのパドックにはかつてF1を取り仕切ったバーニー・エクレストンが姿を見せた。

 ブラジル出身でFIA国際自動車連盟の要職を務める妻のファビアナとともにゲストとして招かれたバーニーは、御年91歳とは思えぬエネルギッシュさでピットボックスを視察。ストックカーの技術的詳細のみならず、併催のフォーミュラ4ブラジルのパドックにも足を運び、参戦ドライバーやエンジニアに熱心なヒアリングを繰り返した。

「若いドライバーが大勢ここにいて、最新のフォーミュラで競える環境があるのは素晴らしい。ブラジルは再びF1の世界チャンピオンを輩出する必要があるからね。そしてストックカーで見たものすべてを愛している。世界中を旅するなかで、こうしたカテゴリーを訪問したのは初だが、サスペンション、コクピット、ボディワークすべてが興味深かった」と語った、元ブラバムF1のチームマネージャーでもあるバーニー。

 その行先にはつねに黒山の人だかりができ、フェリペ・マッサ(ルブラックス・ポディウム/シボレー・クルーズ)やネルソン・ピケJr.(モチュールTMGレーシング/トヨタ・カローラ)らとは、抱擁をかわして再会を喜んだ。

 するとそのピケJr.は週末最初のフリープラクティス1で今季初のトップタイムを刻み、続くFP2ではセザール・ラモス(イピランガ・レーシング/トヨタ・カローラ)が最速と、トヨタ・カローラがシボレー勢を圧倒。続く予選では、かつてBARやトヨタをドライブした元F1ドライバーのゾンタが見事なラップを刻み、ラモスを0.118秒差で抑えポールを確保した。

F4ブラジルに参戦中のアウレリア・ノーベルスにレクチャーを受けるエクレストン夫妻
F4ブラジルに参戦中のアウレリア・ノーベルスにレクチャーを受けるエクレストン夫妻
キャリア通算5度目のポールポジションを獲得したリカルド・ゾンタ(RCMモータースポーツ/トヨタ・カローラ)
キャリア通算5度目のポールポジションを獲得したリカルド・ゾンタ(RCMモータースポーツ/トヨタ・カローラ)
「最前列確保でターン1のイン側を抑えられたのが勝因」と振り返ったレース1勝者のゾンタ
「最前列確保でターン1のイン側を抑えられたのが勝因」と振り返ったレース1勝者のゾンタ

■レース2で歓喜の初優勝を挙げたロッシ。2位マウリシオには失格裁定

 迎えた日曜レース1でも最前列スタートの優位性を活かしたゾンタは、2014年シリーズチャンピオンのルーベンス・バリチェロ(フルタイム・スポーツ/トヨタ・カローラ)を従え、20周勝負を制して昨季に続く同地連覇を達成。SCBキャリア通算8勝目を手にした。

 そしてトップ10リバースグリッド採用のレース2では、前戦10位入賞のブルーノ・バプティスタ(RCMモータースポーツ/トヨタ・カローラ)と、このSCBで“グリッド上唯一の外国人”であるロッシがフロントロウから発進。すると義務ピットのルーティン作業でA.マティス・フォーゲルのクルーが鮮やかな手際を見せ、隣国スーパーTC2000で通算5度のチャンピオン獲得経験を持つ38歳のアルゼンチン人が首位浮上に成功する。

 後半スティントは背後にシリーズ3冠の強者、リカルド・マウリシオ(ユーロファーマRC/シボレー・クルーズ)を従え再三のプレッシャーにさらされたものの、18周のチェッカーまでしのぎ切り、シリーズ史上初のアルゼンチン出身ドライバーによる歓喜の初優勝となった。

「ブラジルに来てついにストックカーで勝てたなんて、今でも信じられない気分だ! レース1を終えて以降、チームが施してくれた作業のすべてに感謝したいし、この勝利は彼らのおかげだ」と、喜びを語ったロッシ。

「ここではチームとドライバーのレベルが劇的に高い水準にあり、非常に難しいカテゴリーだ。どの陣営も競争力があり、勝つためにはすべてを正しく行う必要がある。昨日の予選が悪かったから、今日は勝てるとは思っていなかったけれど、素晴らしいレース戦略で良い仕事をし、それがすべてうまくいったよ。改めてA.マティス・フォーゲルのメンバー全員に感謝したい」と語ったブエノスアイレス出身の38歳。

 さらにレース後車検では2位マウリシオの90号車が、右リヤに僚友ダニエル・セラ(ユーロファーマRC/シボレー・クルーズ)の29号車で登録されていたタイヤセットを装着していたことが発覚。スポーツコミッショナーは「1台につき週末に使用可能な16本のリストに含まれてない」として失格を言い渡し、代わってバリチェロが連続2位表彰台、3位にバプティスタが続く最終結果となり、シボレー勢には受難の週末となってしまった。

 この結果、4位、10位を獲得した王者ガブリエル・カサグランデ(A.マティス・フォーゲル/シボレー・クルーズ)が1点差で再びの選手権リーダーに返り咲き、2位に3連覇経験者のセラ、3位にバリチェロが並ぶオーダーに。続くSCB第5戦は同国最南端、パタゴニア地方のリオグランデ・ド・スル州にあるアウトドローモ・ヴェロパークで、7月2~3日の週末に争われる。

トップ10リバースグリッド採用のレース2では、前戦10位入賞のブルーノ・バプティスタ(RCMモータースポーツ/トヨタ・カローラ)が首位発進
トップ10リバースグリッド採用のレース2では、前戦10位入賞のブルーノ・バプティスタ(RCMモータースポーツ/トヨタ・カローラ)が首位発進
今季からチャンピオンチームにメンテナンスを移したマティアス・ロッシ(A.マティス・フォーゲル/トヨタ・カローラ)が、待望のシリーズ初優勝を挙げた
今季からチャンピオンチームにメンテナンスを移したマティアス・ロッシ(A.マティス・フォーゲル/トヨタ・カローラ)が、待望のシリーズ初優勝を挙げた
リカルド・マウリシオ(ユーロファーマRC/シボレー・クルーズ)は、レース2後の車検でまさかの失格。チームは控訴の構えだ
リカルド・マウリシオ(ユーロファーマRC/シボレー・クルーズ)は、レース2後の車検でまさかの失格。チームは控訴の構えだ