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 第106回インディアナポリス500マイルが今月末に開催される。

 プラクティスは5月17日火曜日にスタート。金曜日までプラクティス走行が毎日行われ、予選は土、日曜の2日間に渡って行われる。

 予選がインディ独特の、くじ引き順でひとりずつが4周連続のアタックをして争われる点は変わらないが、今年は土曜日の最速12人に翌日曜日のポールポジション争いへの参加資格が与えられる新方式になる。

 昨年までは土曜の最速9人が日曜に1回限りのアタックを行い、そこでのスピードでポールポジションから3列目までのスターティンググリッドを決めていたが、今年はチャンスが12人に拡大されるのだ。

 4周の走行でもラップタイムは極めて接戦になると思われるため、9人を12人に増やすのは良い変更とおもる。ただし、その彼らによる予選は二段階にされるので、12人から半分の6人に絞り込まれ、本当のポールポジション争いを行えるのはロード、ストリートでのレース同様に6人だけとされる。

 今年はインディ伝統のグリッド数=33と同じ台数のエントリーしかないため、予選落ちはない。なお、女性ドライバーの出場は、パレッタ・オートスポートがエントリーを断念したことで今年はゼロになった。

 彼女のチームはシモーナ・デ・シルベストロを起用してインディ500を戦う計画だったが、使用者シーの確保、テクニカル・パートナーの獲得がどちらも思うように進まなかったのだ。

 エントリーの中に優勝経験者はエリオ・カストロネベス(メイヤー・シャンク・レーシング)、スコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)、トニー・カナーン(チップ・ガナッシ・レーシング)、ファン・パブロ・モントーヤ(アロウ・マクラーレンSP)、シモン・パジェノー(メイヤー・シャンク・レーシング)、ウィル・パワー(チーム・ペンスキー)、アレクサンダー・ロッシ(アンドレッティ・オートスポート)、佐藤琢磨(デイル・コイン・レーシング・ウィズRWR)の8人がいる。

 ルーキーはデブリン・デフランチェスコ(アンドレッティ・スタインブレナー・オートスポート)、ロマン・グロージャン(アンドレッティ・オートスポート)、カラム・アイロット(フンコス・ホーリンガー・レーシング)、ジミー・ジョンソン(チップ・ガナッシ・レーシング)、カイル・カークウッド(AJ・フォイト・エンタープライゼス)、クリスチャン・ルンガー(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)、デイビッド・マルーカス(デイル・コイン・レーシング・ウィズHMD)の6人。

 アメリカ人ドライバーは13人で、アメリカ国外からのエントリーは20人。その出身国はブラジル、カナダ、ニュージーランド、スウェーデン、フランス、イギリス、デンマーク、オーストラリア、コロンビア、メキシコ、スペイン、日本、オランダの11カ国もある。

 予選は非常に重要だ。前日からターボのブースト圧が上げられ、決勝とは異なるパフォーマンスを発揮するマシンで戦われることとなる予選だが、空力性能をできる限り高めようとダウンフォースを大きく削ぎ落としたセッティングとなり、パワーもアップしている。上位グリッドを獲得できるマシンは、それだけ完成度が高いということだ。

 トラフィックによる乱気流もあるレースで強みを発揮する。日曜にも予選を戦うことのできるファスト12に入ったドライバーの中にウイナーが含まれる可能性はかなり高いだろう。

 昨年のレースではエリオ・カストロネベス(メイヤー・シャンク・レーシング)が史上最多タイの4勝目を挙げた。AJ・フォイト、アル・アンサー、リック・メアーズに並んだのだ。

通算5勝目を目指す2021年のウイナー、エリオ・カストロネベス
通算5勝目を目指す2021年のウイナー、エリオ・カストロネベス

 今年、カストロネベスは前人未到の5勝目に挑む。それがなる可能性は十分にある。カストロネベスの連勝ならボルグワーナーからのボーナスが40万ドル以上ある。このボーナス、最も最近に手に入れたのがカストロネベスだ。彼は2000年、2001年に連勝している。

 琢磨の3勝目も十分可能性アリだ。彼自身がインディの戦い方を最も深く理解しているひとりである上に、デイル・コイン・レーシングのマシンはインディアナポリスでとても速い。

 20017年にはセバスチャン・ブルデーが予選センセーショナルなスピードをマーク。アタック中のクラッシュがなければダントツのポールポジションを獲得できていたはずだ。2020年にはルーキーのアレックス・パロウが予選7番手に食い込んだ。

 現在、インディ500での優勝争いを行えるドライバー・トップ5を挙げるとすれば、カストロネベス、琢磨、パジェノー、ロッシ、ディクソンだろう。第二グループにパワー、パロウ、パト・オワード、ジョセフ・ニューガーデン、エド・カーペンター、トニー・カナーン、コルトン・ハータあたりが入る。

 パジェノーも要注意ドライバーだ。彼とカストロネベス(=ふたりでインディ5勝)はシリーズ最強タッグとも考えられる。そんな彼らと技術提携し、陣営に迎え入れているのがアンドレッティ・オートスポート。

 その本家にはアレクサンダー・ロッシというインディで目覚ましい速さを見せるドライバーがいる。スポット参戦ではあるが、特に予選ではマルコ・アンドレッティも速いだろう。ハータがインディのレースでも戦闘力を発揮するかも興味深い。

アンドレッティ・オートスポートの若きエース、コルトン・ハータ
アンドレッティ・オートスポートの若きエース、コルトン・ハータ

 ハードウェアで言えば、開幕から4連勝を挙げたシボレーのパワフルさが気になる。彼らのエンジンは今シーズンに向けてどこまでのパワーアップを成し遂げているのだろうか?

 過去2年はハイブーストの予選でもレギュラーブーストの決勝でもホンダエンジンにパワーアドバンテージがあったのだが……。

 シボレー勢でのいちばんの注目株はパワー。次がオワードで、彼のチームメイトとしてスポット参戦するモントーヤもおもしろい存在。

2018年のウイナー、ウィル・パワー(チーム・ペンスキー)
2018年のウイナー、ウィル・パワー(チーム・ペンスキー)

 

昨年に続きアロウ・マクラーレンSPから参戦するファン・パブロ・モントーヤ
昨年に続きアロウ・マクラーレンSPから参戦するファン・パブロ・モントーヤ

 前回は実力が維持されているのか疑問に感ずるところもあったが……。彼には若いチームメイトふたりをセッティング面などでアシストする役割の方が起用の理由としては大きくあるのかもしれない。

 予選ではエド・カーペンター・レーシングも強そうだ。3台エントリーする、その全員が速いと見られる。

 3回PPを獲得しているオーナードライバーのエド・カーペンターはもちろんのこと、急成長中のリナス・ヴィーケイ、このところ着々とレべルアップをしているコナー・デイリーにも上位で戦う可能性が期待できる。彼らの決勝で勝てる力が実証されていないが、一気に爆発することも十分にあり得る。

インディ500で3度ポールポジションを獲得しているエド・カーペンター
インディ500で3度ポールポジションを獲得しているエド・カーペンター

 どのチーム、どのドライバーにとっても心配の種なのが、4日間しかないプラクティスが雨に襲われることだ。

 月曜日の時点での天気予は、木曜あたりに雨が降りそう……と出ている。その翌日の金曜日はハイブーストで予選に備えるしかない1日。予選終了後の月曜日に決勝向けのプラクティスが2時間用意されてはいるものの、そこは最終確認を行う場所なので、理想を言えば、火曜からの木曜までのプラクティスで決勝用のセッティングを完成に近づけ、予選用のセッティングもできる限り向上させる。そして、金曜に予選だけにフォーカスした走行を重ねたい。

 インディ500のプラクティスと予選では、アクシデントを避けることも優勝、もしくは上位フィニッシュに向けての必要条件だ。マシンはオフの間からクルーたちがコツコツ細部まで作り込んで来たものの。スペアカーへスイッチすれば戦闘力ダウンは避けられないのだ。

 世界最大のレースではスポット参戦も、専用カラーリングで登場するマシンも多い。

 女性ドライバーのタチアナ・カルデロンがロード/ストリートで乗っているAJフォイト・エンタープライゼスのカーナンバー11は、オーバルではJR・ヒルデブランドに委ねられる。長年のスポンサーであるABCサプライからの資金を得たマシンのインディ500専用カラーリングはとても良いデザインだ。

 チーム・ペンスキーのスコット・マクラフランは“イエロー・サブマリン”のニックネームを持つペンズオイルカラーでエントリーする。リナス・ヴィーケイのビットコイン・カーはドライバーの出身国オランダのナショナル・カラー+オレンジを纏っての登場。インディアナポリス・モータースピードウェイを駆け抜ける各マシンのカラーリングにも注目だ。

開幕戦で初優勝を遂げたスコット・マクラフラン
開幕戦で初優勝を遂げたスコット・マクラフラン

 

アレックス・パロウ(チップ・ガナッシ)
アレックス・パロウ(チップ・ガナッシ)

悲願のインディ500制覇に挑むマルコ・アンドレッティ
悲願のインディ500制覇に挑むマルコ・アンドレッティ