5月16日、ポルシェは新たな電動レーシングカーとして『ポルシェ718ケイマンGT4 eパフォーマンス』を発表した。市販レーシングカーとして多くのカスタマーに使用されている718ケイマンGT4クラブスポーツのシャシーを使用しつつ、完全な電気駆動を採用。サーキットで機能することを証明したテストカーとして開発された。
ポルシェは2021年、IAAモビリティで将来のカスタマーモータースポーツ向けのビジョンを示した『ミッションR』を発表し、革新的な電気駆動コンセプトと、モータースポーツでの可能性を示したが、この718ケイマンGT4 eパフォーマンスはそれを具現化するテストカーとして開発された。
シャシーは、実績あるカスタマーレーシングカーの718ケイマンGT4クラブスポーツを使用。14センチ全幅が広げられ、6,000ものパーツが新たに製作された。多くは天然素材のほか、再生可能素材も使用される。
このシャシーに電気モーターとバッテリーテクノロジーが組み合わされ、予選モードでは最大出力735kW(1,000馬力)以上を発揮する。
レースモードでは、450kW(612馬力)を30分間発揮することができる。現在も世界中で行われているポルシェカレラカップの30分間のレースを走りきれる時間で、ポルシェはラップタイムと最高速で、現行のタイプ992世代のポルシェ911 GT3カップと同等のパフォーマンスを実現したという。
「ミッションRでは、ポルシェが将来の持続可能なカスタマーモータースポーツをどう想定しているのかを示すことができた。この718ケイマンGT4 eパフォーマンスは、このビジョンがサーキットでどう機能するかを示している」と語ったのは、GTレーシング・ビークルプロジェクトマネージャーのマティアス・ショルツ。
車両はフロント、リヤアクスルに永久励起同期機(PESM)を搭載し、全輪駆動を実現。ポルシェが開発したeモーター、バッテリーパックの直接オイル冷却により、熱によって起こるディレーティングを消すとしている。
「オイルクーリングの統合が、車両のコンセプトに大きな影響を与えた」というのは、GT4 eパフォーマンスのプロジェクトマネージャーを務めるビヨン・フォルスター。
「空力と熱力学、高電圧、ボディワークのそれぞれのスペシャリストとともに、開発チームは熱ディレーティングがない、初めてバッテリーセルの可能性を最大限引き出すアーキテクチャを作成した。これにより、レーシングモードでの出力は30分間保たれることになる」
また、900ボルトの技術により、バッテリーの充電率は5パーセントから80パーセントまで15分を実現した。
この718ケイマンGT4 eパフォーマンスは、7企業のバックアップを受け『#race2zero』と題されたツアーを行い、世界中でパフォーマンスを披露する。皮切りとなるのは2022年6月23〜26日に開催されるグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードで、以降2台のテストカーがヨーロッパをまわり、2023年には北米、2024年にはアジア太平洋地域をまわる。プロジェクト全体のコンセプトに従い、車両の輸送は船、列車、トラックのみに絞られるという。