長年F1を取材しているベテランジャーナリスト、ルイス・バスコンセロス氏が、全20人のドライバーのグランプリウイークエンドの戦いを詳細にチェック、独自の視点でそれぞれを10段階で評価する。
2022年F1第5戦マイアミGPでは、シャルル・ルクレール(フェラーリ)がポールポジションを獲得し、レース序盤をリード。しかし優勝したのは3番グリッドスタートのマックス・フェルスタッペン(レッドブル)だった。マイアミGPでのそれぞれのドライバーたちの戦いぶりを、バスコンセロス氏が振り返る。
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■評価 9/10:マシンの力を最大限に引き出したフェルスタッペンとルクレール
マイアミGPでのスターは、優勝したマックス・フェルスタッペン (レッドブル:評価 9/10)とポールシッターのシャルル・ルクレール(フェラーリ:評価 9/10)だった。ふたりとも、それぞれのマシンが得意とする場面で、その力を最大限に引き出した。つまり、フェルスタッペンは決勝で、ルクレールは予選で強かった。
ふたりとも小さなミスをしたため、満点はつけられない。フェルスタッペンは予選最後のラップでミスを犯し、ルクレールは決勝日のグリップレベルを読み間違えたために、フェルスタッペンにイン側から抜かれ、それによって敗北を喫した。
■評価 8/10:運はなくともハイレベルの走りを見せたハミルトン
幸運の女神はなかなかルイス・ハミルトン(メルセデス:評価 8/10)の味方をしてくれない。ハミルトンは予選で驚くべき仕事をしたが、決勝ではターン1でフェルナンド・アロンソ(アルピーヌ)にヒットされ、レース終盤にはセーフティカーのタイミングによって、ジョージ・ラッセル(メルセデス)の後ろに落ちる羽目になった。
しかし、ハミルトンのドライビングは、彼らしいハイレベルのものだった。マシンがもっと信頼してプッシュできるものであれば、終盤、チームメイトを相手にもっと激しく戦うことができたのかもしれない。
小さなミスによって、バルテリ・ボッタス(アルファロメオ:評価 8/10)は、メルセデスの2台に前に行かれてしまった。だがラッセルが新品タイヤを履いていたことを考えれば、彼に抵抗するのは難しかったかもしれない。
予選で見事な走りをしたことから決勝で5番手を走っていたが、セーフティカー出動によってプランが崩れてしまった。
アレクサンダー・アルボン(ウイリアムズ:評価 8/10)には、今回も大いに感心させられた。レースにおいて、他の誰にも負けないレーステクニックを見せ、アグレッシブでありながら、コントロールされたレースをして、タイヤをうまく長持ちさせた。予選Q1でタイヤを適切なウインドウに入れられなかったことだけがマイナスで、それがなければ満点だった。予選が完璧でなかったことで、レースで苦労することになった。それでも、ウイリアムズで9位というのは立派な成績だ。
■評価 7/10:サインツはまたもや不必要なクラッシュ
チームメイトの活躍が目立つなか、カルロス・サインツ(フェラーリ:評価 7/10)とセルジオ・ペレス(レッドブル:評価 7/10)は週末を通して僚友のレベルにはおよばなかった。
サインツは再びFP2で不必要なミスを犯した。予選で見事なラップを走ってフェラーリ1-2に貢献し、決勝では新品タイヤを履いたペレスに対して粘り強くポジションを守り切ったことは高い評価に値する。だが、重要でない場面でプッシュして不必要なクラッシュをするべきではない。
ペレスはうまく調子を上げていくことができず、ポールポジション争いには全く絡めず。決勝ではセンサートラブルを抱えながら走らなければならなかった。セーフティカー出動によってフリーストップを得ることができたが、サインツに挑むなかで、オーバーテイクしようとしてターン1でオーバーシュート。それ以降、ペレスにチャンスは訪れなかった。
ジョージ・ラッセル(メルセデス:評価 7/10)はセーフティカー出動のタイミングはラッキーだったと認めている。それがなければ、最高でも7位どまりだっただろう。予選でうまく1周をまとめることができず、それが順位に響いた。チームメイトのハミルトンが、W13の本来の力を示している。
エステバン・オコン(アルピーヌ:評価 7/10)はFP3でクラッシュという痛いミスを犯し、難しい状況に陥ってしまった。予選で走れず、決勝を最後方からスタートしなければならなかったのだ。
しかし決勝ではハードタイヤでペースが良く、一貫性もあり、40周以上タイヤを持たせて走った。それが入賞につながったといえるだろう。
ランド・ノリス(マクラーレン:評価 7/10)とピエール・ガスリー(アルファタウリ:評価 7/10)は、入賞にふさわしい走りをしていたものの、他のドライバーのミスによってそのチャンスを奪われた。
ノリスは今回も余裕でダニエル・リカルド(マクラーレン)より速かった。決勝では8位を獲得する見通しだったが、ピットに戻る途中だったガスリーとクラッシュしてリタイアした。
ガスリーは、FP3では角田裕毅(アルファタウリ)よりタイムが遅かったが、予選Q3で力を発揮し、決勝でも良い走りを見せた。しかしターン1でアロンソにヒットされたことでマシンにダメージを負い、ノリスとの接触の後、リタイアした。
■評価 6/10:接触を繰り返したアロンソ
今回のフェルナンド・アロンソ(アルピーヌ:評価 6/10)は、彼らしいパフォーマンスを発揮できず、予選で苦労した後に、決勝では最初にハミルトン、後にガスリーに接触した。ガスリーとのインシデントについてタイムペナルティを受けた後、シケインをショートカットしたことでもペナルティを科されたため、ポイント圏外へと降格された。スタートを決め、アウト側からターン1にアプローチして7番手まで上がった動きは見事だった。
ランス・ストロール(アストンマーティン:評価 6/10)は、ようやく良い週末を送ることができた。予選でセバスチャン・ベッテルに勝ち(とはいえ、ふたりともトラブルのためピットからのスタートを強いられたが)、決勝中、ハードタイヤで何度か大胆な動きを決めて、ポジションを上げた。アロンソの2つ目のペナルティで10位に繰り上がり、1ポイントを獲得。しかしメルボルンでウィービングによりペナルティを受けたにもかかわらず、再び警告を受けたのはいただけない。
親しい間柄のミック・シューマッハー(ハース:評価 6/10)とセバスチャン・ベッテル(アストンマーティン:評価 6/10)が、ふたりとも入賞圏内を走りながら、残り3周のところで接触し、ポイントを逃した。
シューマッハーは週末のほとんどでチームメイトのケビン・マグヌッセン(ハース)より優れており、決勝では自分のポジションをうまく守って走り、ハードでありながらフェアに戦う力があることを示していた。9番手を走りながらクラッシュでポジションを落としたのは残念だった。
ベッテルは、予選で痛いミスを犯した後、トラブルでピットスタートになったものの、うまく挽回し、ストロールのすぐ後ろを走行。ハードタイヤをうまく管理して、ロングスティントを走った。
ミディアムタイヤではストロールより速く、シューマッハーとの接触がなければ、ポイントを獲得できたかもしれない。
■評価 5/10:角田裕毅は予選で良い戦いをしながら、不本意なレースに
角田裕毅(アルファタウリ:評価 5/10)は予選ではとても良い仕事をした。Q3では最後のランのアウトラップが思いどおりにいかず、ガスリーに敗れたが、それでも良い結果だったといえる。しかし決勝は厳しいものになった。グリップがなく、タイヤのデグラデーションが高かったことで、ポジションをどんどん落としていったのだ。懸命な走りで最終的には10位まで約3秒という結果だったが、満足できるレースではなかった。
周冠宇(アルファロメオ:評価 5/10)とケビン・マグヌッセン(ハース:評価 5/10)は、予選で苦しみ、Q1で敗退。周は決勝序盤にトラブルが発生してリタイアしなければならず、挽回のチャンスがなかった。マグヌッセンはたくさんのバトルをし、そのほとんどに敗れ、接触によってレース終了直前にリタイアすることになった。
■評価 4/10:チームメイトとの差が大きすぎるリカルド
ダニエル・リカルド(マクラーレン:評価 4/10)は今回もチームメイトのノリスに大きな差をつけられた。予選で0.7秒差というのは大きすぎる。決勝では何度か彼らしいバトルを見せたものの、大きく順位を上げることなく、ポイント圏外でレースを終えた。
ニコラス・ラティフィ(ウイリアムズ:評価 4/10)はレースの大部分を最後方で過ごした。レースでは今回もチームメイトのアルボンに差をつけられたが、予選ではかなり近かったので、そこはよかったと思う。
■全ドライバー評価/F1第5戦マイアミGP(10段階)
評価 9/10
マックス・フェルスタッペン:予選3番手/決勝1位
シャルル・ルクレール:予選1番手/決勝2位
評価 8/10
ルイス・ハミルトン:予選6番手/決勝6位
バルテリ・ボッタス:予選5番手/決勝7位
アレクサンダー・アルボン:予選18番手/決勝9位
評価 7/10
セルジオ・ペレス:予選4番手/決勝4位
カルロス・サインツ:予選2番手/決勝3位
ジョージ・ラッセル:予選12番手/決勝5位
エステバン・オコン:予選出走せず/決勝8位
ランド・ノリス:予選8番手/決勝リタイア
ピエール・ガスリー:予選7番手/決勝リタイア
評価 6/10
フェルナンド・アロンソ:予選11番手/決勝11位
ランス・ストロール:予選10番手/決勝10位
ミック・シューマッハー:予選15番手/決勝15位
セバスチャン・ベッテル:予選13番手/決勝17位(DNF)
評価 5/10
角田裕毅:予選9番手/決勝12位
ケビン・マグヌッセン:予選16番手/決勝16位(DNF)
周冠宇:予選17番手/決勝リタイア
評価 4/10
ダニエル・リカルド:予選14番手/決勝13位
ニコラス・ラティフィ:予選19番手/決勝14位