南米発の「世界最速FFツーリングカー選手権」を称するアルゼンチンのスーパーTC2000(STC2000)第2戦が4月9〜10日に開催され、開幕戦で予選最速をマークしながら、本戦のレースでは2ヒートともに星を落としていたシボレーYPFチームの王者アグスティン・カナピノ(シボレーYPFクルーズ)が、戦績に応じて搭載されるウエイトに苦しむライバル陣営を尻目に快走。土曜のスプリント、日曜のファイナルで連勝を飾りキャリア通算27勝目を手にしている。
今季開幕前にアルゼンチン国内でのシリーズ分裂により、これまで並存していた『TC2000』と和解合意に達し、併催イベントとして実施された第2戦は、STC2000としては実に15年ぶりとなるブエノスアイレス州バイアブランカに位置するエセキエル・クリソルで開催された。
この2022年に向け改められた競技規則により、開幕戦の土曜に勝利を挙げたTOYOTA GAZOO Racing YPFインフォニアのジュリアン・サンテロ(トヨタ・カローラSTC2000)は50kg、同じく日曜ファイナルを制した新生アクシオン・エナジー・スポーツSTC2000として参戦する2019年王者リオネル・ペーニャ(ルノー・フルーエンスGT)には60kgのウエイトが搭載されたが、公式プラクティスが雨混じりとなったことから「重さの七難」を隠した“ピンク・ルノー”が速さを披露。そのままペーニャが予選ポールポジションをさらって見せた。
しかし土曜現地午後17時30分に迎えた12ラップ・スプリントは、午前の天候とは一転。ドライに転じたトラックはグリッド上の競争力をまったく一変させる効果をもたらし、後方からスタートを切った“kgなし”シボレーが猛追を見せる。
レース中盤には早くも5番手争いに加わったディフェンディングチャンピオンは、後退してきたポールシッターらを次々に仕留めると、50kg搭載のサンテロを出し抜き3番手に浮上。続くターン1で同25kgを積むプーマ・エナジー・ホンダ・レーシングのファビアン・シャナントゥオーニ(ホンダ・シビックSTC2000)を仕留めると、5周目から首位を守ってきたフランコ・ビビアン(FDCモータースポーツ/シトロエンC4ラウンジ)を残り2周の同コーナーでオーバーテイクし、失意の開幕戦を挽回する週末最初の勝利を飾って見せた。
■シボレーが1-2も「地に足をつけておく必要がある」とカナピノ
明けた日曜午前の“フルタンクテスト”ではカナピノの僚友を務めるベルナルド・ラヴァーが最速となり、シボレーYPFクルーズのレースペースを確認すると、そのまま40分+1ラップの決勝がスタート。
ここでも速さを見せたのは6番グリッド発進だった王者カナピノで、序盤から“プッシュ・トゥ・パス”も活用して首位のペーニャ、2番手ラヴァー、そしてTGRカローラのサンテロにみるみる迫っていく。
残り20分を切ったところでチームメイトの背後まで到達したチャンピオンは、すぐさまシボレー同士で前後を入れ替えると、その4分後のストレートエンドでアクシオン・エナジーのルノー攻略に成功。首位浮上以降も後続を引き離していくカナピノに僚友のラヴァーも追随し、王者シボレーYPFチームが32周のレースを制圧して1-2フィニッシュ。
3位にTGRの新エース、サンテロが入り新たな選手権リーダーの座に立ち、4位ペーニャ、5位ホルヘ・バリオ(トヨタ・カローラSTC2000)と、この第2戦もシボレー、トヨタ、ルノーの三つ巴を象徴するリザルトとなった。
「週末の状況がドライに転じて以降、タイヤとブレーキに非常に厳しいショートサーキットだから、とても落ち着いて走ったよ。各ラップでマージンを待って、クルマのケアに集中していたんだ」と振り返った“タイタン”こと2冠王者のカナピノ。
「それでも前を行くクルマを次々にパスすることができた。終盤はラヴァーがとても良いリズムで僕の背後に迫ったけど、チームは不必要な戦いをしないことに決めた。それはとても賢明な判断だったと思う。勝利を譲ってくれた彼には感謝したい」と続けたカナピノ。
これでランキングでも3位に浮上したディフェンディングチャンピオンだが「今週末は非常に優れたシボレー・クルーズで違いを生み出すことができた。成功を収めた2021年を経て、今回のレースでも1-2を決める強さを取り戻せたが、まだシーズンは始まったばかり。地に足をつけておく必要があるね」と一言。続く第3戦はまだ開催地が未定ながら、4月29日から5月1日の週末に開催予定となっている。