インディアナポリス・モータースピードウェイのロードコースで開催されたNTTインディカー・シリーズ第5戦GMRグランプリ。14日に行われた決勝レースは、コルトン・ハータ(アンドレッティ・オートスポート)が今季初勝利を飾った。
13番手スタートからレースに挑んだ佐藤琢磨(デイル・コイン・レーシング・ウィズ・リック・ウェア・レーシング)は、7位フィニッシュとなった。
2022年NTTインディカーシリーズは早くも5戦目を迎えた。今年で106回目の開催となるインディアナポリス500マイルを前に、同じインディアナポリスモータースピードウェイだが、そのインフィールドとバンクを利用した全長2.4マイルのロードコースを使って5月14日の土曜日にGMRグランプリが行われた。
金曜にプラクティス2回と予選、土曜にファイナルプラクティスと決勝がスケジュールされた2日間のイベントは、決勝日の午前中に行われたプラクティスまでが暑さの中での完全ドライコンディションだったというのに、決勝レースだけは雨に見舞われた。
予選でキャリア64回目のポールポジションを獲得したウィル・パワー(チーム・ペンスキー)をはじめ、大半のドライバーがドライでのレースを望んでいた。しかし、非情にも雨雲は予報よりずっと早くインディアナポリスに到来。レースのスタートを前に路面は完全なウエットコンディションとなった。
ウエットレースが宣言され、レースは予定していた85周を走り切るか、スタートから2時間が経過した時点でチェッカーフラッグの振られるルールで行われることとなる。
スタートの時点で、路面が乾いていくのは時間の問題だった。そこでコルトン・ハータ(アンドレッティ・オートスポート・ウィズ・カーブ・アガジェニアン)と佐藤琢磨(デイル・コイン・レーシング・ウィズRWR)は、僅か2周でレッドタイヤにスイッチ。ライバル勢もこの直後の2周でピットインし、レッドタイヤでのバトルが始まった。
グリップしない路面でのマシンコントロールと、2周でウエットタイヤを捨てる作戦が当たったことで、14番手スタートだったハータがトップに立った。この先、路面はドライコンディションに変わったが、ハータは変わりない速さを維持していく。
レースが進む中で雨が再び降り始め、2時間ルールが適用される状況になった。終盤戦はウエットコンディションでレインタイヤ装着での戦いになるものと見られた。
ところが、トップだったハータがレッドタイヤを選択すると、彼に続いてピットに向かったライバル勢も全員が同じタイヤ選択を行った。しかし、彼らは自分たちの判断が間違っていたことを認め、2周してウエットタイヤを装着するためにピットに向かった。
スコット・マクラフラン(チーム・ペンスキー)、パト・オワード(アロウ・マクラーレンSP)、ロマン・グロージャン(アンドレッティ・オートスポート)の3人はここでステイアウト。レッドタイヤのままゴールを目指す作戦を選んだ。
ウエットかドライか……。正解はウエットだった。雨の勢いが弱まることはなく、マクラフラン、オワードはイエロー中のスピンで順位を下げた。グロジャンは17位、オワードは19位、マクラフランは20位でのゴールとなった。
グリップの低い難コンディションでハータは驚くべきマシンコントロール能力を発揮。ミスはドライタイヤに換えた直後のオワードとの戦いで陥った激しいサイドウェイのみ。
今シーズン初、キャリア7勝目が記録された。2位は20番手スタートだったシモン・パジェノー(メイヤー・シャンク・レーシング)で、3位はポールポジションからスターしたパワーだった。開幕から5戦目にしてホンダはようやくシーズン初勝利をワン・ツーフィニッシュでマークした。
「これまでのレースキャリアで最も難しいレースだった。ウエットからドライに変わり、またウエットへとコンディションが変化した。それでもファンの皆さんはゴールまで私たちのバトルを見守り続けてくれた。地元の人たちは、このような天候に慣れているところもあるのでしょうが、最後まで応援してくれた皆さん、“本当にありがとう!”」とハータは表彰台からファンに語りかけた。
4位はマーカス・エリクソン(チップ・ガナッシ)、5位はコナー・デイリー(エド・カーペンター・レーシング)、6位はフェリックス・ローゼンクヴィスト(アロウ・マクラーレンSP)。デイリーは序盤にピットからの燃費セーブ司令でポジションを大きく落としたが、粘り強く走り続けて今シーズン初のトップ5位入り。ローゼンクヴィストはスピンしたチームメイトとぶつかってエンジンストールするなどのトラブルが降りかかったが、それらを跳ね除けて6位フィニッシュ。
そして佐藤琢磨が7位でのゴールを果たした。独自の判断だっという2周目のピットストップで一気に前方へ進出し、レッドタイヤでのラップタイムが安定して速かったことと、最後のウエットタイヤ装着でのバトルでみせたファイト溢れる走りによってシングルフィニッシュを勝ち取った。
「ワイルドなレースでした。しかし、とても楽しいレースでもありました。順位が激しく上下した戦いにもなっていました。いちばん良い時は4番手を走りました。コルトン・ハータがトップで、その後ろにマクラーレンが2台、その次が私たちで、後続を離して行く展開になっていました」
「ところが終盤のリスタートで1台のマシンが目の前でスピンし、それを避けた私は濡れた芝生の上に飛び出し、ドライタイヤ装着だったためにスピンに陥りました。あれで今日のレースは終わったかにも思われました」
「最後尾近くまで後退し、そこまでとても奮闘してくれていたチームのクルーたちに申し訳ない気持ちになりました。その後、雨が私たちに力を貸してくれました。周回遅れからリードラップに復活し、集中力を発揮して仕事を着々とこなした結果、7位でのゴールを達成できました」
「本当にドラマチックなレースでした。私たち51号車のクルーは素晴らしい仕事をしてくれ、私をレースに送り返し続けてくれました。そのおかげで私はプッシュする走りを続け、上位のドライバーたちとのサイド・バイ・サイドのバトルを戦うことができました」
「今日は非常に良いパスもいくつか実現できました。あのスピンは非常に悔しいものでしたが、今日のレースで私たちはインディ500に向けた素晴らしい勢いを手に入れることができました」と琢磨は語った。