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 2022年、日本ではスーパーGT GT300クラスでTANAX GAINER GT-Rを、スーパー耐久ではraffiné日産メカニックチャレンジZを駆り参戦する富田竜一郎。今季はさらに、コロナ禍の2020年から参戦を続けているファナテックGTワールドチャレンジ・ヨーロッパ(GTWC)のエンデュランスカップにもアウディR8 LMS GT3で参戦することになった。シーズン開幕となった3月30日〜4月3日のイモラで今季のヨーロッパ挑戦への展望と目標を聞いた。

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──今季はスーパーGTとスーパー耐久に加え、GTWCと非常に忙しいシーズンになりますね。
富田竜一郎(以下RT):
この春から新型コロナウイルス禍にともなう渡航規制も緩和されて、ずいぶんとヨーロッパとの行き来がしやすくなったので、日本のレースと行き来しながら両立して活動できるかなと思ったので、日本国内での活動に加え、ヨーロッパでのレースも継続をすることを決めました。

──昨年はGTWCのスプリントとエンデュランスの両カップに参戦し、その中でもメインイベントとなるスパ24時間では、『今回が最初で最後』という強い思いを持って挑まれていました。そんなシーズンを経て、また今季も再びGTWCに出てみようと思われた経緯は?
RT:
昨年は少し消化不良な気持ちで終わったところもあったので、1月までは今季GTWCに出場することは無理だと思っていましたし、気分的にもあまり乗り気ではありませんでした。

 ただありがたいことに『トミタとまた一緒に仕事がしたい』とチーム代表から連絡があったんです。予算面でも限りがあり、その中でどのようなパッケージで今シーズンを戦えるのか……とチームと話し合いをしている最中に、僕のFIAドライバーカテゴライズがシルバーからゴールドへと変わるという通知が入りました。さまざまな方法でシルバーに残るという手を尽くしたのですが、それが叶わずシルバーカップへの継続参戦は諦めざるを得ない状況となり、どの方向でGTWCへ参戦をするのか、なかなか決まらないままスーパーGTへのフル参戦が先に決定していました。

 シルバーカップがダメだとなるとプロクラスにしか出られないのだろうか……という時に、ちょうどSROが『ゴールドカップ』を新設することを発表し、今季のチームメイトであるフランス人のロビン兄弟(アーノルド・ロビン&マキシム・ロビン)がWRTから参戦する話が上がったので、チーム代表からロビン兄弟に『アウディのファクトリードライバーと組むよりもトミタを推薦したい』と言ってくれたので、僕もそのパッケージに了承して今季のWRTからの参戦が決定しました。

富田竜一郎がドライブするWRTの33号車アウディR8 LMS
富田竜一郎がドライブするWRTの33号車アウディR8 LMS

──GTWCに新設され、今季参戦するゴールドカップはどのようなクラスなのでしょうか?
RT:
今季GTWCに参戦を決めた際には、ゴールドカップのことは実はあまりよく理解できていませんでした。3人ひと組のドライバーの中で、ブロンズ、シルバーとゴールドがひとりずついなければいけないというクラスで、いまのFIAのドライバーカテゴライズの人数差をバランスよく調整するクラスです。今までのプロ-アマよりも現実的でちょうど良いのかな? と感じています。

 これまでスーパーGTでもジェントルマンドライバーと組んで出ていましたし、昨年のGTWCではシルバーカテゴリーのドライバー2名と組んでの参戦でした。今年のスーパーGTも若手と組みますし、そろそろ自分の立場もそのように変化してきたのかな……という実感もあります。

 今季のGTWCでは総合トップを狙える状況ではないのですが、レースを継続していくということに重点を置いてみるのも必要ではないかと思ったので、今年新設されたばかりのゴールドカップへ参戦を決めました。

──GTWCではチームメイトを引っ張る役割になりそうですが、今後は後進の指導にも興味をお持ちですか?
RT:
僕はメーカー所属のドライバーではありませんし、それはまったく考えていません。僕のようにメーカー所属ではないプライベートのドライバーが後進の指導という立場はおこがましいのかな、と思います。いっしょに組んだ若手やジェントルマンには良いドライバーになって欲しいと強く願っているので、僕が経験したことを少しでもお伝えできれば嬉しいという思いです。将来的に日本にしっかり腰を落ち着けて活動をするようなときが来ても、スクールを作ったり等の構想は持っていません。

 今まで“ヨーロッパで活動するジェントルマンではない日本人プライベーター”というドライバーはどなたもいらっしゃらなかったと思うので、そのような道をいまは僕が継続していかなければ、いつか後に続くドライバーたちの道しるべにならないのではないかと考えています。でもまだ『ヨーロッパのGTへ挑戦したいんです。話を聞かせてください!』というドライバーがひとりも現れないんですけどね(苦笑)。

 実際僕も参戦させていただいているスーパーGT等、日本のレースもとても素晴らしいシリーズで、それは間違いありません。しかしレースキャリアを積むなかで、もう少し広い目線でレースを考えて欲しいな、という気持ちがあって、今後若いドライバーが『そういえばあの人がこんなことをしていたな、僕もやってみようかな』という選択肢のひとつになってくれればいいなと願っています。

──昨シーズンは、GTWCのスプリントとエンデュランスの両カップに参戦されていましたが、それに関しては反響がありましたか?
RT:
どちらかというとヨーロッパのレースに参戦を開始した2020年に、アウディワークスドライバーのケルビン・ファン・デル・リンデと組んで出たスプリントの方が反響は大きかったですね。

 反響という意味では、一昨年はチームとして、昨年は僕自身への反響が大きかったと感じます。昨年はスプリントとエンデュランスの両方に参戦していたのですが、エンデュランスをもう少し良い結果で終えられたら良かったと思います。

 昨年はヨーロッパを軸に活動をしていましたが、スーパーGTにスポット参戦をしていた際の予選の時の方が反響は大きかったと感じています。ちゃんと観ていてくださる方からは、きちんとした反響をいただけるのが実感できて嬉しいですね。

富田竜一郎がドライブするWRTの33号車アウディR8 LMS
富田竜一郎がドライブするWRTの33号車アウディR8 LMS

──富田選手のヨーロッパでの活動を応援してくださるファンの方も日本には多いのでは?
RT:
スーパーGTやスーパー耐久等の日本で開催されるレースにご興味をお持ちの方と、欧州レースを観てくださるファンとでは、両者の興味の対象は別なのかな……と感じています。日本のレースもヨーロッパのレースも広く観戦してもらえるようになると良いなと願っています。

──昨年はコロナ禍で渡航制限があるなかで、スプリントと耐久の両方参戦してみて、必ずしもご自身が望む成績ではなかったレースもあったと思いますが、今年はそれらの経験も踏まえてどんな年にしたいとお思いですか?
RT:今年はゴールドというカテゴライズの立場もあるので、さらに気を引き締めて頑張らなければならないと思います。そして今年のWRTは5台体制で、GTWCエンデュランスカップに参戦するので、その中でしっかりとポテンシャルを見せていかないと埋もれてしまい、チーム内でのプライオリティも下がるので、それを踏まえてしっかりと結果を出せるようにしたいと思います。

 特に予選でどれだけ前のポジションを獲れるようにするのか、そしてゴールドカップでチャンピオンシップを獲得することは最低限のマストだと思っていますので、それを実現できるようにしたいですね。僕のマシンの担当は昨年と違う新しいエンジニアが就任し、若手のメカニックが多いので、これからチームと僕らが一緒に成長しなければならないですし、次のポールリカールやスパ24時間までには、戦えるチームとしてグリッドに立ちたいです。これが今季の主な課題であり目標です。

──今年もエンデュランスカップのドライバーラインアップはかなりの強豪ぞろいですね。
RT:
彼らのようなトップのプロドライバーとともに戦うなかで、僕がヨーロッパでプロとして認められるまであともう一歩のところにいると認識していて、その最後の一歩を踏めるように自分をしっかりもって頑張ります。正直、いつレースを辞めるか分かりません。もしもその日が訪れたときに、ここまでやり遂げられて良かったな、と思えるようなキャリアにしたいです。

──ところで、富田選手が所属するWRTには昨年MotoGPを引退し、GTWCにスイッチしたバレンティーノ・ロッシも所属していますが、ピットの中でチームメイトとして会話をされたりするのですか?
RT:
今季は一切事前テストなしのぶっつけ本番でイモラでの開幕戦を迎えたので、ロッシを含めてチームメイトと初対面したのもこの開幕戦でした。

 レースウイークの金曜日に彼と少し話しましたが、あまりにも偉大過ぎて僕なんかからは恐れ多くて話しかけられません(笑)。僕が小学生の時からロッシを応援していたし、レプソル・ホンダのMotoGPのバイクのミニチュアを持っていたくらい憧れだったので、その憧れのライダーが目の前、それも同じチームに所属していることに実感がわかないです。でももちろん、コースに出たら意識はまったくしていませんが。

 今回のGTWC開幕戦は彼の地元のイタリアということもあり、ロッシファンの多さや熱狂ぶりは想像をはるかに超えていて、本当にビックリしています。この状況は2018年のスーパーGTにジェンソン・バトンが来たときの比じゃない凄さですよ。WRTのチームとしてもロッシ効果で世間への露出がいつもにも増して多いので、その中で埋もれないように、しっかりとポテンシャルを示していけるように頑張りたいと思います。

2022年にGTワールドチャレンジ・ヨーロッパに参戦するWRTの5台のアウディR8 LMS
2022年にGTワールドチャレンジ・ヨーロッパに参戦するWRTの5台のアウディR8 LMS
2022年にGTワールドチャレンジ・ヨーロッパに参戦するWRTの5台15名のドライバーたち
2022年にGTワールドチャレンジ・ヨーロッパに参戦するWRTの5台15名のドライバーたち

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 開幕戦となったイモラでは、富田が乗り込む33号車アウディは52台出場中予選総合33番手となっていたが、日曜日の決勝レースを迎える直前にテクニカルトラブルが突如発生。アウディスポーツのサポートエンジニアとチームがフォーメーションラップ開始までに必死でトラブル解消に努めるも、残念ながらグリッドに並ぶことなく開幕戦を終えた。ただ富田は最後までWRTのピットでレースを見届け、次戦に向けてしっかりとチームとミーティングをこなした上で、スーパーGT第1戦岡山が待つ日本へと戻った。

2022年もGTワールドチャレンジ・ヨーロッパに挑戦する富田竜一郎
2022年もGTワールドチャレンジ・ヨーロッパに挑戦する富田竜一郎