2022年F1第7戦モナコGPで各チームが走らせたマシンを、F1i.comの技術分野を担当するニコラス・カルペンティエルが観察し、印象に残った点などについて解説。第1回「本来負けるはずがなかったフェラーリ。F1-75が持つ明らかな優位性」、第2回「全チームが注力したモナコ特有のステアリング設定と基本構造」に続く今回は、連発した燃料温度に関する問題について取り上げる。
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スペインGPで発生したレッドブルやアルファタウリのトラブルを受けて、FIAはモナコで燃料の許容温度の監視手順を変更した。
両チームに起きたことを、ここで簡単に振り返ってみよう。スペインGP決勝レース当日の日曜日、両チームのマシンはガレージにずっとこもりきりで、スターティンググリッドに並んだのはぎりぎりのタイミングだった。その理由は、タンク内の燃料温度が低すぎたからだった。アルファタウリのガレージでは、メカニックがエンジンをかけ、ドライヤーでタンク周辺のモノコック部分を必死で温めた。そのおかげでピエール・ガスリーは、ペナルティを受けることなくグリッドにつくことができた。
マックス・フェルスタッペンがピットレーン閉鎖の数秒前にレッドブルのガレージから出てきたのも、おそらく同じ理由と思われる(あるいはDRSの不具合対策も、同時に取り組んでいたかもしれない)。
燃料温度に関わるドタバタは、これが初めてではない。マイアミGPでは、グリッドスタート時に燃料が許容される温度でなかったため、アストンマーティンの2台はピットレーンからのスタートを余儀なくされている。
レギュレーションによれば、燃料の温度はレース開始2時間前にFIAから知らされる外気温より10℃以上低くしてはいけないことになっている。言い換えれば、レースが始まるまで燃料の温度が徐々に上がっていくことが分かっているため、各チームはどの程度冷やせばいいのかを把握しているということだ。
燃料を冷やすと体積が減り、燃焼が少し改善され、その結果パワーが向上するのである。FIAは不正を防ぐため、標準装備の流量計にセンサーを取り付け、20台のシングルシーターのタンク内の温度を監視している。
気温は小数点以下を四捨五入しており、これまでは開始2時間前にこの形式で報告されていた。バルセロナでは、グランプリの数時間前にFIAの表示で周囲温度が34℃になっていたため、各チームは燃料を24℃まで冷やすことができると計算した。ところが、スタートのちょうど2時間前、気温が35℃を示したため、FIAは燃料温度の上限を25℃に設定した。レッドブルのヘルムート・マルコも「気温が変わったことを見落としていた」と認めるように、一部のチームの準備に支障をきたすことになったのだった。
チームとFIAの話し合いの中で、このような事態を避けるための対策が浮上した。モナコ以降、発表される温度には、より正確さを期すため小数点までの表示が決まった。
さらに公式気温の発表についても、チーム側は2時間前ではなく、もっと早い発表を要望した。FIAからの回答は、今のところない。
一方で各チームは、タンクの断熱材を工夫し、タンク内の燃料の温度をコントロールしようとしている。マイアミ以来、メルセデスはタンクに発泡断熱材のようなものを巻いた。レッドブルもポリマーフォームを、マクラーレンやアストンマーティンなどはタンクを収容するモノコックの部分を金属膜で覆っている。