WEC世界耐久選手権第2戦、“スパ・ウェザー”に翻弄された6時間レースの中盤、LMP2クラスのチームWRT31号車オレカ07・ギブソンが、本来“格上”であるハイパーカークラスのトヨタやグリッケンハウスを従え、レース中盤に総合トップを走った。
このとき、31号車をドライブしていたロビン・フラインスは、背後のハイパーカークラスの車両がギャップを詰めて来なかったことについて「少し驚いた」と語っている。
レースで3回提示された赤旗のうちの1回目の際、チームがウエットタイヤへの交換を選択したことで、その後の本格的な雨でアドバンテージを得られたフラインス。後続がピットインしてウエットタイヤへと交換していくと、総合トップに躍り出た。
フラインスは競技再開後もこのリードを維持し、レース後半にコースが乾き始めるまで、ハイパーカー勢の前を走行し続けることに成功した。
トヨタGAZOO Racingのテクニカル・ディレクターであるパスカル・バセロンはレース後、ウエットコンディションにおけるLMP2マシンの優位性は理にかなっていると説明したが、フラインス自身はこれほど長く総合トップの座を維持できたことに、驚きを隠さなかった。
「ちょっと驚いたね」とフラインス。
「もちろん総合トップにいたから(雨のなかでも)視界は開けていたけど、それでも2〜3周もしたら彼ら(ハイパーカー勢)がトップに戻ってくるものと思っていたんだ」
「でも、彼らは近づいてこなかった。だから僕は差を広げていくことができたんだ」
「路面が乾いてくると、彼らと戦うチャンスはなかった。最終的には、やはり別のクラスだったね」
フラインスは“下剋上”優勝の可能性などはまったく考えておらず、むしろコンディションが良くなることを望んでいたことを認めている。
「ドライアップしていくのか、フルウエットなのか、そのあたりはとくに何も願ってはいなかったけど、コース上に多くの水がある状態は望んでいなかった。あまりにも安心できないコンディションだったからね。アクアプレーニングが起きて、危険な状況だった」
「だから、赤旗が出たことはとてもうれしかった。レースを続けるには、安全ではなかったからね」
■フィニッシュ目前でまさかの“もらい事故”
フラインスは最終スティントをレネ・ラストに託したが、ラストは終盤に苦戦を強いられる。
ラストはブレーキをロックさせレ・コンブで大きくはらみ、そこでは無傷で済んだものの、その後はアルティメット35号車オレカと激しくコンタクトした。35号車はブラッセルズ(ターン8)の出口でスピンし、コースの中央にマシンが止まったため、直後を走っていたラストは回避することができなかったのだ。
「2回のフルコースイエローの後、タイヤが冷えてしまったので、非常に恐ろしいスティントとなった。こういったコンディションのもとでは、基本的に冷えたブレーキと冷えたタイヤで、リスタートすることになる」とラスト。
「これはとてもトリッキーな状況だ。一度リヤをロックさせてしまい、ブレーキングでコントロールを失い、そのまま直進してしまった」
「そしてアルティメットが僕の前でスピンしてしまい、それを避けることができなかった。フルブレーキングしてタイヤをロックさせたが、左にも右にも行くことができず、彼にぶつかってしまった」
ラストはその後もマシンを走らせ、31号車をクラス優勝/総合3位に導くことができたが、この接触の影響がなかったわけではないと説明している。
「残念ながら、この接触でスプリッターとノーズが壊れてしまった」とラスト。
「その後、大きな振動とアンダーステアが発生した。ただ幸いにもレースは残り5分というところだったので、そのまま走り続け、ラッキーなことにレースに勝利することができたんだ」