WEC世界耐久選手権2022年第2戦スパ・フランコルシャン6時間レースは5月7日、決勝日を迎えた。現地時間13時(日本時間20時)のスタートを前に、トヨタGAZOO Racingのチーム代表兼7号車GR010ハイブリッドのドライバー、小林可夢偉と、8号車の平川亮が、リモート形式で日本メディアのインタビュー取材に応えた。
この日は現地時間午前9時30分からリモート取材が予定されていたが、サーキット周辺の大渋滞に巻き込まれた可夢偉と平川のパドック到着が遅れ、開始時間が10分ほど押すというハプニングから始まった。
「もうね、大人気。大渋滞ですよ」と駆けつけた可夢偉。ヨーロッパでは多くの観客がサーキットに戻ってきていることの証であり、「(次戦)ル・マンもすごいことになるんじゃないですかね」と可夢偉は予測する。
予選3&4番手に終わったトヨタだが、可夢偉は「前回のレース(セブリング)に比べると他チームとのギャップも少ないので、そういった意味では戦える位置なのかなと思っています」と決勝に向けポジティブな要素を口にした。
「今回は(アルピーヌの)BoPも多少変更があり、ギャップが小さくなったといことは、本来このBoP(というシステム)が目指すべきところにはこれているかなと思っているので、この中で自分たちがミスなくしっかりと、強いチーム作りというのを見せて、レースで勝てるように戦いたい」
予選では、ソフト系タイヤを履いたグリッケンハウス・レーシングに対し、トヨタはミディアムタイヤを選択した。
これについて可夢偉は、「単純に摩耗ですね。ダブルスティントをしないと戦略的には厳しいということで、一番摩耗が少ない、デグ(ラデーション)が少ないタイヤを選んだということです」と説明している。
気になるグリッケンハウス、アルピーヌとの差については、次のように決勝への見通しを語っている。
「グリッケンハウスについては、あまり長い周回のランをしてないんですよね。そこに関してはなんとも言えませんが、個人的な感想で言うと、結構ショートランをしっかり走れるように、とやっているように見えます」
「アルピーヌに関してはロングランをしているものの、正直ドライバーによって少し差がある感じで、僕らが速いタイムのときもあれば、ちょっと遅いときもあった。その点、僕らはレベルの高いドライバーがそろっているだけあって、ドライバーで差が出るということはない。そういう部分で、なんとかついていきたい」
「ただ、アルピーヌに関してはおそらくピットの回数が違うので、それがFCYのときにどう影響するか……というところになってくるんじゃないかと。ただ、変わったとしても1周くらいの違いだと思うので、そんなに致命的なピット回数の違いにはならないと思っています」
■改修されたオー・ルージュは「景色が違う」
このオフ、スパ・フランコルシャンでは改修工事が行われ、コースレイアウトこそ変わらないものの、ランオフエリアの拡大や路面の再舗装がされており、ドライバーたちはこれまでとの変化を口にしている。
なかでも大きな違いは、コースサイドのランオフエリアに関して、舗装からグラベル(砂利)へと変更されている箇所が数多くあること。
「グラベルが多くなったので、コース上に突然砂利が出てくるというか、飛び出したクルマがグラベルを持ってコースに戻ってきて、すごいスリッピーになるという状況がある」と可夢偉は言う。
これに関しては2016&2017年以来のスパでの走行となる平川も気にかけているところで、「もう、あちらこちらがグラベルになっていて、自分自身、早くコースに慣れなければいけないのですが、グラベルのプレッシャーは結構感じています」と言う。
「グラベルが結構深いので、ちょっと入ってしまっても出られなくなってしまいます。練習(プラクティス)では大丈夫でしたが、レースでは気をつけて行かないといけませんね」
2017年と比べても、再舗装されたオー・ルージュは「平らになっていて、進入左側も(ランオフエリア拡大で)開けている、そこの景色はすごく違いますね」と平川。
「走っていて一番違うのは、ターン8、ターン9のところで、前に自分が走っていたときは結構跳ねる感じだったんですけど、かなり平らになっていて走りやすいです」
■富士での予選アタックを視野に入れる平川
平川によれば午後のレースでは雨予報が出ているという。「スパの雨を走ったことがないので、自分自身としては、そこにどう対応できるかというのがキーになってくると思います」と、初めて対峙することになる“スパ・ウェザー”に、平川は注意を向けている。
平川の8号車は開幕から2戦連続でブレンドン・ハートレーがアタックを担当。「僕はまだ、予選ができるほどの経験は積めていないので、ブレンドンかセブ(セバスチャン・ブエミ)かどちらか、という話になっているんですが、今回に関しては事前のシミュレーターテストがブレンドンと僕だけで、セブが来れなかった。それもあって、流れ的にブレンドン(がアタック担当)となりました」と平川は説明するが、同時に「個人的には、富士の予選はやりたいなと思っています」とシーズン後半に向けた希望も語っている。
まずは難コンディションが予想されるスパの決勝で、“グラベルのプレッシャー”に負けず、堅実な走りができるかどうか。
「予選は4番手でしたが、レースでは雨を含めて、作戦とかチームワークとかでしっかりと狙っていけると思っているので、自分自身としては初めての世界選手権での優勝を目指しています」と、最高峰クラス参戦2戦目での初優勝を視野に、平川は6時間の決勝へ挑む。