2022年F1第4戦エミリア・ロマーニャGPで各チームが走らせたマシンを、F1i.comの技術分野を担当するニコラス・カルペンティエルが観察、印象に残った点などについて解説する。第1回「なぜレッドブルRB18は格段に速かったのか」、第2回「新パーツ導入&軽量化でも改善が見られなかったメルセデス」に続く第3回では、フェラーリのアップデートプランと、アルピーヌが入れた新フロアなどについて紹介する。
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■フェラーリはなぜ地元で、アップデートを導入しなかったのか?
イモラでのフェラーリは、他のチームとは異なり、改良パーツを持ち込まなかった。もちろん開発は続けているが、スプリントフォーマットの週末で、予選前に1回のフリー走行しか行われないイモラでは、性能評価がしっかりできないと判断したのだった。
フェラーリは基本仕様のF1-75で開幕戦バーレーンからから第3戦オーストラリアまでを戦い、その競争力を十分に証明することができた。そのことも、イモラであえてアップデートを入れる必要はないという決断の伏線になったと言える。
イモラでの惨敗は、主にタイヤの使い方の悪さによるものだった。とはいえ一瞬でも改良の手を緩めれば、すぐにライバルたちに遅れを取ってしまう。だが今週末のマイアミに、フェラーリはわずかなアップデートを持ち込むだけだ。本格的な新型パーツの導入は、次のスペインまで待たないといけない。
「マイアミはダウンフォースが少なく、ポーパシングの問題が今まで以上に出る恐れがある。それへの対処に専念すべきだ」と、マッティア・ビノット代表は主張した。
マイアミでのフェラーリは、最高速でレッドブルに対抗するため抵抗を減らした新しいリヤウイングと、ポーパシングを抑えるためのフロアを導入する予定だ。
■「風の壁」を補強したアルピーヌ
アルピーヌがイモラで改良を加えたのは、今季のF1マシンで最も重要な部分なパーツのひとつであるフロアだった。ただし期限までに間に合わず、装着されたのはフェルナンド・アロンソのマシンだけだった。
上の比較写真でわかるように、1つ目の切り欠きはより前方に、2つ目の切り欠きはかなり長くなっている(青矢印参照)。フロアに沿ってより強く安定した渦を発生させ、フロア下部に乱流が入り込むのを防ぐことを狙ったものだ。目に見えない「風の壁」を、人工的に作っているわけだ。
マシン前部では、フロア入り口の手前、アウターバッフルと呼ばれる空力パーツに、メルボルンに続いて形状変更を加えた。これはフラットなフロアの端に向かう空気の流れを決める付属パーツで、F1の空力がいかに互いに影響し、機能し合っているかの好例といえる。
さらにアルピーヌは、ビームウイングの形状にやや丸みを持たせた(下の写真参照)。2014年に禁止され、今年再登場したこの小さなダブルウイングは、リヤウイングの下に設置され、ディフューザーから上方に空気を吸い上げる役割を果たしている。
またアロンソ車には、ノーズとフロア間の整流効果を狙って、新型のスプリッターが装着されている(コクピット前方下部の赤矢印参照)。この空力パーツはこれまでアストンマーティン、フェラーリが備え、イモラ週末にはレッドブルにも導入された。