大波乱の富士。最後まで好位置につけたARTA NSX-GTが表彰台の頂上に
5月3日(火)~4日(水)、富士スピードウェイ(静岡県)で2022年度スーパーGTシリーズ第2戦が開催され、GT500クラスに5台の2022年型NSX-GT、GT300クラスに2台のNSX GT3が出走しました。今大会は通常よりも走行距離が長い450kmで争われ、決勝では2回の給油が義務づけられていたため、通常とは異なる戦略が求められていました。
3日(火)は、前日までの雨により朝のうちは路面にウエットパッチが残るコンディションでしたが、天候は回復していき、公式予選はドライコンディションで行われました。
Q1セッションには8号車 ARTA NSX-GT(福住仁嶺)、16号車 Red Bull MOTUL MUGEN NSX-GT(笹原右京)、17号車 Astemo NSX-GT(松下信治)、64号車 Modulo NSX-GT(大津弘樹)、100号車 STANLEY NSX-GT(牧野任祐)が出走。
8号車ARTA NSX-GT(福住)が3番手、100号車STANLEY NSX-GT(牧野)が6番手でQ1セッションを突破すると、Q2セッションでは、8号車ARTA NSX-GT(野尻智紀)がNSX-GT勢最上位の5番手、100号車STANLEY NSX-GT(山本尚貴)が7番手から決勝レースをスタートすることとなりました。なお、開幕戦のレース結果により8号車ARTA NSX-GTには2kg、100号車STANLEY NSX-GTには30kgのサクセスウエイトが課せられていました。
決勝日の富士スピードウェイは朝から晴天となり、14時30分、フォーメーションラップから長いレースのスタートが切られました。オープニングラップで8号車 ARTA NSX-GT(福住)はひとつポジションを落とし6番手、その背後の7番手に100号車STANLEY NSX-GT(山本)が続いてレースが始まりました。
37号車GRスープラ、36号車GRスープラ、3号車Zが一団となってトップ争いを始めると、その約3秒後方で100号車STANLEY NSX-GT(山本)が8号車 ARTA NSX-GT(福住)をかわして4番手に上がって、2台のNSX-GTが先頭集団を追いかける展開となりました。
27周目、100号車STANLEY NSX-GT(山本)がピットインすると、タイヤ交換と給油を行い牧野へドライバー交代をしました。一方、8号車ARTA NSX-GT(福住)は37周まで引っ張ってから1回目のピットインを行い、野尻へドライバーを交代して100号車STANLEY NSX-GT(牧野)の前でレースに復帰しました。
43周目、コース上でアクシデントが発生したためフルコースイエローが宣言され、その後セーフティカーが介入、結局49周目に赤旗が提示されてレースは仕切り直しとなりました。この時点で8号車ARTA NSX-GT(野尻)は5番手、100号車STANLEY NSX-GT(牧野)は7番手となっていました。
53周目にレースが再開されると、第1コーナーにトップで進入した36号車au TOM’S GR Supraと37号車KeePer TOM’S GR Supraが交錯して36号車がオーバーラン。これにより8号車ARTA NSX-GT(野尻)は4番手へ順位を上げて、そのまま上位3台に肉薄していきました。ところが58周を終えるホームストレートで、2番手を走っていた3号車CRAFTSPORTS MOTUL Zに乗る高星明誠が激しくクラッシュ、直後を走っていた8号車ARTA NSX-GT(野尻)は間一髪のところですり抜けましたが、レースは再び赤旗で中断されました。この時点で8号車ARTA NSX-GT(野尻)の順位は3番手へ繰り上がりました。
クラッシュのため破損したガードレールを修復した後、レースは18時10分にセーフティカー先導で再開されましたが、レースは日没制限時間により18時20分に終了。8号車ARTA NSX-GT(野尻)は3番手、100号車STANLEY NSX-GT(牧野)は7番手でチェッカーフラッグを受けました。
しかし、先頭にいた39号車 DENSO KOBELCO SARD GR Supraと2番手にいた37号車 KeePer TOM’S GR Supraがそれぞれ40秒加算のペナルティーを受けたため、最終結果では順位が繰り上がり、8号車ARTA NSX-GT(野尻)が優勝、100号車STANLEY NSX-GT(牧野)が5位という結果となりました。また、17号車Astemo NSX-GT(塚越)が9位、16号車Red Bull MOTUL MUGEN NSX-GT(大湯)が10位でレースを終え、それぞれ選手権ポイント(レース消化距離が75%未満だったため通常の半分のポイント)を獲得しました。64号車Modulo NSX-GTは、11位となりました。
佐伯昌浩
Honda R&D Co., Ltd. Honda GT Project Leader
「まず、高星選手に大きなケガがなかったことに安堵しています。本日のレースリザルトに対しては複雑な思いはありますが、粘り強くレース運びをした結果として優勝できたことはうれしく思います。テストを通してマシンの熟成を進めてきたチームの総合力がもたらした結果だと思います。また、我々の開発方向性に間違いがないことも確認できました。今シーズンに向けてアップデートした車両で、また新生HRCとしてスタートしたスーパーGTの2戦目で優勝できたことは自信に繋がります。まだ2022年シーズンは始まったばかりですし、今日のレースを通して得た反省点を踏まえて残りのシーズンに取り組んで参りますので、引き続き応援をよろしくお願いします」
野尻智紀
ARTA
「高星選手に深刻なことが起きなくて本当によかったと思います。たいへんなレースになってしまいましたが、遅くまでたくさんのお客様に応援していただいたことが心に響きました。ハーフポイントであるとはいえ、ポイントはポイントなので、このポイントが生きるように、次戦以降もがんばります。もっとマシンをよくしないといけないとは思いますが、今回は僕たちなりに進化したとは思っています。今日は、こういう形の優勝ということで終わりましたが、僕たちの複雑な気持ちから浮かぶ表情をお見せしてしまったかもしれません。次戦は僕と仁嶺とチームとファンのみなさん、全員で心から喜べるような優勝を勝ち取るため必死でがんばります」
福住仁嶺
ARTA
「今日最初のスティントを走らせてもらいました。チームが準備してくれたマシンは多くの面でよくなっていました。こういう形の優勝にはなってしまいましたが、シーズンを考えると1ポイントでも大きな意味があると思うので、大きな収穫だったと思っています。たくさんの方にサーキットまで足を運んでいただき、たくさんの応援をいただきました。ありがとうございます。次回はみなさんに満足していただけるレースをしたいと思っています」