トヨタGAZOO Racing(以下TGR)は、6月11日(土)から12日(日)にかけて開催される伝統の耐久レース、第90回ル・マン24時間レースで、チーム5連覇に挑む。
2019年以来、3年ぶりに6月開催へと戻るル・マン24時間レースは、WEC世界耐久選手権の2022年第3戦として行われる。TGRはル・マン24時間レースで2018年に初勝利を飾って以来、決勝レース中の最速ラップタイムや予選でのコースレコードといった記録を塗り替えながら無敗記録を続けており、昨年はGR010ハイブリッドで、ハイパーカー時代を迎えて初めての優勝を勝ち取った。
昨年のル・マンで初勝利を成し遂げた小林可夢偉/マイク・コンウェイ/ホセ・マリア・ロペスの3名が駆る7号車にとっては、防衛戦であり、連覇が目標だ。7号車は5月上旬に行われたWEC第2戦のスパ・フランコルシャン6時間レースで今季初勝利を挙げた、その勢いに乗ってフランスへと向かう。
一方、8号車のセバスチャン・ブエミはこれまでに3度、ブレンドン・ハートレーは2度、ル・マンで勝利を挙げており、2022年はこの2名に平川亮が加わる。平川は過去にLMP2クラスで2度ル・マンに出場しているが、トップカテゴリーを戦うのは今回が初となる。
ル・マンでは通常のレースの倍のポイントを獲得できるレースとなるため。TGRにとっては、アルピーヌ・エルフ・チームやグリッケンハウス・レーシングといったライバル勢に対し、マニュファクチャラーズ、ドライバーズの両ランキングで一気に上位へと浮上するチャンスともなる。
トヨタのル・マンにおける歴史は1985年の初参戦に遡る。今年のル・マンでは、この初参戦時の出場車両であるトヨタ初のグループCカー、トヨタトムス85CをTGR-E(ヨーロッパ)の副会長である中嶋一貴がドライブし、レース前のスターティンググリッドで行われる優勝トロフィー返還セレモニーに登場する。
このトヨタトムス85Cは37年前に一貴副会長の父である中嶋悟氏がドライバーの一員として出場し、12位でフィニッシュを果たした車両そのものとなる。
この輝かしいセレモニーの前に、チームは1週間に渡る徹底した準備に入る。ル・マン24時間レースの舞台となる1周13.626kmのサルト・サーキットは、公道と常設サーキットの一部を組み合わせた独特のコースであり、決勝1週間前の6月5日(日)には、シーズンの中で唯一サルト・サーキットのフルコースを走行できる公式テストが行われる。
テストデーでの走行を終えたチームは、すぐに車両を組み直して整備、再調整し、3日後の8日(水)には5時間の練習走行と1時間の予選セッションを迎える。そして、翌9日(木)も5時間の練習走行をこなした後、現地時間午後8時(日本時間翌午前3時)より、決勝レースのスターティンググリッドを決定する30分間の“ハイパーポール”セッションが行われ、TGRは6年連続のポールポジション獲得に挑む。
記念すべき第90回ル・マン24時間レースの決勝は、11日(土)の現地時間午後4時(日本時間午後11時)にスタートが切られ、全62台の車両と186人のドライバーが、耐久レース最大のイベントで激戦を繰り広げる。
TGRからル・マンへエントリーする6名のドライバーのコメントは、以下のとおり。
■可夢偉代表「同じようなトラブルは二度と起こらないと確信」
●小林可夢偉(チーム代表兼7号車 ドライバー)
ル・マン24時間レースはチームにとって最大の目標であり、この挑戦に向けて集中して準備を進めてきました。我々は過去4年連続で勝利を挙げてきましたが、決して容易な道のりではありませんでしたし、さまざまな問題にも立ち向かってきました」
「昨年のレースでもトラブルが発生しましたが、チームとドライバーの努力により迅速に解決策を見出し、7号車がついに初勝利を挙げることができました。マイク、ホセ、私と、7号車のチームクルーにとって、長年待ち焦がれてきた瞬間であり、本当に格別でした。また、8号車も2位で続き、1-2フィニッシュを飾れたのも最高でした」
「今季は厳しい戦いが続いており、前戦スパでの8号車は残念な結果に終わってしまいましたが、あのトラブルについては、エンジニアが詳細を調査しており、同じようなことは二度と起こらないと確信しています。ル・マンへの準備は万端であり、自信を持って現地に向かいます。ファンの皆様にとってもエキサイティングなレースになるでしょう」
●マイク・コンウェイ(7号車)
「昨年ル・マンで初勝利を飾った瞬間のことは絶対に忘れないだろう。可夢偉、ホセと僕はこの大レースへ向けてずっと努力を続けてきた。それだけに、表彰台の中央に初めて立ったときの感激は忘れられないし、一度味わったら、もう一度と願うものだ」
「今年のハイパーカークラスは非常に接近した戦いが続いており、今度のル・マンはこれまで以上に厳しい戦いになるだろう。しかし、私は自分のチームの強さを知っているし、必ず今年も優勝を争えると思っている」
●ホセ・マリア・ロペス(7号車)
「チームは昨年のル・マンでチェッカーフラッグを受けた瞬間から、今年のル・マンに向けて多くの準備を進めてきた。ドイツ・ケルンと日本の東富士でハードワークを続けてくれているクルーのみんなのおかげで、勝利を目指して戦う準備は万端だ」
「ル・マンでは何が起こるか分からないので、勝利を誓うことはできないが、ミスすることなく自分の仕事を行い、クリーンなレースでチェッカーフラッグを目指すだけだ」
「アルピーヌ、グリッケンハウスとのバトルはエキサイティングなものになるだろうし、ファンの皆様にとっても素晴らしいレースになるのは間違いない」
●セバスチャン・ブエミ(8号車)
「ル・マンはシーズンのハイライトであり、いつも楽しみだ。我々はこのレースのために1年をかけて準備してきた。僕自身はこれまでに3度ル・マンで勝つことができたが、私の勝利に懸ける情熱は変わらないし、毎年勝利への決意とともにル・マンへと向かう」
「天候やセーフティカー、フルコースイエローや周回遅れ等、ドライバーの力ではどうにもならない要素も多く、とてもチャレンジングなレースだ。しかし、チーム全体で集中してミスなく戦えば、優勝争いへのチャンスが巡ってくると思っている」
●ブレンドン・ハートレー(8号車)
「ル・マンは長い歴史と独特の雰囲気を持つ、特別なレースだ。2012年に初めてル・マンに参戦した時からこのレースが本当に大好きで、以来忘れがたい思い出がいくつもある」
「チームにとっては本当に厳しいレースでもあり、長く、大変な日々の末に戦う24時間レースは、他に類を見ない挑戦だ。そんな厳しいレースだけに、完走するだけでも全てのチームとドライバーにとっての勲章だが、もちろん我々はそれ以上を目指している。TGRのル・マンにおける連覇記録の更新こそが我々全員の目標だ」
●平川亮(8号車)
「TGRの一員として初めてのル・マン24時間参戦が本当に楽しみです。初めてル・マンでレースを戦ったのは2016年でしたが、その雰囲気と圧倒的なファンの皆様の数に感銘を受けました。本当に特別なイベントで、その一員となれることは光栄です」
「スパは我々8号車にとっては厳しいレースとなってしまい、僕自身は決勝レースで1周も走れないという残念な結果となってしまいました。前戦で起こったトラブルはチームが一丸となって徹底的に調査したので、ル・マンへ向けた準備は整ったと思いますし、接近戦が予想されるレースで確実に上位争いができると思っています」