バーバー・モータースポーツパークで開催されたNTTインディカー・シリーズ第4戦。1日に行われた決勝レースは、パト・オワード(アロウ・マクラーレンSP)が今季初勝利を飾った。
佐藤琢磨(デイル・コイン・レーシング・ウィズ・リック・ウェア・レーシング)は、17番手スタートから追い上げるも13位でレースを終えている。
予選2番手だったパト・オワードは、ポールポジションからトップを守ったリナス・ヴィーケイ(エド・カーペンター・レーシング)の背後2秒ほどにつけてチャンスを待ち続けた。
予選3番手のアレックス・パロウ((チップ・ガナッシ・レーシング)をスタートでパスしてきたのは予選4番手のスコット・マクラフラン(チーム・ペンスキー)は、今回はマシンが優勝を争うレベルに仕上がっておらず、序盤はトップ3を走ったが、中盤からはジワジワと順位を下げていくしかなかった。
3ストップに勝機を見出そうとした強豪も少なくなかった。ジョセフ・ニューガーデン(チーム・ペンスキー)、コルトン・ハータ(アンドレッティ・オートスポート・ウィズ・カーブ・アガジェニアン)、ロマン・グロージャン(アンドレッティ・オートスポート)らが早めのピットストップを行ったが、彼らの思惑は外れた。
トップを快走するヴィーケイは非常に強力と映っていた。誰からもアタックを仕掛けられることのないままレースの終盤戦が迎えられ、オランダ出身の21歳がキャリア2勝目へと逃げ切る可能性が高まっていた。
しかし、2回目のピットストップ直後に逆転劇は待っていた。
90周のレースの61周目を終えるところでトップのヴィーケイ、2番手のオワードは同時にピットイン。両者はその順位を保ってピットを後にしたが、コースに戻って半周も走らないうちにヘアピン状のターン5でオーワードがアタックを仕掛け、これを見事に成功させたのだった。前に出たオーワードは一気にヴィーケイとの差を広げにかかった。
彼らふたりがピットインしたことで、3番手にいたパロウが一旦はトップに立った。彼がピットに向かったのは2周後。ここでチップ・ガナッシ・レーシングのクルーたちが素晴らしいピット作業を施した。
しかし、トップを奪うことはできなかった。パロウはオーワードとヴィーケイの間にピットアウト。温まり切っていないタイヤでヴィーケイを封じ込めることには成功したが、残りの30周弱を使ってもオーワードを仕留めることはできなかった。
「インディーカーのレースはとても長い。いろんなことが起こり得る。今日は3ストップ組にとって有利な展開になりかけたこともあったが、セオリー通りの2ストップ組が優勝を争うことになった」
「自分たちはタイヤのチョイスも使い方も良かった。コールドタイヤで走る時が自分にとっての唯一のチャンスと考えていたので、2回目のピットストップからコースに戻ったところで勝負に出た」
「ヴィーケイの前に出て、パロウも自分の後ろにピットアウトして来たから、そこからはゴールまで間隔を保ち続けることに努めた」と、自ら描いたシナリオの通りに戦って勝ったことをオワードは饒舌に語った。
2位でゴールしたパロウは今季は未だ勝利がないがポイントリーダーに躍り出た。さすがはディフェンディングチャンピオンだ。25歳と言う若さながら安定感には驚くべきものがある。
ランキング2番手は今日6位フィニッシュしたマクラフラン。パロウとのポイント差は3点だ。テキサス、ロングビーチと連勝して3戦終了時点でポイントリーダーとなっていたニューガーデンは、バーバー・モータースポーツパークでの第4戦での成績が14位と振るわなかったため、ポイントランキングは3番手に後退した。
今日のレースでは19番手スタートからウィル・パワー(チーム・ペンスキー)が4位フィニッシュし、13番手スタートだったスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)も5位でゴールした。
パワーはスタートにブラックタイヤをチョイスし、セカンドスティントでレッドを使ったことが大きなアドバンテージとなって大幅に順位を上げた。ディクソンはスタート時にレッドを履いていたが、セカンドスティントにもレッドを連続投入するという判断が正解だった。
佐藤琢磨(デイル・コイン・レーシング・ウィズRWR)は予選17番手から2ストップ作戦を採用。ディクソンの後ろにつけてファーストスティントを終えたが、セカンドスティントのリスタートでブラックタイヤを履いていたためにポジションを維持することができず、展開的に燃費も厳しかったためにペースアップして順位をゲインしていくことは叶わなかった。
ディクソン同様にレッド-レッドと繋げていたら展開は大きく変わっていただろう。彼は17番手スタートから13位でのフィニッシュ。4ポジションアップのゴールだが、もっともっと上位に食い込むチャンスがあっただけに悔やまれる結果となった。
「昨日のファイナルプラクティスでパフォーマンスの向上したマシンに更にちょっとだけれど変更を加えてレースに臨みました。雨への対策も少しだけ考えたセッティングにしましたが、見事に晴れてくれましたね。自分たちのマシンは、もしフルドライのセッティングにしていても、まだ何かが足りていなかったかな?」
「今回悔しかったのはセカンドスティントでブラックを履いちゃったこと。ディクソンの後ろにつけていい感じで走っていたけれど、イエローが入って、その後のリスタートでレッドを履いていた彼はパパッと前に行っちゃって、自分の後ろになぜかレッドがいっぱいいて彼らに抜かれてしまった」
「これからもプッシュし続けるしかないですね。今日もクルマの乗った感じは悪くはありませんでしたが、昨日のウォームアップではあった良いフィーリングが暑いコンディションになったら出せなかった。その理由が何なのかを判明させる必要がありますね」と琢磨は話した。