5月27〜29日、FIA-F2第5ラウンドがモナコ公国のモンテカルロ市街地で開催された。佐藤万璃音(ビルトゥジ・レーシング)はレース2で7ポジションアップ。10位でサウジアラビア大会以来のポイント獲得を果たすことになった。
バルセロナ大会までは持てる速さと手ごたえはありながらも、波に乗れないシーズンが続いていた佐藤万璃音。迎えた第5ラウンドは、F1モナコGPの併催。万璃音にとってもレースの本拠地としてヨーロッパでの住まいを構えるモンテカルロ市街地戦には、地元の多くの友人の応援もあり、強い気持ちで大会に臨んだ。
モンテカルロ市街地は特殊なコースで、フリー走行からオプションタイヤを装着してセットアップを進めが、万璃音は7周目のアタックで1コーナーのブレーキングでタイヤをロックさせてしまい、タイヤにダメージを負ってしまったことから、実際には良いコンディションで複数周できない状況ではあったが、セクターによってはチームメイトを凌ぎ、全体的にも常にトップ10のペースで走れることを確信した万璃音は、自信をもって予選に挑んだ。
予選は奇数、偶数の2組に分けられ、万璃音は予選B組でのスタートとなった。しかしここでアタックのタイミングで入ってきた車両に邪魔されるかたちとなり、そのマシンを避けてタイヤのクールダウンをし、再度アタックに出ようとしたタイミングで赤旗が出てしまう。今回も最後までクリアラップを取れないまま予選を終えてしまうアンラッキーな展開で、予選タイムは1分23秒241でB組9位。最悪の結果となってしまった。
「モナコは抜けないサーキットなので、予選が勝負だということは分かっていました。フリー走行で自分たちのペースが悪くないことは確認できたので、予選に賭けていたのですが、本当にタイミングが悪く遅いマシンに邪魔されて、さらにタイミングを図ってプッシュしたのですが、1コーナーを駆け上がってカジノコーナーを回ったところで、僕のライン上に遅い車が出てきてスローダウンせざるを得ませんでした。不運としか言いようがない予選でした」と万璃音。
「1回目、2回目のアタックのベストセクタータイムを合わせれば、ちゃんと走れていたら5番手以内にはいられたはずです。悔しくてたまらない予選でした」
5月28日(土)のスプリントレースは、前日の予選で多くのドライバーに黄旗無視等のペナルティが課されたため、万璃音は16番手スタートに。しかし万璃音にとって決勝レース1は我慢の戦いを強いられた。スタートからペースも悪くなかったが、狭い市街地コースだけに抜きどころもなく、調子が良いマシンを手にしているだけに、クラッシュ等でダメージを負うリスクを避けるため、無理をすることなくそのまま周回を重ね、15位でフィニッシュした。
日曜日のフィーチャーレースは、グリッド17番手からのスタート。土曜よりも10度以上路面温度が下がったが、ドライコンディションでのレースとなった。タイヤはオプション(スーパーソフト)とプライム(ソフト)の2種類が選べ、レース途中で1回のタイヤ交換義務がある。
万璃音はソフトタイヤを選択してスタート。トップグループの多くがスーパーソフトを装着してスタートし、7周目あたりからタイヤ交換のためにピットに飛び込むが、その間に万璃音は着実にポジションをアップ。19周目にアクシデントで停止したマシンによってセーフティカーが導入され、その間にソフトでスタートした陣営が一気にピットでスーパーソフトに交換。レースは22周目からリスタートとなった。
そのリスタート直後、23周目のヘアピンでまたしてもアクシデントが発生し、マシン回収のためにふたたびセーフティカーが出される。26周目にセーフティカー解除となり、レースは一気に終盤へと向かうが、この時点で13番手まで浮上していた万璃音は38周目には12番手となり、そして最終ラップで目前の2台が争った末に接触。そのアクシデントを冷静にすり抜け、万璃音は10位でチェッカー。自身にとって、サウジアラビア大会以来のポイント獲得を果たした。
「決勝レース1はマシンの調子が良かっただけに、リスクを冒さず、マシンに余計なダメージを与えないことだけに集中して走りました。決勝レース2はタイヤ交換の作戦で前に出られるので、そこに賭けたかったからです」と万璃音はレースを振り返った。
「決勝レース2は、チームも自分もベストな仕事ができたと思います。抜きにくいモナコで、予選17番手からのスタートでは権利が無いも同然でしたが、チームの戦略は完璧で、ベストなタイミングでタイヤ交換もできましたし、あのタイミング以前でもダメだったですし、あのタイミングの後でも終わっていたはずです。本当にベストなタイミングでピットに入れて、まったくロスタイムもなかったです」
「最後は自分のタイヤも残っていなかったので、前のマシンを抜きたくても抜けない状況でしたが、前の2台がやりあっているのは分かっていましたし、どのタイミングで前が勝負に出るのかを冷静に後ろで観ながら走っていたら、案の定というタイミングで接触したので、冷静に避けることができました」
「最終ラップのラッキーもあって、ハッピーなポイントフィニッシュができました。今日はペースも悪くなかったですし、貴重なポイントを加算することができて本当に良かったです。次のアゼルバイジャンは、同じ市街地といってもオーバーテイクできるレイアウトなので、この勢いを維持し、課題の予選でのポジションアップを見据えて頑張ります」