『イングロリアス・バスターズ』や『X-MEN』などの大ヒット映画で知られる俳優のマイケル・ファスベンダーは、6月11〜12日にかけて行われる第90回ル・マン24時間レースに初参戦を果たす。
WEC世界耐久選手権の2022年第3戦となるこのレースは、ドイツおよびアイルランド籍を持つ45歳のファスベンダーにとって、長年の努力の集大成となるものだ。
「ル・マン24時間レースに出場することは、常に私の夢だった」とファスベンダーは述べている。
「夢というのは、自分がどれだけの努力をしたか、どれだけの挫折を味わったかということを考えないものだ」
「私は、レースウイークに出場するために必要なことを学んだだけでなく、競争力をつける方法も学んできた。それは、自分のポテンシャルをフルに発揮できる魅力的な機会を与えてくれる。一度しかないチャンスだから、とにかくベストを尽くしたい」
ファスベンダーのレースキャリアは数年前、ロンドンからロサンゼルスへと向かう長距離フライトで、同じく俳優のパトリック・デンプシーと乗り合わせたことから始まったという。
デンプシー・プロトン・レーシングの共同オーナーであり、ル・マンにも出場経験を持つデンプシーが、このフライトでの会話の後、ポルシェモータースポーツ・マーケティングの責任者に連絡を取ったことが、ファスベンダーのレース参戦につながった。2018年にファスベンダーがル・マンを訪れた際、この俳優の“ロード・トゥ・ル・マン”をサポートするプランが具現化し、のちに同名のYou Tubeシリーズが撮影・配信されることになった。
ファスベンダーはル・マンへのデビューを目指し、ポルシェ・カレラカップに参戦した後、ELMSヨーロピアン・ル・マン・シリーズへとステップアップ。ELMSでは2020、2021と2シーズンを戦って経験を積んだ。2021年10月末にポルトガルのポルティマオで開催された最終戦では2位となり、ELMSで初表彰台も獲得している。
迎えた2022年、ファスベンダーはついにル・マン24時間レースへとデビューを果たす。彼は、プロトン・コンペティションが走らせる93号車ポルシェ911 RSR-19を、IMSAウェザーテック・スポーツカー選手権GTD王者のザック・ロビション、ポルシェファクトリードライバーのマット・キャンベルとともにドライブする。
夢のル・マンデビューを目前に控えたいま、ファスベンダーは、できる限り緊張をコントロールしようとしているという。
「いい感じだ」と、ファスベンダーは語った。
「なるべくリラックスしようと努めているし、今週はコース上での時間で、できる限り多くの情報を得ようと考えている」
「マット・キャンベルという世界レベルのドイラバーがいるので、彼の知恵を借りながら、この1週間を過ごしていくつもりだ」
ファスベンダーには、ル・マンが開催されるサルト・サーキットでの走行経験がある。2020年にはサポートレースのカレラカップに参戦し、2021年はテストデーにエントリーしてデンプシー・プロトンのポルシェのステアリングを握っている。
「カレラカップのレースが終わったときには、不思議とレースを始める準備ができているような気がした」と、ファスベンダーは振り返る。
「あのレースは大雨だったから、ウエットコンディションでのサバイバルとコースの把握が重要だった。ル・マンのような象徴的なサーキットを走るという最初の感覚を克服し、緊張を解きほぐすという意味では、間違いなくいい経験だった」
「昨年のテストデーでは、RSRで10周走ることができた。それが今週の私の助けとなることを期待している」