5月18〜19日、大分県日田市のオートポリスで、全日本スーパーフォーミュラ選手権のこの先の50年を見据えた次世代車両の第3回開発テストが行われた。富士スピードウェイでの第1回、鈴鹿サーキットでの第2回に続き、石浦宏明と塚越広大のふたりが2日間合計8時間を走り込み、さまざまなテストを行った。
2台のダラーラSF19開発車両『ダラーラSF19 CN』で行われているスーパーフォーミュラの次世代車両開発テスト。4月6〜7日に富士で行われた第1回ではカーボンニュートラル・フューエル(CNF)、新たなタイヤスペックのテスト、ダウンフォース量削減などをトライ。4月25日〜26日に鈴鹿で行われた第2回では、第1回に続くメニューとして天然由来素材を使用したBcomp社のボディカウルもトライされた。
5月18日からオートポリスでスタートした第3回のテストでは、複数種類のタイヤ、鈴鹿までとは異なるカーボンニュートラル・フューエル、またリヤウイング角を薄くし、ダウンフォース量を減らした状態での追走テスト、さらにオートポリスという高地でターボエンジンを使用した際の負荷などのトライが行われた。
初日は通常の燃料を使用し10時から2時間、14時から2時間走行したが、快晴だったこともあり気温が上がったことで、Bcomp社のカウルの熱、水、強度に対する実証なども行われたが、飛び石に対する強度などの課題も見つかった。
9時から2時間、13時20分から2時間で行われた5月19日の走行2日目は曇り空のなかでのテストとなったが、これまでと異なる種類のカーボンニュートラル・フューエルを使用。前日に続きタイヤの比較などを行いながら周回をこなした。
■タイヤについても多くの収穫を得る
2日間のテストを振り返り、「オートポリスは富士、鈴鹿とは異なるレイアウトでのテストとなりましたが、第2回までで良かったものから、さらに一歩進めたタイヤをテストしています。それぞれ良いところ、悪いところが見つけられたので、それを汲み上げていくことになります」とタイヤについて評したのは塚越。
「ダウンフォース量としては、富士と鈴鹿の中間のようなコースだと思うのですが、新しいゴムの性能以外にも、タイヤのピックアップや温度など、違う結果が出てきました。新しい評価をすることができたのではないでしょうか」
このオートポリスは、スーパーGTではしばしばピックアップの問題が出てくるが、「今回思ったよりもその症状がありました」という。「性能として劣るなどのことはないですが、ロングランを行った時に課題が見えています」と塚越。
一方、石浦もタイヤについて「オートポリスは路面の入力が高く、タイヤへの負荷が大きいのですが、フォーミュラでは今までになかったようなピックアップがあったりなど、データとしてはすごく良いものがとれました。鈴鹿とも富士とも異なりますし、やって良かったですね」と語っている。
「タイヤのメニューが多いテストでしたが、やることは本当に多かったです。モデルチェンジが迫っているなか、さまざまな議論が出ていましたし、こうしてテストを行い、課題をつぶしていくことができている。このシリーズにとっても、未来に向けても良いテストになりました」
また石浦によれば、今回トライされた複数のタイヤについては「どれもフィーリングとしては近いけれど、長く走るとキャラクターが変わっていく」という。これも今後、どうレースで活用していくかの材料にもなりそうだ。
■2台の追従走行では鈴鹿、富士とも異なる感触
今回トライされたもののうち、ダウンフォース量削減については、「オートポリスは富士と似ているのか、鈴鹿ほどダウンフォースの抜けが激しくはない。ただやはりダウンフォースを減らした方が、(抜けの)変化量が少ないので、追従したときの変化が少ないと思います」というのは塚越だ。
これについては石浦も近い評価で、「オートポリスはコース特性としては曲がり込んでいるコースですよね。フルダウンフォースで走ると、全然近づけない。しかしウイング角を変えると、かなり近づけるんです」という。
また、鈴鹿までとも異なるカーボンニュートラル・フューエルについては、「どちらで乗っているか分からないくらい、普通にドライブできています。フィーリングもおかしくないですし、標高が変わったところでも、特別なトラブルはなかったので、問題はないと思います」と塚越は評した。
こちらについて石浦は「カーボンニュートラル・フューエルについても、使い方なども含め議論がありました」としつつ、この開発について「スーパーフォーミュラだけではなく、他の世界中のカテゴリーでも使えるノウハウなので、ここが世界最先端の実験場になっています」と語っている。ちなみに、今回もエキゾースト出口にあたるリヤウイング等の部分に、燃料由来のものと思われる排気の跡がみられた。
■オートポリスだからこその収穫を得る
このオートポリスでの第3回のテストを終え、永井洋治テクニカルアドバイザーは「スケジュール的に、そろそろ来年の車両の技術規則を決める時期ということで、このオートポリステストの結果をもって基本を決めなければならないのですが、ここでリヤウイングの仰角を何パターンかテストし、ダウンフォースをある程度少なくした状態でも接近戦ができるという方向性は見えてきました」と振り返った。
「その結果、大筋で車両のコンセプトは決まりつつあります。タイヤテストに関しては、富士と鈴鹿で、ケーシングとコンパウンドを別々にテストしていましたが、それを今回は合体してテストしました。その中で、オートポリスというタイヤに厳しい特徴的なサーキットでの課題も出ましたが、基本的にはタイヤも方向性が決まってきたのかなという感触があります」
「カーボンニュートラルフューエルに関しては、オーバーテイクシステムも試しましたが、サーキット自体が高地にあり、ターボの負荷が通常より上がるので、それに対してどういう結果だったかというデータをまとめています」
「また、今回分かったのは、バイオコンポジットでできているカウルは飛び石でかなり傷つくということです。レーシングカーは、通常塗装などをした上でシーリングしてあります。現段階のテスト用カウルはまだシーリングしていない状態ではありますが、それでもカーボンと比べると若干硬さが足りません。そういう課題が分かったのも良かったと思いますし、いいテストになったと思います」
石浦も当初、「富士と鈴鹿だけで良いのでは」と思っていたという開発テストだが、「オートポリスではまた違うところがあった」という。永井テクニカルアドバイザーも「やはりすべてのサーキットでテストをすることに意味があると再認識しました」と、オートポリスというコースでのテストに手ごたえを得たようだ。