チームWRTは、2023年からベルギーチームが取り組む予定だったプロトタイププロジェクトをアウディが一時中断したにもかかわらず、将来的にWEC世界耐久選手権のハイパーカー・クラスでプログラムを実行することを望んでいる。
チーム代表のヴァンサン・ボッセによると、WRTはトップレベルのプロトタイプレースに参加するための新たな方法を見出すべく、他の関係者と議論を行っているという。
GT3レースで多くの成功を収め近年のLMP2でも存在感を示している同チームは、3月に一時休止が正式発表されたドイツメーカーのLMDhプログラムを担当するため、アウディに選ばれていた。
WRTは2021年、WECのトップカテゴリーであるハイパーカークラスにアウディとともに参加することを見込み、ELMSヨーロピアン・ル・マン・シリーズに続いて世界選手権シリーズのLMP2クラスに参入。WECとELMSのLMP2タイトルを獲得し、ル・マン24時間レースでも大成功を収めた後、今季は2台のオレカ07ギブソンでWECに完全集中することになった。
ボッセによれば、チームは2023年にレースデビューする予定だったアウディLMDhプログラムの“テスト任務”も任されていたという。
「私たちがアウディとLMDhプログラムを行うと発表されたことはなかったが、実際に参加していたのは事実だ」とSportscar365に語ったボッセ。
「それは(アウディのLMDh一時休止)は私たちの計画を変えさせた。しかし、昨年の素晴らしい結果と耐久レースでのチームの血統のおかげで、ここ数週の間に素晴らしいコンタクトがあった」
「私たちはまだ同じ計画を持っているが、それはおそらく1年遅らせなければならないだろう」
同氏はまた、トップレベルでプロトタイプを走らせる可能性について、他の自動車メーカーと話し合いを行っていることを明らかにした。
「我々と一緒に仕事をしたいと思っている人たちと話し合っている」と彼は語った。
「ハイパーカーには、将来的にかなりの関心が寄せられている。もし、私たちがそこに参加できるのであれば、行くつもりだ。不可能なら他のことに集中する」
「だが、私たちの未来はWECを中心に据えることになるだろうと、いい予感がしている」
■LMDhプログラム次第でGT3メーカーのスイッチもありえる
WRTはアウディのLMDhプログラムにファクトリーチームの立場で取り組むことになっていたが、ボッセはそれが唯一の実行可能な選択肢である場合、カスタマーの立場で新しいプロトタイプカーを走らせることも否定していない。
フェラーリ(AFコルセ)、BMW(IMSA/チームRLL)、キャデラック(WEC&IMSA/チップ・ガナッシ・レーシング、IMSA/アクション・エクスプレス・レーシング)など、いくつかのLMDhとLMH(ル・マン・ハイパーカー)メーカーはすでにワークスプログラムの運営チームを発表している。
WRTがカスタマー・ハイパーカーの取り組みを追求するかどうか尋ねられたとき、ボッセは次のように答えた。
「『そうではない』と言うのは愚かなことだろう。結局のところ何が起こるか分からない。プライベーターとして『LMDhやLMHに関わることはない』とは決して言えない」
「私の目標、そして私たちのやり方はファクトリーエフォートだったはずだ。今後どうするかは(現時点では)分からない。メーカーとの取り組みでも妥協したかたちでもかまわない」
アウディのLMDhプログラムが停まっている間、WRTはファナテック・GTワールドチャレンジ・ヨーロッパで5台のアウディR8 LMS Evo IIを走らせ、開幕戦イモラですでに1勝を挙げている。
彼らはトタルエナジーズ・スパ24時間、リキモリ・バサースト12時間、ニュルブルクリンク24時間での総合優勝など、GT3レースで長年にわたって多くの栄誉を獲得してきた。
そんなチームが別のLMDhまたはLMHブランドと仕事をするようになれば、WRTのGT3カテゴリーにおける活動の再調整を検討する必要があるかもしれないことを確認した。
「もし今日、あるメーカーが私のところにやってきて、我々とハイパーカーで仕事をすることに興味があり、GTプログラムを彼らの方に移す必要があると言ってきたら、私はそれを考えるだろうし、それに対してオープンだ」とボッセは語った。
「今のところ、GTを含めることができるのであれば、どのような提案がなされるのかを見るためにオープンにしているんだ」
「アウディのLMDhプログラムが進まないことについては、ある種の意見の不一致と少しのフラストレーションがあるのは確かだ。しかしそれは、この12年間GTで一緒に仕事をしてきた素晴らしい人たちとは何の関係もない」
「しかし、誰が(将来が)わかるだろうか。いろいろなことが起こり得るんだ。2年前に、ル・マンに復帰するアウディのためにLMDhプログラムを走らせると言われたら、私は驚いていたことだろう」
「だから、今はもう何も驚くことはない! 私はただ、何が起こっているかを見ているだけだ。チームにとって最善の決断を下すつもりだ」