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 BMW Mモータースポーツの責任者は、現在開発中の同社のLMDhマシンに、かつてDTMドイツ・ツーリングカー選手権で使用されていた4リッターV8エンジンのターボバージョンが搭載されることを明らかにした。

 BMWは社内ドキュメンタリー・シリーズ『Mbedded』の最近エピソードで、LMDhエンジンの初めての詳細と映像をリリース。そこには、ベースとして2018年までのDTMユニットが使用されていることが含まれていた。

 Mモータースポーツの責任者であるアンドレアス・ルースは、共通ハイブリッドモーターに組み合わされる4リッターV8エンジンの概要について、次のように明らかにした。

「それは、かつてDTMで使用していた4リッターV8エンジンをベースにしている」とルース。

「レギュレーションと、その出力曲線から、何がベストエンジンなのかを精査した。その結果、DTMのV8をベースにして、ターボチャージャーを搭載できることがわかった。これは、この種のエンジンに関する最良の妥協点だ」

 BMW Mモータースポーツは、2019年から2020年にかけてクラス1規定のDTMマシンで使用された日本のスーパーGTと共通フォーマットとなる2リッター直列4気筒直噴ターボなど、使用可能な他のエンジンタイプを検討したが、最終的にはこの8気筒の『P66型』がLMDhにもっとも適した選択肢であることを発見したという。

 クラス1規定における『P48型』ターボDTMエンジンの方が、LMDhの最大出力である670psには近い。だが、今回LMDh向けに選択されたのはP66型となった。

「M8(GTE)のエンジン、(クラス1)DTMの最新4気筒エンジン、DTMのV8など、いくつかのエンジンがある」とルース。

「何がベストなエンジンなのか、我々に何ができるか、長所・短所があり、精査が行われた」

「ターボチャージャーを搭載するため、エンジンのかなりの部分を変更しなければならない。また、エンジンは2012年に開発されたものだ。少し前のものになるので、いくらかの変更を施している。最初の(ベンチ上での)走行はベースエンジンで行われ、いまはいくつかのアップデートがなされている」

「いい感触だし、出力曲線の面でもレギュレーションを満たすことができると思う」

2018年DTM開幕戦ホッケンハイム。この年まで、DTM車両には4リッターV8エンジンが搭載されていた
2018年DTM開幕戦ホッケンハイム。この年まで、DTM車両には4リッターV8エンジンが搭載されていた

■スケジュールはタイトで「暫定仕様を走らせる時間はない」

 エンジンベンチでのテストは段階的に実施されてきた。BMWはまず、ベースとなるV8を単独で動かした後、いくつかの調整を加えた暫定エンジンを作り、それはLMDh規定の要求するパフォーマンス・ウインドウに対して、コンフィギュレーションの実行可能性を確認するために使われた。

 その後、数時間にわたる耐久テストを行い、エンジンの信頼性を検証した。

 このエンジンには、DTM時代の約500psよりも大幅に高い出力が求められる。ルースはエンジン、ギヤボックス、電気モーターで構成された完全に統合されたBMW M LMDhのパワートレーン全体が、すでにベンチでテストされたことを認めている。

 このことは、1999年のル・マン24時間レースで優勝したV12 LMR以来となる同社のスポーツ・プロトタイプが、最初のシェイクダウンを行う日がそう遠くないことを示唆しているようにも思える。2023年1月に開幕するIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権のGTPクラスでは、チームRLLがファクトリーチームとして2台のBMW M LMDhを走らせることが決定している。

「ベンチ上での耐久走行を開始した」とルースは説明している。

「マシンを(実際に)走らせる前に、エンジンの性能と信頼性を調査する必要がある。我々はベンチ上では、すでに完全なドライブトレーン一式の状態で多くの開発を重ねてきた。そして、これからクルマへと搭載する」

「耐久テストをする際には、完全なシステムとしてやらなければならない。そしてそれが、完成形の車両にどうフィットするか確かめるのだ」

 ルースは、BMW M LMDhのシェイクダウンは、完全なハイブリッドシステムが搭載された状態で行われるものと予期している。これとは対照的に、現在のところLMDhマニュファクチャラーで唯一サーキットテストを行っているポルシェは、共通ハイブリッドシステムを段階的に搭載してテストをしてきたことを明らかにしている。

「我々はこのようにやりたいのだ」とルース。

「タイムスケジュールは極めてタイトだ。したがって、暫定仕様を走らせる時間はない」

「だからベンチでの開発に力を入れ、レースカーでテストを開始するときには、できる限り万全の体制で臨めるようにしているのだ」

「エンジンは、全体のなかで重要なピースのひとつだ。クルマのすべてのネジやボルトは必要だが、ドライブトレーンシステムは重要なものだ。すべてが組み合わさっていなければならない」

BMW M モータースポーツの責任者を務めるアンドレアス・ルース
BMW M モータースポーツの責任者を務めるアンドレアス・ルース