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 セドリック/グロリアが市場から姿を消してから18年が経過。後継のフーガもまもなく生産終了の見込みという。そしてバブル期に爆裂ヒットを記録したシーマも歴史に幕を閉じる予定だ。

 いち時代を築いた日産車はもはや壊滅状態である。果たしてこれら名車をなくして本当にイイのだろうか!?

文:小沢コージ/写真:日産・ベストカーWEB編集部

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■フーガにシーマの販売台数に注目!! こりゃ終売も仕方ない……

 日産のフラッグシップであるシーマと高級セダンのフーガが今夏を最後に生産終了する。伝統の車名をなくして良いのか? 何10年と続いた名車の歴史を簡単に絶やして良いのか?

 ビッグネームの消滅危機が囁かれるたびに巻き起こる論争ですが、ここに基本、議論の余地はありません。無くしてよいのです。自動車販売がビジネスである限り、売れなくなればその商品はなくなる。当然の結末です。

 スポーツ選手も同様で、あの偉大過ぎるプロ野球選手のイチローですらヒットが打てなくなれば現役から引退する。いまだ時速150kmのボールが投げられて、バッティング練習で柵越え連発の身体能力があっても試合で打てなくなれば消え去る。厳しい世界なのです。

 しかも今回遡上に登った日産車ですが、SUVのサファリ(海外名パトロール)は国内未販売な上、グローバルでも販売ふるわず。

 また自販連によれば2021年の国内販売台数はシーマが前年比31%減のわずか75台、フーガが29%減の580台、スカイラインが30%減の2737台。シーマが2016年時点で245台と年300台を切っていることを考えると延命した方でしょう。

シーマ(2019.12一部改良)

 年間245台ということはひと月約20台。日産ディーラーが国内約2000店舗あることを考えると、全体の100分の1の店舗でほぼ月に1台しか売れてない計算になります。恐るべき販売効率の低さ……。

 もちろん今後商品力改善計画やEV化計画があるのなら別ですがそれも無さそうですし、自動車販売が文化事業でも無い限り、不人気車消滅は避けられません。

■継続販売の維持費が高すぎる……加えて騒音規制問題も勃発

 なぜなら自動車販売は看板を出し続けているだけでおカネがかかるビジネスなのです。工場に生産設備を整え、サプライヤーにパーツを発注し、年々厳しくなる衝突安全基準、排ガス規制、騒音規制に合わせて商品を細かくアップデートさせる。

 ディーラには商品知識を持つセールスマンも必要ですし、カタログ代もバカになりません。同じ商品性能のまま何10年と売り続けることが出来、カタログ無しの長期在庫販売が可能なら話は別ですが、最新性能を持ったシーマやフーガの生産能力維持に果たしていくら掛かるのでしょうか?

 事実今回のシーマ、フーガ撤退は、厳格化する車外騒音規制に対応できなくなったことが大きな理由に上げられています。

■終売は避けられず……ブランド消失はかなりの痛手

 またそもそも生産終了に文句を言う人に私は問います。アナタはここ数年、新車を買いましたか? ましてやマニアックな少量生産カー、フーガやスカイライン、あるいはクラウンなどを買いましたか?

 買う人が「俺が欲しいのに店にないのはけしからん!」と主張するならわかりますが、買いもしない趣味人が不平不満だけを言うのは身勝手。正直クレーマーに近いとさえ思います。

 とはいえ今の日産が簡単にシーマやフーガの販売をやめ、スカイラインを切っていいのか? と言われると考えさせられる部分もあります。それは自動車販売が、単に利便性を売る白物家電的ビジネスではなく、神話性を売るブランドビジネスの側面もあるからです。

 例えば今日本で猛威を奮うホンダN-BOXですが、ライバルのダイハツ・タントやスズキ・スペーシアに対し販売で勝ち続ける理由には、純粋にクルマとしての質感、走りの良さもありますが、確実に「ホンダブランド」の優位性もあります。

 かつて国内でアコード、オデッセイ、プレリュードを大ヒットさせ、F1に参戦し、常勝軍団でさえあった事実。その“ホンダブランドが作った本気の軽”という神話性は、確実にプラスに働いています。使い勝手や実用性だけで買いそうな軽自動車ですが、それでもブランドは重要なのです。

 それと同じ事がマツダにも言え、今後出る縦置き直列6気筒のFRモデルは、実力的にはドイツ高級ブランドに迫る部分があっても、簡単に同列価格では売れません。それは高級車を売った実績がないからです。

 逆に言うと「高級ブランドが作る大衆商品」は売りやすいのですが、「大衆ブランドが作る高級商品」は売りにくいのです。 その点において、日産が高級車部門から徐々に撤退する事実は、長い目で見ると不利な部分もあります。

■アリアの販売台数次第で日産は変わる!? 次の一手はアリアベースのセダンか

 その点において、日産が高級車部門から徐々に撤退する事実は、長い目で見ると不利な部分もあります。ただし、今後もスカイラインは売り続けますし、北米でインフィニティブランドは存在し続けます。なにより日産はスカイラインベースのフェアレディZの新作を発表したばかりなのでホンダのように「軽自動車&ミニバンメーカーになってしまった」と言われにくい土壌があります。

 そういう意味で、日産がシーマやフーガの販売を辞めることへのリスクは比較的小さいと思われます。なにより日産には今後ガチで取り組むべき電動化戦略があります。

 初代&2代目リーフは鳴かず飛ばすでしたが、今年出た本格EVのアリアが成功すれば、日産ブランドにおける高級車イメージは損なわれませんし、そちらに集中した方が効率的。逆に今後アリアベースのEVセダンを新しい名前で生み出す手もあります。そもそも小沢はその側面が今回は強いのでは? と思っています。

■結論! シーマ&フーガ終売は至極真っ当

初代フーガ(y50)

 そもそも世界有数の自動車ビッグネーム保持者、トヨタにせよ名前保持がための延命はしていません。日本最古名のランドクルーザーはご存知最新300系が世界的大ヒットを飛ばしてますし、ハイエースは現行型になって20年近く経っても国内販売クラストップ。

 最近存続が危ぶまれているクラウンですら21年は年間30位以内をキープ。年間2万台を越えています。それも1台500~600万円はする高額車なので利益は出ているはず。

 それですら撤退のウワサが出始めているわけで、台数が出てないのに売り続けるようなことはトヨタはしません。人気をキープし続けてこそ本当の名車であり、価値ある存在なのです。

 そういう意味でシーマ、フーガの撤退は真っ当な判断と言えるのではないでしょうか。(ってか遅すぎるくらい?)

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