2022年から“グローバル・シリーズ”へと変貌を遂げると同時に、シリーズ自ら「史上最速のラリークロス車両」と称するフルエレクトリックSUVによる『グループEクラス』を創設する『Nitro Rallycross(ナイトロ・ラリークロス/NitroRX)』だが、その初期カスタマー候補としてリストアップされていたドライヤー&ラインボールド・レーシング(DRR)が新体制を発表。2021年のEuroRX1王者に輝いたアンドレアス・バッケルドと、同じく2014年の欧州王者であるロビン・ラーソンの実力派を起用し、新たにモンスターエナジーRXカルテルのエントリー名で参戦することをアナウンスした。
北米発のラリークロス・シリーズとして、実質的にGRCやARXの後継に位置付けられるNitroRXは、ラリーやラリークロス界のトップ選手として活躍するトラビス・パストラーナが創設した新たなチャンピオンシップとして、2021年に本格的なシリーズ戦が開催された。
スタント・ドライブやエクストリームスポーツの第一人者としても知られる男が仕掛け人ということもあり、そのトラックは数十メートルの飛距離を要するジャンプ必須のレイアウトや、NASCARチャンピオンなど豪華ゲストを招聘したラインアップでファンの興味喚起を図るなど、既存の概念を覆す演出がなされてきた。
その2年目の選手権に導入予定の電動車両『FC1-X』は、開発担当者いわく「世界でもっとも速く、もっとも有能なラリークロス車両」というコンセプトを具現化させたものとなり、約800kW(約1070PS)を超えるピークパワーにより、0-100km/h加速はわずか1.4秒。さらに適切な路面条件下では1秒切りも達成可能だという。
また、1100Nmという途方もない最大トルクと350mmの最大ホイールトラベル量により抜群のトラクション性能も発揮し、最高速は180マイル(約290km/h)をマークするなど現行の内燃機関スーパーカーと比較しても“未知のパフォーマンス”を有している。
その出力をフロント1速、リヤ3速のサデフ製トランスミッションを介して伝達し、電動レースカーとして初めて、プロペラシャフトに接続されたハンドブレーキを搭載。リヤの駆動をロックさせる方法として、後輪へのモーター出力を単にカットする従来型EVでの通常の方法より、多くの感触をドライバーにもたらすという。
■「NitroRXシリーズで世界最高のチームを形成できた」とラインボールド
この『FC1-X』はすでに複数台が潜在エントラント向けにデリバリーされており、そのうち2022年はヨーロッパの主要チームであるJCレーステクニークと提携して4台体制での参戦を計画するDRRが最初の2台のレースシートを公表し、残り2台の枠も「後日発表する予定」としている。
「まずはこうして参戦体制を発表でき、モンスターエナジーなどの伝説的なブランドとのパートナーシップに非常に興奮している」と語るのは、DRRのチームオーナーでもあるデニス・ラインボールド。
「そして、アンドレアス(・バッケルド)やロビン(・ラーソン)など各界のチャンピオン経験ドライバーとの取り組みを、新しいグループE用マシン『FC1-X』と組み合わせることで、このNitroRXシリーズで世界最高のチームを形成できた。モンスターエナジー、タイトル経験者、そしてJC Raceteknikとの融合により、強固な組織が実現した。我々は確実にタイトル獲得に挑戦できる強力なチームになるはずだ」
ラーソンは2021年も同チームからNitroRXに参戦し、アウディS1 RXクワトロをドライブしてランキング7位に。一方のバッケルドも限定プログラムながらスバル・モータースポーツUSAに合流し、グレンヘレン戦ではスバルWRX STIで3位表彰台を獲得している。
一方のDRRもインディカーのかたわら2016年より本格的なラリークロス活動を展開しており、そのシングルシーターやNASCARでも活躍するセイジ・カラムを擁して、昨季は下部カテゴリーのNRX NEXTシリーズで年間5勝(ランキング2位)を挙げている。
そのDRR以外にも、電動オフロード選手権のエクストリームEに参戦するオリバー・ベネットが、元F1王者ジェンソン・バトンを起用してエキサイトエナジー・レーシングからのエントリーを計画する同シリーズ。年またぎの2022-23シーズンとなるグローバル戦は、6月18~19日にイギリス・リデンヒルで幕を開ける。